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────2話*俺のものでしょ?
2・これが恋というならば
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****♡Side・副社長(皇)
副社長の皇は塩田を追い、資料室にいた。ただ本棚に寄り掛かり彼の仕事ぶりを眺めながら、昨夜の自宅書斎での婚約者とのやり取りに思いを馳せる。
『塩田に本気だから、婚約解消?』
皇の言葉に婚約者である彼女は怪訝そうな表情をした後、
『ダーリン、無能な発言は感心しないわ』
と鼻で笑う。
『本気になるのは自由。でも、どう転んだって塩田はダーリンのモノにはならないわ』
ビシッと人差し指を鼻先に突き付け、彼女はそう続けた。
皇は書斎のデスクに寄り掛かり、腕を組んで黙る。
『馬鹿なこと言うのはおよしなさい。わたしたちの野望を忘れたわけじゃないんでしょ?』
彼女は皇の頬を撫で、そのまま首筋を伝いネクタイに指をかけた。
二人は恋人と言うよりは、同じ目標を持ったビジネスパートナーと言った方がしっくりくる。妖艶で美人、ドSな女だ。
自分が常に一番でないと気が済まない皇のことを良く知り、上手く扱う賢さもある。正直、彼女の傍は居心地がいい。
だが皇はどうしても、塩田を自分に向けたかった。
『いいこと? 遊びにしておきなさい』
”わがままなら、いくらでも聞いてあげるから”
彼女はそう耳元で囁くと皇のネクタイを引き抜く。普段なら主導権を握らなければ気が済まないのだが、ただされるがまま受け入れ流れに身を任せたのだった。
──彼女に逆らえないわけじゃない。
逆らっても無駄なだけだ。
「何しに来たんだ?」
という塩田の問いかけで、皇は我に返る。
「俺を監視して楽しいのか?」
顔を上げただけの皇に彼はそう嫌味を溢す。
あんまりな言い方だなと思いながらも、
「傍に居たいだけだ」
と素直に答えると、
「は?」
と彼は眉を顰めた。
「頭大丈夫か?」
彼は自分自身の頭をこんこんと指先で叩いて、ジェスチャーを寄こす。塩対応なのはいつものこと。彼が気遣う相手は【電車紀夫】ただ一人だけなのだから。
「恐らくな」
副社長は噛みつかなかった。諦めたように床に視線を落とす。
「皇?」
いつもと少し様子の違う皇にさすがの塩田も、心配そうにこちらに近づいてくる。
「どうかしたのか?」
「塩田はさ」
「ん?」
「自分の気持ちや頑張ろうって気持ちを真っ向から否定されて、なかったことにされたらどうする?」
床から視線を戻し、彼を見つめて。
「……」
彼は眉を寄せ複雑な表情をした。明らかに聞く相手が間違っているという空気が漂う。
「悪い、何でもない」
皇は俯いた。
「あんたらしくないな」
彼はそういうと、
「あんたなら、そんなこと気にしなさそうだけれど」
と続けたのだった。
副社長の皇は塩田を追い、資料室にいた。ただ本棚に寄り掛かり彼の仕事ぶりを眺めながら、昨夜の自宅書斎での婚約者とのやり取りに思いを馳せる。
『塩田に本気だから、婚約解消?』
皇の言葉に婚約者である彼女は怪訝そうな表情をした後、
『ダーリン、無能な発言は感心しないわ』
と鼻で笑う。
『本気になるのは自由。でも、どう転んだって塩田はダーリンのモノにはならないわ』
ビシッと人差し指を鼻先に突き付け、彼女はそう続けた。
皇は書斎のデスクに寄り掛かり、腕を組んで黙る。
『馬鹿なこと言うのはおよしなさい。わたしたちの野望を忘れたわけじゃないんでしょ?』
彼女は皇の頬を撫で、そのまま首筋を伝いネクタイに指をかけた。
二人は恋人と言うよりは、同じ目標を持ったビジネスパートナーと言った方がしっくりくる。妖艶で美人、ドSな女だ。
自分が常に一番でないと気が済まない皇のことを良く知り、上手く扱う賢さもある。正直、彼女の傍は居心地がいい。
だが皇はどうしても、塩田を自分に向けたかった。
『いいこと? 遊びにしておきなさい』
”わがままなら、いくらでも聞いてあげるから”
彼女はそう耳元で囁くと皇のネクタイを引き抜く。普段なら主導権を握らなければ気が済まないのだが、ただされるがまま受け入れ流れに身を任せたのだった。
──彼女に逆らえないわけじゃない。
逆らっても無駄なだけだ。
「何しに来たんだ?」
という塩田の問いかけで、皇は我に返る。
「俺を監視して楽しいのか?」
顔を上げただけの皇に彼はそう嫌味を溢す。
あんまりな言い方だなと思いながらも、
「傍に居たいだけだ」
と素直に答えると、
「は?」
と彼は眉を顰めた。
「頭大丈夫か?」
彼は自分自身の頭をこんこんと指先で叩いて、ジェスチャーを寄こす。塩対応なのはいつものこと。彼が気遣う相手は【電車紀夫】ただ一人だけなのだから。
「恐らくな」
副社長は噛みつかなかった。諦めたように床に視線を落とす。
「皇?」
いつもと少し様子の違う皇にさすがの塩田も、心配そうにこちらに近づいてくる。
「どうかしたのか?」
「塩田はさ」
「ん?」
「自分の気持ちや頑張ろうって気持ちを真っ向から否定されて、なかったことにされたらどうする?」
床から視線を戻し、彼を見つめて。
「……」
彼は眉を寄せ複雑な表情をした。明らかに聞く相手が間違っているという空気が漂う。
「悪い、何でもない」
皇は俯いた。
「あんたらしくないな」
彼はそういうと、
「あんたなら、そんなこと気にしなさそうだけれど」
と続けたのだった。
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