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────2話*俺のものでしょ?
1・揺れない心、不安な彼
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****♡Side・電車
どんな言葉で伝えても、
どんなモノで繋いでも、
どんなに時を紡いでも。
相手があの塩田では、電車の心が休まることはない。次から次へと求愛され、どれほど拒否しようとも執着される、あの塩田相手では。
「指輪?」
相も変わらず塩田の元へ通い詰める副社長の皇が、彼の左手薬指に目を止め、怪訝な表情をする。彼は皇に向けキラキラ光るプラチナリングを少し掲げてみせた。自慢げに。
「なんでそんなものしてるんだ? お洒落にでも目覚めたか?」
少し馬鹿にした皇の言葉に彼はフンとそっぽを向きながら、
「あいつがくれたんだ」
と返す。
電車は、少し離れたデスクからそんな二人にチラと視線を投げた。
どんなに会話の内容が険悪でも、仲良さそうに見えてしまう二人に不安がつきまとう。皇の塩田への執着は尋常ではない。
「なんだ、マーキングか。アイツ、意外と束縛するタイプなんだな」
皇は肩を竦めると、塩田の髪に触れた。
「束縛?」
彼は触れられること自体は気にしていないようで、不思議そうに皇へ聞き返している。
「”俺のモノだ、触るな”という意味だろ?」
と皇。
何当たり前のことを言っているんだという態度で。しかしそれを聞いた彼は、小さく微笑んだ。
「なんだ、そんな嬉しそうな顔をして」
その様子が気に入らないのか、皇はそう言って嫌な顔をする。
だが、
「嬉しいからだろ?」
と、彼。
「どうかしてるな」
「あんたには言われたくないな」
今度はムッとしている。
電車はため息をつき、PCの画面に視線を戻した。
****♡Side・塩田
──束縛か…。
アイツになら悪くない。
先ほどから塩田の髪を弄ぶ皇にケリを入れる。いくら触るなといっても聞きやしない。皇を放置し、いつもの雑誌を開く。
塩田は苦情係の中でもコール担当な為、電話が来ない限り暇である。雑誌を眺めながら、よぎるのは昨日の失敗だ。
この記事によると、付き合いの初期頃は”毎晩数回愛し合う傾向がある”と書いてある。だが実践しようとしたら断られた。話しに聞けば、電車は絶倫だというのに。
──噂がデマか……。
俺に魅力が足りない?
塩田は本気で悩んでいた。
電車の喜ぶことがしたいのに、どうも空振りが多い。自分の反応が薄いことは自覚している。それを差し引いても、手ごたえがない。
『もっとしよう』
『ダメだって』
デート時の情事。夜景の綺麗なホテルの一室であり、ムードは満点だったはずだ。たとえ、誘い方に色気がなかったとしても。そして翌日、仕事だったとしても二ラウンド目をキメる体力と時間はあったはずなのだ。
──やはり、色気か?
そんなハードル高いこと、俺にできるのか?
塩田は頬杖をつくと、ぼんやりと彼のほうを見つめる。
──どうしたら、お前のこと笑顔にできるんだろうな。
どんな言葉で伝えても、
どんなモノで繋いでも、
どんなに時を紡いでも。
相手があの塩田では、電車の心が休まることはない。次から次へと求愛され、どれほど拒否しようとも執着される、あの塩田相手では。
「指輪?」
相も変わらず塩田の元へ通い詰める副社長の皇が、彼の左手薬指に目を止め、怪訝な表情をする。彼は皇に向けキラキラ光るプラチナリングを少し掲げてみせた。自慢げに。
「なんでそんなものしてるんだ? お洒落にでも目覚めたか?」
少し馬鹿にした皇の言葉に彼はフンとそっぽを向きながら、
「あいつがくれたんだ」
と返す。
電車は、少し離れたデスクからそんな二人にチラと視線を投げた。
どんなに会話の内容が険悪でも、仲良さそうに見えてしまう二人に不安がつきまとう。皇の塩田への執着は尋常ではない。
「なんだ、マーキングか。アイツ、意外と束縛するタイプなんだな」
皇は肩を竦めると、塩田の髪に触れた。
「束縛?」
彼は触れられること自体は気にしていないようで、不思議そうに皇へ聞き返している。
「”俺のモノだ、触るな”という意味だろ?」
と皇。
何当たり前のことを言っているんだという態度で。しかしそれを聞いた彼は、小さく微笑んだ。
「なんだ、そんな嬉しそうな顔をして」
その様子が気に入らないのか、皇はそう言って嫌な顔をする。
だが、
「嬉しいからだろ?」
と、彼。
「どうかしてるな」
「あんたには言われたくないな」
今度はムッとしている。
電車はため息をつき、PCの画面に視線を戻した。
****♡Side・塩田
──束縛か…。
アイツになら悪くない。
先ほどから塩田の髪を弄ぶ皇にケリを入れる。いくら触るなといっても聞きやしない。皇を放置し、いつもの雑誌を開く。
塩田は苦情係の中でもコール担当な為、電話が来ない限り暇である。雑誌を眺めながら、よぎるのは昨日の失敗だ。
この記事によると、付き合いの初期頃は”毎晩数回愛し合う傾向がある”と書いてある。だが実践しようとしたら断られた。話しに聞けば、電車は絶倫だというのに。
──噂がデマか……。
俺に魅力が足りない?
塩田は本気で悩んでいた。
電車の喜ぶことがしたいのに、どうも空振りが多い。自分の反応が薄いことは自覚している。それを差し引いても、手ごたえがない。
『もっとしよう』
『ダメだって』
デート時の情事。夜景の綺麗なホテルの一室であり、ムードは満点だったはずだ。たとえ、誘い方に色気がなかったとしても。そして翌日、仕事だったとしても二ラウンド目をキメる体力と時間はあったはずなのだ。
──やはり、色気か?
そんなハードル高いこと、俺にできるのか?
塩田は頬杖をつくと、ぼんやりと彼のほうを見つめる。
──どうしたら、お前のこと笑顔にできるんだろうな。
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