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────4話*水面下の戦い
12・三人の不思議な団欒
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****♡Side・副社長(皇)
熱めの湯につかり疲労感は増したが、目が覚める。襟のしっかりしたポロシャツと細めで麻の混合されたさらっとした肌触りのハーフパンツを履いてリビングへ行くと、普段着に着替えた二人が居た。
「え……」
電車は大きなバナナがプリントされた白のTシャツに、豆粒ほどのバナナがびっしりと描かれたダブっとしたハーフパンツ。
塩田は胸に”塩対応”とえらく達筆な筆文字縦書きのプリントされたTシャツに、灰色のジャージにうさ耳スリッパ。
──ちょっと君たち、ダサ過ぎじゃないのか?
二人とも整った顔をしているだけにダサさが際立つ。電車の足元を見やると、モンキーがバナナを咥えたぬいぐるみのようなモノがついている。
どんだけバナナに毒されてるんだよと思いつつ、
「風呂、ありがとう」
と礼をのべれば、二人に変な顔をされた。
───だーかーらぁ! 礼ぐらい俺だって言うっての。
「皇はお洒落だな」
漬物のキュウリをつまみ食いし電車に怒られながら皇のカッコを眺めて言う、塩田。褒められるのは悪くないが、ダサいカッコをしている塩田に言われると複雑な気持ちになる。
「はいはい、おじいちゃんたちの為にお料理いっぱい作りましたよー」
と言いながら電車が最後の料理をダイニングのテーブルに置いた。
「誰がじいさんだ! まだ二十代だぞ」
と皇が抗議すると、
「こんな、年寄りが好みそうなものばっかり注文するのは、おじいちゃんで充分でしょ」
と電車が椅子を引く。
塩田は、
「苦しゅうない、苦しゅうない」
といいながら好物でもあるのか料理に目が釘付けである。
「良いから、副社長も座りなよ」
電車は三つのグラスにビールを注ぎながら。
「副社長はお風呂入ったからいいけど、塩田はまだだから一杯だけだよ」
「ん」
風呂場でぶっ倒れることを懸念してのようだが、こうして見ると二人はとてもバランスが取れているように感じる。世話焼き女房のような電車。素直に従う塩田。
「これ美味いな」
「でしょ? つまめるように寿司にしたんだ」
皇はこはだの寿司を食べながら、ほーうと感心した表情をする。
確かに品数は多いが、このテーブルには若者が好みそうな揚げ物やポテト、てんぷらなどの油物はなかった。一応、油モノと分類されそうなものに”あげナス”があるが、それとて大根おろしに万能ねぎが乗りさっぱりとした味わいになっている。
皇も塩田も胃弱と言うわけではないが皇は副社長という立場柄、相手会社の重役に会うことが多く、塩田は苦情処理ということでクレーマーと接する役職だ。対人ストレスによりあまり脂っこいものを受け付けないのである。
「長芋のサラダ? 旨いな」
「それ鰹節と出汁醤油だけでできるから、家で作ってみたら?」
と電車。
「いや、食べに来るわ」
と皇が長芋をむくのを面倒がって言うと、
「別にいいよ。塩田おじいちゃんだけじゃ作りがいないしねー」
と我関せずといった風に無心で料理に手をつける塩田をチラリと見ながら、電車は言ったのだった。
熱めの湯につかり疲労感は増したが、目が覚める。襟のしっかりしたポロシャツと細めで麻の混合されたさらっとした肌触りのハーフパンツを履いてリビングへ行くと、普段着に着替えた二人が居た。
「え……」
電車は大きなバナナがプリントされた白のTシャツに、豆粒ほどのバナナがびっしりと描かれたダブっとしたハーフパンツ。
塩田は胸に”塩対応”とえらく達筆な筆文字縦書きのプリントされたTシャツに、灰色のジャージにうさ耳スリッパ。
──ちょっと君たち、ダサ過ぎじゃないのか?
二人とも整った顔をしているだけにダサさが際立つ。電車の足元を見やると、モンキーがバナナを咥えたぬいぐるみのようなモノがついている。
どんだけバナナに毒されてるんだよと思いつつ、
「風呂、ありがとう」
と礼をのべれば、二人に変な顔をされた。
───だーかーらぁ! 礼ぐらい俺だって言うっての。
「皇はお洒落だな」
漬物のキュウリをつまみ食いし電車に怒られながら皇のカッコを眺めて言う、塩田。褒められるのは悪くないが、ダサいカッコをしている塩田に言われると複雑な気持ちになる。
「はいはい、おじいちゃんたちの為にお料理いっぱい作りましたよー」
と言いながら電車が最後の料理をダイニングのテーブルに置いた。
「誰がじいさんだ! まだ二十代だぞ」
と皇が抗議すると、
「こんな、年寄りが好みそうなものばっかり注文するのは、おじいちゃんで充分でしょ」
と電車が椅子を引く。
塩田は、
「苦しゅうない、苦しゅうない」
といいながら好物でもあるのか料理に目が釘付けである。
「良いから、副社長も座りなよ」
電車は三つのグラスにビールを注ぎながら。
「副社長はお風呂入ったからいいけど、塩田はまだだから一杯だけだよ」
「ん」
風呂場でぶっ倒れることを懸念してのようだが、こうして見ると二人はとてもバランスが取れているように感じる。世話焼き女房のような電車。素直に従う塩田。
「これ美味いな」
「でしょ? つまめるように寿司にしたんだ」
皇はこはだの寿司を食べながら、ほーうと感心した表情をする。
確かに品数は多いが、このテーブルには若者が好みそうな揚げ物やポテト、てんぷらなどの油物はなかった。一応、油モノと分類されそうなものに”あげナス”があるが、それとて大根おろしに万能ねぎが乗りさっぱりとした味わいになっている。
皇も塩田も胃弱と言うわけではないが皇は副社長という立場柄、相手会社の重役に会うことが多く、塩田は苦情処理ということでクレーマーと接する役職だ。対人ストレスによりあまり脂っこいものを受け付けないのである。
「長芋のサラダ? 旨いな」
「それ鰹節と出汁醤油だけでできるから、家で作ってみたら?」
と電車。
「いや、食べに来るわ」
と皇が長芋をむくのを面倒がって言うと、
「別にいいよ。塩田おじいちゃんだけじゃ作りがいないしねー」
と我関せずといった風に無心で料理に手をつける塩田をチラリと見ながら、電車は言ったのだった。
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