上 下
56 / 218
────2話*俺のものでしょ?

6・彼が周りに与えた影響は

しおりを挟む
****♡Side・副社長(皇)

 一杯のコーヒーを馳走になり、苦情係から出て副社長室近くの休憩室へ向かうと先客がいた。苦情係課長唯野の同期、総括部長の【黒岩】である。かなりのやり手で年がら年中忙しそうにしている男だ。
 皇が向かい側のソファーに腰かけると、
「どうしたんだよ、シケた面して」
と話しかけてくる。
 唯野とは違い、誰にでも気さくに話しかけるタイプの男だ。
 その為、人望も厚い。

「別に、どうもしてない」
と皇が答えると、
「その割には元気ないな。疲れてるのか?」
と、チョコレートを投げて寄こす。
 休憩中でも手に書類を持ち目を通す彼に、忙しそうだなと思いつつチョコレートを受け取り包みを開ける。シンプルなミルクチョコレートだ。
「好きだろ、それ」
 彼は、書類に目を落としたまま。
「ん」
 皇は小さく頷いた。

──塩田に出会う前は、仕事が全てだったのに。

 なんだか泣きたい気持ちになりながらチョコレートを頬張っていると、影が差す。
「?」
 見上げれば、彼がソファーの背もたれに手をつき、こちらをじっと見降ろしている。
「慰めてやろうか?」
「え?」
 一瞬なんのことかわからなかった。彼が自分を目上の者扱いではなく、年下扱いしてくるのは自分が一介の平社員から副社長に昇進してもかわらない。
 そこは唯野とは大きく違うところだ。自分も彼に対しては、そんな小さなことに拘ったことはなかった。兄が居たらこんな感じなのだろうか、と思ったことはあっても。

「ちょっ……まて。冗談は辞めろ」
 自分にとって彼は、本音で言い合う良い関係だ。そう思っていたのに。
「なあッ……」
 一体これはどういう状況なのか?
 ソファーに押し倒され、耳たぶを甘嚙みされる。慰めるとはつまり、そういう事らしい。彼の手はスラックスの上から皇の太ももを撫で上げ……。
「うう……塩田が好きなのに」
と皇が呟くように言葉を漏らし目に涙を浮かべるとスッと彼は離れた。

「冗談だ……って、泣くか?」
 いつもの悪ふざけの延長のようなものだったらしい。
「泣いてない」
「調子狂うな」
「お前が言うか?」
と渡されたハンカチで涙を拭い、ムッとして彼に視線を移すと、
「くくく」
と隣で肩を揺らし笑っている。
「ムカつく」
「はいはい。それより何かあった?」
 軽くあしらわれ、そう問われた。

──お前には、そっとしておくという選択肢はないのか!

 心の中で悪態をつきながら、
「なんでもないって言ってるだろ」
と返すと、疑いの眼差し。
 意地でも聞き出す気なのかと思っていると、
「そんな顔してると、社長が心配するぞ」
と言われる。
 皇は眉を寄せた。それは非常に困る状況だ。
「なあ、ホントに社長とデキてないのか」
「は?」
 黒岩の言葉に皇は以前社内に広がった噂のことを思い出していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...