78 / 218
────3話*俺のものだから
5・社長と皇と彼らの陰謀
しおりを挟む
****♡Side・社長
──あの子が欲しかった。どんな汚い手を使ってでも。
あの日、自分が現場に到着した時……彼はほぼ全裸だった。
『怖かったかい? もう大丈夫だよ』
きっと、一人で我慢していたのだろう。噛みしめた唇にはうっすらと血が滲んでいて、ホッとしたのか彼の頬を一筋の涙が伝った。全て計画通りだったはずなのに、正直自分の卑劣さに嫌気が差す。自分の上着を脱ぎかけてやると、庇護を求めるように胸にすり寄る彼。
──愛しかった。
抱き上げれば、震えていた彼がそっとこちらを窺う。
『君の私物は後で届けさせるから、気にしなくていい』
彼を社長室へ連れて行くと、慰めるようにその背中を優しく何度も撫でる。いつもは尊大に振舞う彼が、子猫のように甘えるその姿に、理性は崩壊した。ただ彼が自分を信頼し、良い部下である事だけを願っていたはずなのに。そうなるように仕向けたはずだったのに。
『はあッ……』
気づけば彼を言いくるめ、組み敷いていた。自分の罪を忘れないようにと一部始終を録画したつもりでいたが、それは何の役にも立たなかったのだ。
彼はそれほどまでに魅力的で、自分は虜となった。
『感じるままに、感じればいい』
『んッ』
彼はこの腕の中で、甘い声を上げ続け何度も熱を放ち、自分は彼を言葉で縛り付けたのだ。
────『皇くん、君のことは僕が守ってあげるよ』
「皇くんは……」
彼を気に入っているのは、てっきり社長のほうだと思っていたから油断した。視界の隅に居たはずの彼らは、気づけばいなくなっている。酔った彼をホテルの一室に連れて行ったというのだ。社長はルームナンバーを聞き出だすと慌ててエレベータへ向かった。
****♡side・副社長(皇)
──さて、どうしたものか。
自分のおかれている状況が、ピンチなのかそうではないのかすらわからない。
「!」
傍らに座っていた柿崎が立ち上がる、皇は思わず彼に手を伸ばした。こんな状態で一人にされたくはない。
「大丈夫、社長が来るから」
社長とはどちらを指しているのだろうか?
場合によっては絶対絶命とも言うべき状況になってしまう。
──いや、あの人が俺を見捨てるわけない。
『僕が守ってあげるよ、皇くん』
そうこうしているうちにも、パタリと部屋のドアの締まる音がする。皇は祈るような気持ちで状況の変化を待つ。柿崎は自分になにもしなかった。そのことに少しだけホッとする。
だが一体これに何の意味があるのか、わからないままだ。
「皇くん?」
入口から社長の声がする。これから起こる事こそが、彼らの狙いだとも知らずに皇はホッと息を漏らしたのだった。
──あの子が欲しかった。どんな汚い手を使ってでも。
あの日、自分が現場に到着した時……彼はほぼ全裸だった。
『怖かったかい? もう大丈夫だよ』
きっと、一人で我慢していたのだろう。噛みしめた唇にはうっすらと血が滲んでいて、ホッとしたのか彼の頬を一筋の涙が伝った。全て計画通りだったはずなのに、正直自分の卑劣さに嫌気が差す。自分の上着を脱ぎかけてやると、庇護を求めるように胸にすり寄る彼。
──愛しかった。
抱き上げれば、震えていた彼がそっとこちらを窺う。
『君の私物は後で届けさせるから、気にしなくていい』
彼を社長室へ連れて行くと、慰めるようにその背中を優しく何度も撫でる。いつもは尊大に振舞う彼が、子猫のように甘えるその姿に、理性は崩壊した。ただ彼が自分を信頼し、良い部下である事だけを願っていたはずなのに。そうなるように仕向けたはずだったのに。
『はあッ……』
気づけば彼を言いくるめ、組み敷いていた。自分の罪を忘れないようにと一部始終を録画したつもりでいたが、それは何の役にも立たなかったのだ。
彼はそれほどまでに魅力的で、自分は虜となった。
『感じるままに、感じればいい』
『んッ』
彼はこの腕の中で、甘い声を上げ続け何度も熱を放ち、自分は彼を言葉で縛り付けたのだ。
────『皇くん、君のことは僕が守ってあげるよ』
「皇くんは……」
彼を気に入っているのは、てっきり社長のほうだと思っていたから油断した。視界の隅に居たはずの彼らは、気づけばいなくなっている。酔った彼をホテルの一室に連れて行ったというのだ。社長はルームナンバーを聞き出だすと慌ててエレベータへ向かった。
****♡side・副社長(皇)
──さて、どうしたものか。
自分のおかれている状況が、ピンチなのかそうではないのかすらわからない。
「!」
傍らに座っていた柿崎が立ち上がる、皇は思わず彼に手を伸ばした。こんな状態で一人にされたくはない。
「大丈夫、社長が来るから」
社長とはどちらを指しているのだろうか?
場合によっては絶対絶命とも言うべき状況になってしまう。
──いや、あの人が俺を見捨てるわけない。
『僕が守ってあげるよ、皇くん』
そうこうしているうちにも、パタリと部屋のドアの締まる音がする。皇は祈るような気持ちで状況の変化を待つ。柿崎は自分になにもしなかった。そのことに少しだけホッとする。
だが一体これに何の意味があるのか、わからないままだ。
「皇くん?」
入口から社長の声がする。これから起こる事こそが、彼らの狙いだとも知らずに皇はホッと息を漏らしたのだった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる