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────4話*水面下の戦い
13・電車の質問と皇の告白
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****♡Side・電車
「いいよな。苦情係の奴らは、仲が良くてさ」
酒が入ったせいか、いつもよりも饒舌になる皇。塩田が風呂に行っている間、電車は皇の相手をしていた。
「副社長は……そういう時期なかったの?」
電車は彼についてざっとしか聞かされていない為、入社当時に彼が同じ部署の先輩たちから嫌がらせを受けていたことを知らない。
「俺の配属された部署は、苦情係と違って人数も多いし。実力主義なくせに、出る杭は打たれるといった感じだったしな」
「営業だっけ?」
「俺様の美貌なら、営業がお誂え向きだろ?」
と両手を拡げ。
電車は彼のオーバーアクションには慣れている。
梅キューをポリポリしながら、
「そうだねえ」
と間延びした相槌を返す。
「あれ? でも、副社長ってうちの課長と総括と同じ部署だったんでしょ?」
”仲良かったんじゃないの?”と続ければ、複雑な表情をした。
「悪くはなかったが、先輩だったしな」
彼の言葉にふと自分の部署について考えてみる。
設立当初はてんやわんやではあったが、上司一人に同僚三人という部署は良くも悪くも連帯感と協力し合うことが必要だ。人数が少ないからこそ仲が良い、というのはあるかもしれないと電車は感じていた。
「今は?」
「先輩が部下になるのは、心境としては複雑だぞ」
そういうものなのかと電車は思う。
以前がどうかは知らないが、少なくとも今はたくさんの人に慕われている、皇。それでもやはり苦情係が羨ましいと彼が言うのであれば、それは孤独を感じているからだろう。
「お前ら見てるとさ。恋人欲しくなるよな」
”だいぶ酔っているのだろうか?”
皇はナス漬を口に放り込むと、そんなことを口にする。
確か、皇には婚約者がいるはずだ。
そのことに電車が触れると、
「恋人ではないしな」
と言う。
一体、どういうことなのだろうか?
「そんな色気のある関係じゃなく、ビジネスパートナーのほうが近いんだよ」
皇の言葉を受け、以前自分が社長の娘と形だけのお付き合いをしていたことを思い出す。少し親近感がわいた。
「副社長はさ、どんな人が理想なの?」
彼が塩田を好きなことは知っている。
「俺さー……」
皇はそんなことを気にせず、自分の生い立ちについて触れた。
「親父が子供に無関心な家で育ったんだよな。どんなに努力しようとも、どんなにいい成績を納めようとも、全く見向きもしない。口を開けば”皇家の者なら当たり前”って言われながらさ」
そこで彼はビールで喉を潤すと、
「だから、俺だけを見てくれる人がいい。俺だけを」
テーブルに突っ伏した彼の髪を電車はいい子いい子するように撫でる。辛かったんだな、と思いながら。
「いいよな。苦情係の奴らは、仲が良くてさ」
酒が入ったせいか、いつもよりも饒舌になる皇。塩田が風呂に行っている間、電車は皇の相手をしていた。
「副社長は……そういう時期なかったの?」
電車は彼についてざっとしか聞かされていない為、入社当時に彼が同じ部署の先輩たちから嫌がらせを受けていたことを知らない。
「俺の配属された部署は、苦情係と違って人数も多いし。実力主義なくせに、出る杭は打たれるといった感じだったしな」
「営業だっけ?」
「俺様の美貌なら、営業がお誂え向きだろ?」
と両手を拡げ。
電車は彼のオーバーアクションには慣れている。
梅キューをポリポリしながら、
「そうだねえ」
と間延びした相槌を返す。
「あれ? でも、副社長ってうちの課長と総括と同じ部署だったんでしょ?」
”仲良かったんじゃないの?”と続ければ、複雑な表情をした。
「悪くはなかったが、先輩だったしな」
彼の言葉にふと自分の部署について考えてみる。
設立当初はてんやわんやではあったが、上司一人に同僚三人という部署は良くも悪くも連帯感と協力し合うことが必要だ。人数が少ないからこそ仲が良い、というのはあるかもしれないと電車は感じていた。
「今は?」
「先輩が部下になるのは、心境としては複雑だぞ」
そういうものなのかと電車は思う。
以前がどうかは知らないが、少なくとも今はたくさんの人に慕われている、皇。それでもやはり苦情係が羨ましいと彼が言うのであれば、それは孤独を感じているからだろう。
「お前ら見てるとさ。恋人欲しくなるよな」
”だいぶ酔っているのだろうか?”
皇はナス漬を口に放り込むと、そんなことを口にする。
確か、皇には婚約者がいるはずだ。
そのことに電車が触れると、
「恋人ではないしな」
と言う。
一体、どういうことなのだろうか?
「そんな色気のある関係じゃなく、ビジネスパートナーのほうが近いんだよ」
皇の言葉を受け、以前自分が社長の娘と形だけのお付き合いをしていたことを思い出す。少し親近感がわいた。
「副社長はさ、どんな人が理想なの?」
彼が塩田を好きなことは知っている。
「俺さー……」
皇はそんなことを気にせず、自分の生い立ちについて触れた。
「親父が子供に無関心な家で育ったんだよな。どんなに努力しようとも、どんなにいい成績を納めようとも、全く見向きもしない。口を開けば”皇家の者なら当たり前”って言われながらさ」
そこで彼はビールで喉を潤すと、
「だから、俺だけを見てくれる人がいい。俺だけを」
テーブルに突っ伏した彼の髪を電車はいい子いい子するように撫でる。辛かったんだな、と思いながら。
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