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────2話*俺のものでしょ?
6・彼が周りに与えた影響は
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****♡Side・副社長(皇)
一杯のコーヒーを馳走になり、苦情係から出て副社長室近くの休憩室へ向かうと先客がいた。苦情係課長唯野の同期、総括部長の【黒岩】である。かなりのやり手で年がら年中忙しそうにしている男だ。
皇が向かい側のソファーに腰かけると、
「どうしたんだよ、シケた面して」
と話しかけてくる。
唯野とは違い、誰にでも気さくに話しかけるタイプの男だ。
その為、人望も厚い。
「別に、どうもしてない」
と皇が答えると、
「その割には元気ないな。疲れてるのか?」
と、チョコレートを投げて寄こす。
休憩中でも手に書類を持ち目を通す彼に、忙しそうだなと思いつつチョコレートを受け取り包みを開ける。シンプルなミルクチョコレートだ。
「好きだろ、それ」
彼は、書類に目を落としたまま。
「ん」
皇は小さく頷いた。
──塩田に出会う前は、仕事が全てだったのに。
なんだか泣きたい気持ちになりながらチョコレートを頬張っていると、影が差す。
「?」
見上げれば、彼がソファーの背もたれに手をつき、こちらをじっと見降ろしている。
「慰めてやろうか?」
「え?」
一瞬なんのことかわからなかった。彼が自分を目上の者扱いではなく、年下扱いしてくるのは自分が一介の平社員から副社長に昇進してもかわらない。
そこは唯野とは大きく違うところだ。自分も彼に対しては、そんな小さなことに拘ったことはなかった。兄が居たらこんな感じなのだろうか、と思ったことはあっても。
「ちょっ……まて。冗談は辞めろ」
自分にとって彼は、本音で言い合う良い関係だ。そう思っていたのに。
「なあッ……」
一体これはどういう状況なのか?
ソファーに押し倒され、耳たぶを甘嚙みされる。慰めるとはつまり、そういう事らしい。彼の手はスラックスの上から皇の太ももを撫で上げ……。
「うう……塩田が好きなのに」
と皇が呟くように言葉を漏らし目に涙を浮かべるとスッと彼は離れた。
「冗談だ……って、泣くか?」
いつもの悪ふざけの延長のようなものだったらしい。
「泣いてない」
「調子狂うな」
「お前が言うか?」
と渡されたハンカチで涙を拭い、ムッとして彼に視線を移すと、
「くくく」
と隣で肩を揺らし笑っている。
「ムカつく」
「はいはい。それより何かあった?」
軽くあしらわれ、そう問われた。
──お前には、そっとしておくという選択肢はないのか!
心の中で悪態をつきながら、
「なんでもないって言ってるだろ」
と返すと、疑いの眼差し。
意地でも聞き出す気なのかと思っていると、
「そんな顔してると、社長が心配するぞ」
と言われる。
皇は眉を寄せた。それは非常に困る状況だ。
「なあ、ホントに社長とデキてないのか」
「は?」
黒岩の言葉に皇は以前社内に広がった噂のことを思い出していた。
一杯のコーヒーを馳走になり、苦情係から出て副社長室近くの休憩室へ向かうと先客がいた。苦情係課長唯野の同期、総括部長の【黒岩】である。かなりのやり手で年がら年中忙しそうにしている男だ。
皇が向かい側のソファーに腰かけると、
「どうしたんだよ、シケた面して」
と話しかけてくる。
唯野とは違い、誰にでも気さくに話しかけるタイプの男だ。
その為、人望も厚い。
「別に、どうもしてない」
と皇が答えると、
「その割には元気ないな。疲れてるのか?」
と、チョコレートを投げて寄こす。
休憩中でも手に書類を持ち目を通す彼に、忙しそうだなと思いつつチョコレートを受け取り包みを開ける。シンプルなミルクチョコレートだ。
「好きだろ、それ」
彼は、書類に目を落としたまま。
「ん」
皇は小さく頷いた。
──塩田に出会う前は、仕事が全てだったのに。
なんだか泣きたい気持ちになりながらチョコレートを頬張っていると、影が差す。
「?」
見上げれば、彼がソファーの背もたれに手をつき、こちらをじっと見降ろしている。
「慰めてやろうか?」
「え?」
一瞬なんのことかわからなかった。彼が自分を目上の者扱いではなく、年下扱いしてくるのは自分が一介の平社員から副社長に昇進してもかわらない。
そこは唯野とは大きく違うところだ。自分も彼に対しては、そんな小さなことに拘ったことはなかった。兄が居たらこんな感じなのだろうか、と思ったことはあっても。
「ちょっ……まて。冗談は辞めろ」
自分にとって彼は、本音で言い合う良い関係だ。そう思っていたのに。
「なあッ……」
一体これはどういう状況なのか?
ソファーに押し倒され、耳たぶを甘嚙みされる。慰めるとはつまり、そういう事らしい。彼の手はスラックスの上から皇の太ももを撫で上げ……。
「うう……塩田が好きなのに」
と皇が呟くように言葉を漏らし目に涙を浮かべるとスッと彼は離れた。
「冗談だ……って、泣くか?」
いつもの悪ふざけの延長のようなものだったらしい。
「泣いてない」
「調子狂うな」
「お前が言うか?」
と渡されたハンカチで涙を拭い、ムッとして彼に視線を移すと、
「くくく」
と隣で肩を揺らし笑っている。
「ムカつく」
「はいはい。それより何かあった?」
軽くあしらわれ、そう問われた。
──お前には、そっとしておくという選択肢はないのか!
心の中で悪態をつきながら、
「なんでもないって言ってるだろ」
と返すと、疑いの眼差し。
意地でも聞き出す気なのかと思っていると、
「そんな顔してると、社長が心配するぞ」
と言われる。
皇は眉を寄せた。それは非常に困る状況だ。
「なあ、ホントに社長とデキてないのか」
「は?」
黒岩の言葉に皇は以前社内に広がった噂のことを思い出していた。
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