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────3話*俺のものだから
1・社長と皇と課長
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****♡Side・課長(唯野)
「なんだ。俺様に用か?」
電車とぎゃあぎゃあ言い合っていた皇は、名を呼ばれ苦情係の入口に目を向ける。
唯野は自分のデスクで頬杖をつきながら、コーヒーカップを口元へ。塩田は相変わらず雑誌ばかり見ているし、板井は新しい菓子のデザインに夢中だ。一体どうなってるんだと思いながら電車のほうに目を向ければ、皇の気が自分から離れてしまった為つまらなそうな表情をして塩田のほうへ。
代わりに塩田が電車に絡みつかれ、嬉しそうな顔をした。
「昼飯、一緒にどう?」
「昼?」
黒岩がニコニコしながらはカウンターに身を乗り出し皇に声をかけている。その様子を見ながら唯野は、朝一で社長がここへ来たことを思い出す。
『皇くん』
『ん?』
塩田に絡み電車に噛みつかれていた皇は、社長に声をかけられそちらを振り返る。社長に対しても、いつもの尊大な態度は変わらないが、それはきっと表向きであろう。もしかしたら、そうするように指示されているのかもしれない。
『昼は会食がある、僕のところへおいで。先方が君をご指名だ』
彼は社長の言葉にため息をつくと、
『了解』
と短く返答した。
──ご指名……。
まさか、枕営業でもさせられているわけじゃないだろうな。
黒岩の一件もあり、唯野は思わずそんなことを思ってしまう。
『まったく、人気者は困るね』
などと発言をする皇に社長は優しい笑みを浮かべた。
──それはないか。
あの社長が皇にそんなことをさせるなんてあり得ない。
むしろ、指一本触れさせはしないだろうしな。
『社長は随分と皇にご執心のようですね』
あの時は余計なことを言ってしまった。
『君にはそう見えるのかい?』
入社当時から皇はとても目立つ存在だった上、誰が見ても明らかなほど社長のお気に入りに見えて。
『あの子は会社の成長には必要だ。そう、僕にとってもね』
と社長の瞳は怪しく光る。
社長は彼をどうするつもりなんだろう、唯野はそう思ったものだ。
その後、社長と皇の良くない噂が流れ始め、彼は異例の出世をしていった。噂は社長の圧力により完全鎮静化。その噂も元は社長が流させたのではないかと唯野は疑っている。皇が社長を頼るよう仕向けるために。
『あの子はいずれ、僕の右腕に据えたい』
あの頃、同部署の皇への嫌がらせは酷かった。
社長により緘口令が敷かれているが、”同部署の先輩に輪姦されそうになった”という事件もあったのだ。
実のところ、社長の指示だったのではないかと唯野は思っている。確かめることはできないが。一緒に調べようと誘う予定だった相手は、今や皇の虜だ。
──しかし、何故急に?
唯野には、全てが社長の罠に思えて仕方ないのだった。
「なんだ。俺様に用か?」
電車とぎゃあぎゃあ言い合っていた皇は、名を呼ばれ苦情係の入口に目を向ける。
唯野は自分のデスクで頬杖をつきながら、コーヒーカップを口元へ。塩田は相変わらず雑誌ばかり見ているし、板井は新しい菓子のデザインに夢中だ。一体どうなってるんだと思いながら電車のほうに目を向ければ、皇の気が自分から離れてしまった為つまらなそうな表情をして塩田のほうへ。
代わりに塩田が電車に絡みつかれ、嬉しそうな顔をした。
「昼飯、一緒にどう?」
「昼?」
黒岩がニコニコしながらはカウンターに身を乗り出し皇に声をかけている。その様子を見ながら唯野は、朝一で社長がここへ来たことを思い出す。
『皇くん』
『ん?』
塩田に絡み電車に噛みつかれていた皇は、社長に声をかけられそちらを振り返る。社長に対しても、いつもの尊大な態度は変わらないが、それはきっと表向きであろう。もしかしたら、そうするように指示されているのかもしれない。
『昼は会食がある、僕のところへおいで。先方が君をご指名だ』
彼は社長の言葉にため息をつくと、
『了解』
と短く返答した。
──ご指名……。
まさか、枕営業でもさせられているわけじゃないだろうな。
黒岩の一件もあり、唯野は思わずそんなことを思ってしまう。
『まったく、人気者は困るね』
などと発言をする皇に社長は優しい笑みを浮かべた。
──それはないか。
あの社長が皇にそんなことをさせるなんてあり得ない。
むしろ、指一本触れさせはしないだろうしな。
『社長は随分と皇にご執心のようですね』
あの時は余計なことを言ってしまった。
『君にはそう見えるのかい?』
入社当時から皇はとても目立つ存在だった上、誰が見ても明らかなほど社長のお気に入りに見えて。
『あの子は会社の成長には必要だ。そう、僕にとってもね』
と社長の瞳は怪しく光る。
社長は彼をどうするつもりなんだろう、唯野はそう思ったものだ。
その後、社長と皇の良くない噂が流れ始め、彼は異例の出世をしていった。噂は社長の圧力により完全鎮静化。その噂も元は社長が流させたのではないかと唯野は疑っている。皇が社長を頼るよう仕向けるために。
『あの子はいずれ、僕の右腕に据えたい』
あの頃、同部署の皇への嫌がらせは酷かった。
社長により緘口令が敷かれているが、”同部署の先輩に輪姦されそうになった”という事件もあったのだ。
実のところ、社長の指示だったのではないかと唯野は思っている。確かめることはできないが。一緒に調べようと誘う予定だった相手は、今や皇の虜だ。
──しかし、何故急に?
唯野には、全てが社長の罠に思えて仕方ないのだった。
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