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────3話*俺のものだから

14・絡まる糸と計画の不備

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****♡Side・社長

「そうか、わかった。報告ありがとう」
 社長は通話を終えると、後部座席のひじ置きに頬杖をついた。組んだ足先を揺すり、なんとかイライラを耐え、思案に耽る。

──誘ったのは皇くんのほうだ。
 深い意味はない。

「社長、ご自宅へ向かってよいのですか?」
 助手席の秘書が問う。このまま帰ったとて、彼のことが心配でたまらないのだ。皇は黒岩と一緒にいると報告があったばかり。その黒岩は妻帯者であるにも関わらず、皇に気がある。

──無理やりにでも、送るべきだった。
 手を打つのが遅すぎたのかもしれない。
 あの子は渡さない。

「皇くんのマンションへ向かってくれ」
「かしこまりました」

 彼との行為は甘美だ。その行為には決して愛など存在していないはずなのに、愛され求められている気分にさえなる。
『も……欲しい。れ……て』
 うるんだ瞳で見つめれ、理性を失う。

──あの子は僕のものだ。

 USBを渡したのは、それを見せつけるためだったのにアイツは彼の虜になってしまった。社長は唇を噛みしめる。ミスを犯したのは自分だ。

 彼は自分自身の素質を知らない。だからこそ、自分との約束を守り続けることが出来たともいえる。

『僕以外に抱かれてはダメだよ』
 
 初めてあの子を抱いた日、そう言って彼を縛り付けた。彼は恋を知らなかったため、それは単なる性欲処理なのだと思ったようだ。その証拠に彼が婚約者に選んだのは女性だった。

──皇くんが塩田君にちょっかいを出しているという報告は、何度も耳にしたが……。

 それについては、また別件だと思った。仮にうまくいったとしても塩田が皇を抱くとは思えなかった為だ。その塩田には恋人ができたという話も耳に入っている。

 心を落ち着けようと窓の外に視線を移そうとしたところで、スマホに着信が。どうやら娘からのようだ。タイミングが悪いと思いながらも、社長は通話の操作をする。
『パパ』
「どうした? 何かあったのかい?」
 すでに離婚を考えていたが、実の娘が可愛いことには変わらない。
 優しい声で問うと、
『最近遅いから、話す機会がなくて。パパにお願いしたいことがあって電話したのだけれど、今大丈夫?』
「大丈夫だよ。話してごらん」

 娘からの話はこうであった。恋人から別れを告げられたらしいのだが、どうしても別れたくないらしい。今週末、家に来るので説得して欲しいというのだ。相手はうちの社員だという。社長は通話を切ると……。
「ん? 電車でんま紀夫のりお?」
 確か、報告によると塩田の恋人は……。

────これは不味いことになったな。
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