上 下
88 / 218
────3話*俺のものだから

15・誤解と嫉妬と束縛【R】

しおりを挟む
****♡Side・副社長(皇)

「そんな簡単に、別れるとか言うなよ。離婚したら毎月養育費だって払わなきゃいけなくなるんだし、慰謝料だって請求されるんだぞ」
「それでも、皇と付き合えるなら構わない」
「そこまでの、価値。俺にはないよ」
 皇は自宅を拝見したいと言われ、自宅マンションへ向かっていた。社長が待っているとも知らずに。
「それに、重いよ。そういうの」
 元々、好意を寄せている相手ではないのに家庭を壊してまで想われるのは、皇にとって重荷でしかない。黒岩は皇の言葉に眉を寄せた。
「社長ならいいのかよ」
「あの人はそんなんじゃ……」
 否定しようとして先ほどの言葉が蘇る。

『僕と恋愛をしよう、皇くん』

 優しい声音で囁かれた、甘い言葉。あの人は、皇の良いところも悪いところも全て知った上で傍に置こうとした。尊敬も感謝もしているが恋ではない、信頼だ。身体の関係を二度ほど持ったが、それは互いの性欲の処理であって”不倫ではない”と思いたかった。
 しかしああ言われてしまっては、否定できなくなってくる。
「なんでちゃんと否定しないんだ? いつもなら……まさか」
「社長だ」
「は?」
 マンション前のロータリーに見知った車が止まっていた。その車に寄り掛かる黒い影は、スラリと背の高いモデル体型の男性。社長である。皇は少し手前で車を停めると、車を降り彼の元へ。続いて黒岩も皇に続いた。

「社長、何か急用でも?」
 いつも穏やかな社長はどうやらイライラしているようで、皇が近づくと腕を掴まれ引き寄せられる。

──何か……怒ってる?

「皇くん」
 名を呼ばれ彼を見つめ返すと、
 ”家に男を連れ込むつもりか?”
と耳元で問われ、青ざめた。
 完全に誤解されている。黒岩は家を見たいと言っただけなのに。
「皇くんと仕事の話がある。悪いが今日は遠慮してくれないか? 君のことは秘書に送らせるから」
 黒岩は何か言いたげであったが、相手は社長。しかも仕事の話だと言っている以上、意見することはできなかった。

 **

「んんッ……はあッ」
 皇は、手首を拘束され社長に組み敷かれていた。先ほどの会話が脳裏を過る。言い訳などさせてもらえなかった。

『彼を連れ込んでどうするつもりだった?』
 初めてだ、彼を怒らせたのは。いつだって、何をしたって彼が怒ったことはなく”君は君らしくいればいい”と言って微笑んでいたのに。

──その微笑みの意味に今頃気づくなんて、自分はなんて愚かなのだろう?

『昼間、あんなに愛してあげたのに。足りない? それとも、味をしめたのか?』
『そんなんじゃ……』

「いやッ……吸わな……んんッ」
 皇は鈴口を強く吸われ、身を捩る。先ほどから、彼の中指が皇の蕾を出たり入ったりしていた。部屋には、自身の甘ったるい声と水音だけが響いている。

『今夜は君が満足するまで、相手をしてあげるよ』
 皇は乱暴にベットに突き飛ばされ、怯んだ隙に手首を拘束されてしまった。
『そんな顔しないで。ちゃんと優しくしてあげるから』
『あッ……』
 後ろから優しく胸を撫でられて、胸の突起をつままれ、皇は瞳を閉じる。抵抗しても無駄なのだ。彼は話など聞いてはくれない。
 それほど腹を立てているのだ、他の男を家に招いたことに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

【エロ好き集まれ】【R18】調教モノ・責めモノ・SMモノ 短編集

天災
BL
 BLのエロ好きの皆さま方のためのものです。 ※R18 ※エロあり ※調教あり ※責めあり ※SMあり

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

昭和から平成の性的イジメ

ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。 内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。 実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。 全2話 チーマーとは 茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

処理中です...