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────4話*水面下の戦い
8・それ、地雷だから
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****♡Side・塩田
「ねえ、早く。早く高級車乗せてよ」
「おまっ……」
塩田は背後でやり取りをする電車と皇のことには気にもかけず、ズンズンと駐車場に向かっていた。
「無言だけど、塩田が一番乗りたがってない?」
と、電車。
────失敬な。とも、言い切れない。
塩田は心の中でそんなことを考えつつ、指摘に関し無視を決めた。ここで反応しては、肯定したことになってしまう。そうなると二人を喜ばせかねない。断じてそれは、嫌である。
「車なら、どっかスーパー連れて行ってよ」
「え」
あからさまに、皇が嫌な声を出す。スーパーに行くのがそんなに嫌なのかと思っていると、
「おつまみ作ってあげるから」
と電車が食い下がった。
「何が作れるの、お前」
皇はどうやら、電車の料理の腕前を疑っているようだ。
「和洋中、一通りは」
「ほーう」
電車の言葉で皇の態度が一変する。塩田はその変わりように、思わず吹きそうになった。
「俺様は、手が込んでてさっぱりしたものが食べたい」
「なんなの、二人ともさっぱりしたものばっかり好んで。胃でも悪い?」
と電車。
「二人?」
と皇は、先を行く塩田に視線を向けたようだ。塩田は前を見ているため、確かめようがない。いや、確かめたくない。面倒である。
「ま、いっか。さっぱりしたものならあまり時間もかからないしね」
と、電車。
「サーモンマリネ食べたい」
と皇。さっきの嫌そうな態度は何処へやら。しっかりリクエストしていることに塩田は再び吹きそうになったが、耐えた。
「じゃあ、俺様の行きつけのスーパーに連れて行ってやろう」
「高いんじゃないの?」
と電車。
「俺様が払うんだ。少しくらい高かろうが問題あるまい」
「さすが高給取り!」
────なんだ、そのやり取りは。
駐車場へ着くと、ピッという音が背後からした。どうやらロックを解除した音らしい。塩田は車には乗らないため、憶測でしかわからない。
何せ塩田は、会社から徒歩五分、駅まで徒歩十分。便利な立地のマンションに住んでいる。免許も不要だ。いざとなったら、電車に取らせればいいと塩田は思っていた。
「ねえ。副社長」
「なんだ?」
「最近、総括とはどうなの?」
「ぶっ」
塩田は思わず吹いてしまう。これまで耐えて来たのが無駄になった。皇はむせている。
「おまっ……アイツの話は止めろ」
と、皇。
「え? なんで?」
”仲良かったよね?”と、何も知らない電車が不思議そうな顔をした。塩田は地雷を踏みやがったなと思いながら、勝手に皇の車の後部座席へ。
「なんか、言っちゃいけなかった?」
キョトンとする電車に、
「早く乗れ。置いていくぞ」
と皇は話を逸らすのだった。
「ねえ、早く。早く高級車乗せてよ」
「おまっ……」
塩田は背後でやり取りをする電車と皇のことには気にもかけず、ズンズンと駐車場に向かっていた。
「無言だけど、塩田が一番乗りたがってない?」
と、電車。
────失敬な。とも、言い切れない。
塩田は心の中でそんなことを考えつつ、指摘に関し無視を決めた。ここで反応しては、肯定したことになってしまう。そうなると二人を喜ばせかねない。断じてそれは、嫌である。
「車なら、どっかスーパー連れて行ってよ」
「え」
あからさまに、皇が嫌な声を出す。スーパーに行くのがそんなに嫌なのかと思っていると、
「おつまみ作ってあげるから」
と電車が食い下がった。
「何が作れるの、お前」
皇はどうやら、電車の料理の腕前を疑っているようだ。
「和洋中、一通りは」
「ほーう」
電車の言葉で皇の態度が一変する。塩田はその変わりように、思わず吹きそうになった。
「俺様は、手が込んでてさっぱりしたものが食べたい」
「なんなの、二人ともさっぱりしたものばっかり好んで。胃でも悪い?」
と電車。
「二人?」
と皇は、先を行く塩田に視線を向けたようだ。塩田は前を見ているため、確かめようがない。いや、確かめたくない。面倒である。
「ま、いっか。さっぱりしたものならあまり時間もかからないしね」
と、電車。
「サーモンマリネ食べたい」
と皇。さっきの嫌そうな態度は何処へやら。しっかりリクエストしていることに塩田は再び吹きそうになったが、耐えた。
「じゃあ、俺様の行きつけのスーパーに連れて行ってやろう」
「高いんじゃないの?」
と電車。
「俺様が払うんだ。少しくらい高かろうが問題あるまい」
「さすが高給取り!」
────なんだ、そのやり取りは。
駐車場へ着くと、ピッという音が背後からした。どうやらロックを解除した音らしい。塩田は車には乗らないため、憶測でしかわからない。
何せ塩田は、会社から徒歩五分、駅まで徒歩十分。便利な立地のマンションに住んでいる。免許も不要だ。いざとなったら、電車に取らせればいいと塩田は思っていた。
「ねえ。副社長」
「なんだ?」
「最近、総括とはどうなの?」
「ぶっ」
塩田は思わず吹いてしまう。これまで耐えて来たのが無駄になった。皇はむせている。
「おまっ……アイツの話は止めろ」
と、皇。
「え? なんで?」
”仲良かったよね?”と、何も知らない電車が不思議そうな顔をした。塩田は地雷を踏みやがったなと思いながら、勝手に皇の車の後部座席へ。
「なんか、言っちゃいけなかった?」
キョトンとする電車に、
「早く乗れ。置いていくぞ」
と皇は話を逸らすのだった。
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