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────3話*俺のものだから
4・秘書、柿崎の狙い
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****♡Side・副社長(皇)
「どうぞ」
指定されたホテルに到着すると、運転手が降りようとするのを制し、皇は車から降り社長のためにドアを開ける。お洒落な雰囲気の高級ホテルだ。恐らく大里グループ系列のところだろうと思った。
「ありがとう、皇くん」
社長は自分のためにわざわざドアを開けてくれる、皇の所作が気に入ったのか、品の良い笑みを浮かべた。しかしその先は逆、社長にエスコートされてしまう。
「おいで」
エントランスへ入ると、ベルボーイがスマートに上階のラウンジ直通のエレベーターへ案内してくれる。
彼らは席で待っていた。二人が近づくと、秘書らしき男が立ち上がろうとし、社長がそれを手で制す。
「構わないから。座っても?」
「呉崎社長、お待ちしておりました」
そこで相手の社の社長が、二人に向かって手を差し出した。座ってというジェスチャーのようだ。皇は社長のために椅子を引く。
「皇くん、君もかけなさい」
「はい」
──ん?
相手の社長秘書は”柿崎”というらしい。スラリとした体形で背が高そうである。黒に灰のストライプの入ったスーツをスマートに着こなし、眼鏡をかけ有能そうな彼は顔も整っていた。相手の社長は恰幅の良い年配の男である。皇は何度か彼に会っていた。
──新しい秘書なんだろうか?
柿崎はいつも社長と一緒にいる秘書とは違ったが、我が社の社長呉崎はそのことに触れない。皇も触れるべきではないのかと黙っていたが、彼がじっとこちらを、まるで品定めでもするかのように見つめているのが気になる。皇が眉を寄せ視線を返すと、彼は妖艶に微笑んだ。
──は⁈
皇はなんだか嫌な予感がしたのだった。
**
「ん……」
違和感の正体に気づき、皇が罠だと思った時には完全に手遅れ。
相手の社長が呉崎と二人だけで話したいというので、秘書である柿崎に地下のバーに連れていかれた。お洒落な、R&Bの流れるバー。勧められるまま口にした酒で、皇は見事に酔っぱらってしまった。
たった一杯、しかも酒に弱い方ではないのに。
「柿崎……どこ連れてく気だ」
「大丈夫、安全なところですよ」
皇は柿崎に抱きかかえられ、ホテルの一室に連れ込まれる。抵抗したいが、身体に力は入らなかった。
──何が目的なんだ、この男。
皇は社長との会話を思い出す。相手はスポンサーとなってくれるはずの会社だ。もし立場が逆なら、脅して契約を取り付けるためとも考えられるのだが。
「なあ、いつもの秘書はどうしたんだ?」
視界はぼんやりしているが、言葉を発することはできるようだ。
「やはり、気づいていましたが」
「社長だって気づいてるぞ」
「そうでしょうか?」
彼は皇をベッドに寝かせると、気持ち悪くないかと問う。よっぽど強い酒を呑まされたのかと、違う意味で吐き気がした。自分はもっと賢いと思っていたからだ。
「どういう意味だ」
焦点の定まらない瞳を、恐らく彼のいる方に向ける。
「どういう意味でしょうね」
──つかみどころのない男だな。
一体、何者なんだ?
「どうぞ」
指定されたホテルに到着すると、運転手が降りようとするのを制し、皇は車から降り社長のためにドアを開ける。お洒落な雰囲気の高級ホテルだ。恐らく大里グループ系列のところだろうと思った。
「ありがとう、皇くん」
社長は自分のためにわざわざドアを開けてくれる、皇の所作が気に入ったのか、品の良い笑みを浮かべた。しかしその先は逆、社長にエスコートされてしまう。
「おいで」
エントランスへ入ると、ベルボーイがスマートに上階のラウンジ直通のエレベーターへ案内してくれる。
彼らは席で待っていた。二人が近づくと、秘書らしき男が立ち上がろうとし、社長がそれを手で制す。
「構わないから。座っても?」
「呉崎社長、お待ちしておりました」
そこで相手の社の社長が、二人に向かって手を差し出した。座ってというジェスチャーのようだ。皇は社長のために椅子を引く。
「皇くん、君もかけなさい」
「はい」
──ん?
相手の社長秘書は”柿崎”というらしい。スラリとした体形で背が高そうである。黒に灰のストライプの入ったスーツをスマートに着こなし、眼鏡をかけ有能そうな彼は顔も整っていた。相手の社長は恰幅の良い年配の男である。皇は何度か彼に会っていた。
──新しい秘書なんだろうか?
柿崎はいつも社長と一緒にいる秘書とは違ったが、我が社の社長呉崎はそのことに触れない。皇も触れるべきではないのかと黙っていたが、彼がじっとこちらを、まるで品定めでもするかのように見つめているのが気になる。皇が眉を寄せ視線を返すと、彼は妖艶に微笑んだ。
──は⁈
皇はなんだか嫌な予感がしたのだった。
**
「ん……」
違和感の正体に気づき、皇が罠だと思った時には完全に手遅れ。
相手の社長が呉崎と二人だけで話したいというので、秘書である柿崎に地下のバーに連れていかれた。お洒落な、R&Bの流れるバー。勧められるまま口にした酒で、皇は見事に酔っぱらってしまった。
たった一杯、しかも酒に弱い方ではないのに。
「柿崎……どこ連れてく気だ」
「大丈夫、安全なところですよ」
皇は柿崎に抱きかかえられ、ホテルの一室に連れ込まれる。抵抗したいが、身体に力は入らなかった。
──何が目的なんだ、この男。
皇は社長との会話を思い出す。相手はスポンサーとなってくれるはずの会社だ。もし立場が逆なら、脅して契約を取り付けるためとも考えられるのだが。
「なあ、いつもの秘書はどうしたんだ?」
視界はぼんやりしているが、言葉を発することはできるようだ。
「やはり、気づいていましたが」
「社長だって気づいてるぞ」
「そうでしょうか?」
彼は皇をベッドに寝かせると、気持ち悪くないかと問う。よっぽど強い酒を呑まされたのかと、違う意味で吐き気がした。自分はもっと賢いと思っていたからだ。
「どういう意味だ」
焦点の定まらない瞳を、恐らく彼のいる方に向ける。
「どういう意味でしょうね」
──つかみどころのない男だな。
一体、何者なんだ?
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