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────2話*俺のものでしょ?
10・本当の目的はどこに
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****♡Side・総括(黒岩)
「おま……」
固まっていた皇副社長がやっと言葉を発したと思ったら、どう見ても軽蔑の眼差し。覚悟はしていたが……。
──そういう目、向けられると傷つくんだよな。
俺が盗撮したとでも思っているんだろうか?
どんな言葉で罵倒されるんだろうかと肩を竦めていると、意外な言葉をかけられる。
「これ観て、そんなにしてるのか?」
眉を寄せ、彼は顎で黒岩の股間のほうを差す。どうやら彼、皇と黒岩が考えていることは全然違うようだ。
「悪いか?」
ここまで来たらごまかしても無駄だと判断し、正直に答える。
「これ、誰だかわかってるんだろ?」
「それは、まあ」
「変態!」
黒岩はそこでやっと、彼の軽蔑の意味を理解した。
「変態は俺じゃないだろ?」
「はあ?」
彼の手元からノートPCを取り上げると、テーブルの上に置く。彼は不服そうだ。
「社長とのいきさつは話したろ? 俺を変態扱いする気か?」
皇はとても不服そうにこちらを見つめている。
黒岩はそんな彼に疑問を抱いていた。
──皇は何故、これ自体には怒らない?
出所を聞こうとしないんだ?
社長との情事が収められたUSBについて彼は、何も言わない。そのことがとても引っ掛かっている。
「これ、社長が寄こしたんだが」
思い切って彼に聞いてみることにした。
「だろうな」
「だろうなって……」
「行為の最中、社長が録画してたし」
皇は当時のことを思い出しているのか、床に視線を落とす。
****♡Side・副社長(皇)
『君は君のままでいればいい。僕が守ってあげるから』
──あの人はベッドの上で囁くように優しい言葉をくれた。
『皇くんは頑張ってるよ。僕はちゃんと見てる』
──優しい言葉に溺れて、気づけばあの人に抱かれてた。
『君はいい子だよ』
父に認められたいと、がむしゃらに頑張ってきた自分。どこまで行っても満たされない自分を、あの人は芯から融かした。頑張れば報われるんだということを教えるために、頑張ったら頑張った分だけ色んなモノを与えてくれたのだ。その代償が、例えこれであっても。
──社長が何故、黒岩さんに行為の一部を見せようとしたのかはわからない。
皇は、社長が自分と身体の関係を持ったのは会社に留めておくためだと思っていた。会社の成長のために自分を駒として手元に置くためだと。
その証拠に、行為の一部始終を撮影したUSBは、身体の関係を続けるための道具として使われたことはない。皇が自ら退職を申し出た時に使われる材料なのだと思っていた。
──社長の考えていることがわからない。
しかしその答えは、すぐそこまで近づいていたのだ。黒岩という駒を動かし、ホントに欲しいものを手に入れるために。
「おま……」
固まっていた皇副社長がやっと言葉を発したと思ったら、どう見ても軽蔑の眼差し。覚悟はしていたが……。
──そういう目、向けられると傷つくんだよな。
俺が盗撮したとでも思っているんだろうか?
どんな言葉で罵倒されるんだろうかと肩を竦めていると、意外な言葉をかけられる。
「これ観て、そんなにしてるのか?」
眉を寄せ、彼は顎で黒岩の股間のほうを差す。どうやら彼、皇と黒岩が考えていることは全然違うようだ。
「悪いか?」
ここまで来たらごまかしても無駄だと判断し、正直に答える。
「これ、誰だかわかってるんだろ?」
「それは、まあ」
「変態!」
黒岩はそこでやっと、彼の軽蔑の意味を理解した。
「変態は俺じゃないだろ?」
「はあ?」
彼の手元からノートPCを取り上げると、テーブルの上に置く。彼は不服そうだ。
「社長とのいきさつは話したろ? 俺を変態扱いする気か?」
皇はとても不服そうにこちらを見つめている。
黒岩はそんな彼に疑問を抱いていた。
──皇は何故、これ自体には怒らない?
出所を聞こうとしないんだ?
社長との情事が収められたUSBについて彼は、何も言わない。そのことがとても引っ掛かっている。
「これ、社長が寄こしたんだが」
思い切って彼に聞いてみることにした。
「だろうな」
「だろうなって……」
「行為の最中、社長が録画してたし」
皇は当時のことを思い出しているのか、床に視線を落とす。
****♡Side・副社長(皇)
『君は君のままでいればいい。僕が守ってあげるから』
──あの人はベッドの上で囁くように優しい言葉をくれた。
『皇くんは頑張ってるよ。僕はちゃんと見てる』
──優しい言葉に溺れて、気づけばあの人に抱かれてた。
『君はいい子だよ』
父に認められたいと、がむしゃらに頑張ってきた自分。どこまで行っても満たされない自分を、あの人は芯から融かした。頑張れば報われるんだということを教えるために、頑張ったら頑張った分だけ色んなモノを与えてくれたのだ。その代償が、例えこれであっても。
──社長が何故、黒岩さんに行為の一部を見せようとしたのかはわからない。
皇は、社長が自分と身体の関係を持ったのは会社に留めておくためだと思っていた。会社の成長のために自分を駒として手元に置くためだと。
その証拠に、行為の一部始終を撮影したUSBは、身体の関係を続けるための道具として使われたことはない。皇が自ら退職を申し出た時に使われる材料なのだと思っていた。
──社長の考えていることがわからない。
しかしその答えは、すぐそこまで近づいていたのだ。黒岩という駒を動かし、ホントに欲しいものを手に入れるために。
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