R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

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────2話*俺のものでしょ?

21・優しい君は誰のもの?

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****♡Side・電車でんま

『話をしよう、塩田』
『何を……』

 皇副社長が資料室を出ていくまでの十数秒という短い時間は、二人にとってとても重く感じた────。

 パタンとドアが閉まるなり塩田は、
「別れ話か? だったら断る」
と強い口調で言い放ち、唇を噛みしめた。
「塩田」
「話は終わりだ」
と彼はそっぽを向き、ぎゅっと目を閉じる。
 そんな彼を電車は、”なんて愛しいのだろう?”と感じていた。
「っ?」
 電車は掴んでいた腕を強く引き、彼を強く胸に抱きしめる。大丈夫だよと言うようにその背を撫でながら、
「俺ね、塩田が大好きなんだよ」
と告げ、浅く息をした。
「ずっと一緒に居たいと思ってる」
 告白を聞いた彼が、電車の背中に腕を回す。

──俺にとって塩田は、世界一可愛い恋人だと思う。言葉にしなくって、こうやって気持ちを伝えようとしてくれているのに。どうして望んでしまうんだろう。

「どうして、助けてって言わないの?」
 彼は来るなと言った。
「どうして俺に頼ってくれないの?」
 自分は恋人なのに、どうして彼が頼る相手は自分じゃないのだろう。
「どうして、俺は塩田のいないところへはいけないのに、塩田は俺のいないところへ行ってしまうの?」
 黙って電車の胸に顔を埋めていた彼が、そこで顔をあげる。
「お願いだから、俺の目の届かないところへ行かないで」


****♡Side・塩田

──俺はまた……。

 いくつもの問いかけに何一つ答えることはできなくて、顔をあげた自分の瞳映ったのは、ハラハラと涙を溢す彼の姿だった。

──笑顔が見たいと願っているのに、どうして泣かせてしまうんだろう。

 いつだって、ニコニコしている彼を泣かせることばかりしてしまう自分。そんな自分は、彼と釣り合わないのではないかと不安になって、何も言えなくなる。仲直りがしたかっただけなのに、またこうして傷つける。そして段々と、別れたほうが彼のためなのではないかと思い始めてさえいるのだ。

『俺ね、塩田が大好きなんだよ』

 彼の言葉を心の中で反芻する。自分と居ても幸せになんて、してあげることはできない。そう、思うのに……。

──嫌だ。
 別れたくない。
 この手を離すなんて絶対嫌だ。
 俺は、どうしたらいい。

「本当は束縛なんてしたくない。でも、俺の言う事聞いて」
 涙を溢しながら、じっとこちらを見つめる彼。切ない懇願。
「わかった」
 やっと発した塩田の言葉に彼は、そっと微笑んだ。塩田は彼のカーディガンのポケットに手をツッコむとハンカチを引っ張り出し、彼の目元に充てる。
「紀夫」
「うん?」
「悪かった……ごめん」
「いいよ」
 続けて彼は、”俺もごめんね”と。
 なんのことだろうと思っていると、
「塩田はそんなに欲求不満だったんだね」
と言われる。
「は⁈」
「俺以外の人でも感じるなんて」
「あ、あんなの生理現象だろ!」
「ふうん」

 塩田はまだ知らない、【電車紀夫】が優しくする相手は塩田限定なこと。
 陰で彼が計算高い、鬼畜ドSと言われていることを。
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