R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

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────3話*俺のものだから

19・手を差し伸べた、あの日から

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****♡Side・塩田

 人を好きになるって不思議だ。
 相手を喜ばせたいと思うのは笑顔が見たいから、なのだろうか?

──以前の自分だったら、絶対しないこと。
 今、自分が願うのは紀夫の幸せだけだ。

「塩田、大好きだよ」
 むぎゅっと抱きしめてくれる彼の体温が心地いい。出逢ったばかりの頃は、こんな風になるなんて思いもしなかった。

 何故か、(株)原始人の社長呉崎から気に入られ、
『大学を卒業したら、是非ともうちに来て欲しい。我が社には君が必要なんだ』
と泣きつかれ、就職先は一択となる。
 別段やりたいことも行きたいところもなかった塩田だったが、不安がなかったわけではない。わけの分からない部署に放り込まれ、上司は課長のみ。仕事内容を教えてくれるような先輩もいない。いたとて塩田の性格上、素直に教わることもなかっただろうが。

 同期の二人は、一人は見た目が派手な童顔の男と、見るからに体育会系の真面目そうな男。とてもじゃないが仲良くなれそうにはなかった。最も、塩田が自分から人と仲良くしようだなんてことは、天地がひっくり返ろうともあり得ないが。

──頭が悪そうだな。

 電車でんま紀夫のりおの第一印象は、それである。こういう環境に不慣れなのか、初めの頃は落ち着きがなくミスが多かった。当時、多忙を極めた苦情係で彼は、明らかにみんなの足を引っ張る存在。朝は電車に乗り遅れ、遅刻ギリギリなこともしばしば。
 だが彼は明るく、社交的で一所懸命だった。

 要領が良い自分と、要領の悪い彼。正反対の二人が合うはずもなく、もちろん話をすることもなかった。

 しかし、あの日……。

 連日の残業で疲れ切っていた彼は、ミスを連発。彼は電車通勤で終電が早い為、焦っていたのだろう。泣きそうな顔をして必死で仕事をこなそうとする彼に、とうとう見兼ねた塩田は手を差し伸べた。

──あの日、うちに泊めていなかったら俺に懐いたりしなかったんだよな。

「紀夫」
「うん?」
「愛してるよ」
「!」
 塩田の言葉に彼は驚いた顔をする。
「なんだよ」
「塩田がそんなこと言ってくれるなんて、夢みたいで」
「泣くなよ、お前はすぐ泣くんだから」
 よしよしと言うように、彼の猫ッ毛の髪を撫でてやると、再び抱きしめられた。
「だって、嬉しい」
「うん」
 触れあった素肌。とても馴染むのは相性がいいからだと思っている。

 だが、社長の一存で未来は変わってしまうかもしれない。
 いや、だったら仕事を変えればいいだけだ。

「なあ、紀夫」
「なあに?」
「もし、俺が会社を辞めることになったら」
「え?」
「一緒に旅に出ようか」

──紀夫と、あの女の手の届かない何処かへ。
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