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────4話*水面下の戦い
3・敵か、味方か? 社長秘書
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****♡Side・課長(唯野)
『唯野さんはどっち派なんです?』
唯野は社長秘書、神流川に言われたことを思い出していた。それは恐らく社長派か皇派ということである。
密かにあるこの派閥のせいで現在社内はややこしいことになっているのだ。社長側に付いている者のほとんどは何かしら恩恵を得ている。
対して皇派は彼のファンだ。土台が違う。
それに神流川がどっちに付いているのか分かりかねる状況で、こちらの腹を見せるのは得策とは思えない。
『俺はタチだからな。ヤるならやっぱり、塩田だろ』
と言って唯野はごまかした。
ここで皇を社長の魔の手から救い出そうとしていることがバレては困る。しかも味方が苦情係の面子しかいない状態だ。
神流川がもし社長に付いているならば、あっという間にやりこめられてしまう。
『塩田さんですか』
神流川は、思案に耽るような表情をした後、
『彼らは、社長に良いように出汁にされましたね』
と呟くように言った。
彼らとは恐らく、塩田と電車のことだろう。
塩田は”勝訴、勝訴”などと冗談を言っていたが、彼もきっとそのことには気づいているはず。
結論から言えば、社長は皇との今後を考え実の娘の味方をしなかったという事だ。恋人同士を引き裂いてまで無理やりつき合わせるというのもどうかと思うが。話し合いすらさせなかったに違いない。
社長には鼻からそんなつもりはなく、彼らが正しいと娘に言いきかせたのだろう。それで諦めてくれたのならばいいが。まだ何か起きそうな予感がする。
『社長が離婚することはご存じで?』
『ああ、噂で』
何か情報が手に入るかも知れないと思い、そこは素直に頷いた。
『人の口に蓋はできないとは、よく言ったものですね。課長がご存じと言う事は、かなりの方が知っているという事でしょうか』
『さあ、そこまでは分からんな』
『知れたからと言って、どうと言う事もないでしょうが。社長は堂々と皇副社長と交際することを望んでおられます』
その言葉に唯野は身構える。
──邪魔するなと言う意味か?
『このままでは彼が望んでいなくても、そうなってしまうんでしょうね』
憂いを含んだ言い方に唯野は”おや?”っと思う。
その言い方はまるで、”皇を助けてあげたい”と思っているように感じたからだ。ただ、彼がどちらに付いてそう言っているのかまでは分かりかねた。
──単に、権力に屈しなければならない皇を哀れんでいるのか?
それとも……。
唯野はイチかバチかの賭けに出る。出来れば神流川を味方につけたいと思っていた。彼が味方についてくれれば内情が浮き彫りに出ると考えたからだ。
『神流川はどう、思ってるんだ?』
しかし、意外な言葉を返される。
『こんなの、パワハラですよ』
唯野には彼は純粋に社長のやり方に憤りを感じつつ、立場上何もできないでいるように感じたのだった。
『唯野さんはどっち派なんです?』
唯野は社長秘書、神流川に言われたことを思い出していた。それは恐らく社長派か皇派ということである。
密かにあるこの派閥のせいで現在社内はややこしいことになっているのだ。社長側に付いている者のほとんどは何かしら恩恵を得ている。
対して皇派は彼のファンだ。土台が違う。
それに神流川がどっちに付いているのか分かりかねる状況で、こちらの腹を見せるのは得策とは思えない。
『俺はタチだからな。ヤるならやっぱり、塩田だろ』
と言って唯野はごまかした。
ここで皇を社長の魔の手から救い出そうとしていることがバレては困る。しかも味方が苦情係の面子しかいない状態だ。
神流川がもし社長に付いているならば、あっという間にやりこめられてしまう。
『塩田さんですか』
神流川は、思案に耽るような表情をした後、
『彼らは、社長に良いように出汁にされましたね』
と呟くように言った。
彼らとは恐らく、塩田と電車のことだろう。
塩田は”勝訴、勝訴”などと冗談を言っていたが、彼もきっとそのことには気づいているはず。
結論から言えば、社長は皇との今後を考え実の娘の味方をしなかったという事だ。恋人同士を引き裂いてまで無理やりつき合わせるというのもどうかと思うが。話し合いすらさせなかったに違いない。
社長には鼻からそんなつもりはなく、彼らが正しいと娘に言いきかせたのだろう。それで諦めてくれたのならばいいが。まだ何か起きそうな予感がする。
『社長が離婚することはご存じで?』
『ああ、噂で』
何か情報が手に入るかも知れないと思い、そこは素直に頷いた。
『人の口に蓋はできないとは、よく言ったものですね。課長がご存じと言う事は、かなりの方が知っているという事でしょうか』
『さあ、そこまでは分からんな』
『知れたからと言って、どうと言う事もないでしょうが。社長は堂々と皇副社長と交際することを望んでおられます』
その言葉に唯野は身構える。
──邪魔するなと言う意味か?
『このままでは彼が望んでいなくても、そうなってしまうんでしょうね』
憂いを含んだ言い方に唯野は”おや?”っと思う。
その言い方はまるで、”皇を助けてあげたい”と思っているように感じたからだ。ただ、彼がどちらに付いてそう言っているのかまでは分かりかねた。
──単に、権力に屈しなければならない皇を哀れんでいるのか?
それとも……。
唯野はイチかバチかの賭けに出る。出来れば神流川を味方につけたいと思っていた。彼が味方についてくれれば内情が浮き彫りに出ると考えたからだ。
『神流川はどう、思ってるんだ?』
しかし、意外な言葉を返される。
『こんなの、パワハラですよ』
唯野には彼は純粋に社長のやり方に憤りを感じつつ、立場上何もできないでいるように感じたのだった。
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