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────4話*水面下の戦い
22・皇を取り巻く者たち
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****♡Side・社長(呉崎)
──誰の差し金なんだ……?
社長こと呉崎は秘書神流川の運転で行きつけのbarへ向かっていた。
本来なら隣には皇がいたはず。彼は塩田たちに連れていかれてしまった。
呉崎は彼らが自ら皇を誘うわけがないと思っている。これは誰かの入れ知恵に違いない。
──まさかとは思うが、唯野君か?
あり得ないわけではないが、彼にとっては何の得もない。
スマホに視線を移せば協力者からのメッセージが来ている。内容に目を通すと、ため息をつきスマホを脇へ。
腕を組み目を閉じる。皇は塩田のことが好きだ。だが塩田には【電車紀夫】という恋人がいる。娘の頼みを蹴ってでも、二人を引き離すことを食い止めたのだ。塩田の心が変わるとは思えないが、なんだか嫌な予感がする。
──忌々しい。僕の邪魔をするつもりか?
たかだか、課長の分際で。
しかし証拠がない以上、こちらから何か仕掛けるわけにはいかない。
皇が入社当時、同じ部署で彼を気にかけていたのは、現在の苦情係の課長唯野と総括部長の黒岩の二人。彼らにはそれなりの給料が支払われているはずだ。苦情係は小さな部署だがその中のトップが課長な為、部長と同等のポジション。黒岩はもちろん、高級取りだ。
──人事に抜かりはなかったはずだ。
二人の配属先を分けたのも計算の内。
苦情係の課長である唯野は皇の立場が自分よりも上になったことで、皇に対し部下として接している。彼はああ見えて、縦社会を重んじていた。
それに引き換え黒岩は皇に対し自分が先輩であるという態度は変わらない。皇が何も言わない以上、それで良いと思っていた。
そう、皇の家に彼が上がりこもうとするまでは。
「社長、着きました」
呉崎は神流川の声で瞼をあげる。
「そうか、ありがとう。君はどうする?」
神流川は皇を好いているが、大事な秘書には変わりない。
一緒に呑むかと問えば、
「仕事が残っておりますので」
と断られてしまう。
こんな時くらい止せばいいのにと思ったが、断る口実かもしれなかった。
何せ、彼は優秀だ。
「仕方ないね、じゃあ迎えはいいよ。タクシーで帰るから」
と言って彼が開けてくれたドアから降りる。
「そうだ、神流川くん」
「はい?」
「君は、皇くんのどんなところが好きなの?」
「え……」
彼は社長の質問に、とても困った顔をした。
「好きなんだろ、彼のこと」
「それは……」
黒岩は元々皇のことを可愛がっていたが、神流川は違う。
「容姿か? それとも、厭らしいあの身体か?」
挑発的な呉崎の言葉に、神流川は怒りで肩を震わす。
「社長は皇さんをそんな風に……性欲を満たす道具だと思っているのですか?」
反抗的な瞳。呉崎は何故か、クスッと笑ったのだった。
──誰の差し金なんだ……?
社長こと呉崎は秘書神流川の運転で行きつけのbarへ向かっていた。
本来なら隣には皇がいたはず。彼は塩田たちに連れていかれてしまった。
呉崎は彼らが自ら皇を誘うわけがないと思っている。これは誰かの入れ知恵に違いない。
──まさかとは思うが、唯野君か?
あり得ないわけではないが、彼にとっては何の得もない。
スマホに視線を移せば協力者からのメッセージが来ている。内容に目を通すと、ため息をつきスマホを脇へ。
腕を組み目を閉じる。皇は塩田のことが好きだ。だが塩田には【電車紀夫】という恋人がいる。娘の頼みを蹴ってでも、二人を引き離すことを食い止めたのだ。塩田の心が変わるとは思えないが、なんだか嫌な予感がする。
──忌々しい。僕の邪魔をするつもりか?
たかだか、課長の分際で。
しかし証拠がない以上、こちらから何か仕掛けるわけにはいかない。
皇が入社当時、同じ部署で彼を気にかけていたのは、現在の苦情係の課長唯野と総括部長の黒岩の二人。彼らにはそれなりの給料が支払われているはずだ。苦情係は小さな部署だがその中のトップが課長な為、部長と同等のポジション。黒岩はもちろん、高級取りだ。
──人事に抜かりはなかったはずだ。
二人の配属先を分けたのも計算の内。
苦情係の課長である唯野は皇の立場が自分よりも上になったことで、皇に対し部下として接している。彼はああ見えて、縦社会を重んじていた。
それに引き換え黒岩は皇に対し自分が先輩であるという態度は変わらない。皇が何も言わない以上、それで良いと思っていた。
そう、皇の家に彼が上がりこもうとするまでは。
「社長、着きました」
呉崎は神流川の声で瞼をあげる。
「そうか、ありがとう。君はどうする?」
神流川は皇を好いているが、大事な秘書には変わりない。
一緒に呑むかと問えば、
「仕事が残っておりますので」
と断られてしまう。
こんな時くらい止せばいいのにと思ったが、断る口実かもしれなかった。
何せ、彼は優秀だ。
「仕方ないね、じゃあ迎えはいいよ。タクシーで帰るから」
と言って彼が開けてくれたドアから降りる。
「そうだ、神流川くん」
「はい?」
「君は、皇くんのどんなところが好きなの?」
「え……」
彼は社長の質問に、とても困った顔をした。
「好きなんだろ、彼のこと」
「それは……」
黒岩は元々皇のことを可愛がっていたが、神流川は違う。
「容姿か? それとも、厭らしいあの身体か?」
挑発的な呉崎の言葉に、神流川は怒りで肩を震わす。
「社長は皇さんをそんな風に……性欲を満たす道具だと思っているのですか?」
反抗的な瞳。呉崎は何故か、クスッと笑ったのだった。
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