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────1話*俺のものになってよ
21・頭大丈夫ですか?副社長
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****♡Side・塩田
「塩田、俺様と出かけよう」
「断る」
用事が済んだのか、再び副社長の皇は苦情係へとやってくる。いつも以上にシツコイ彼に塩田はため息をつく。
つくづく暇な会社だなと思い、通常なら助けてくれるはずの電車に目を向ければ、彼は珍しくPCに向かっていた。
塩田は彼が『デートだから、絶対定時であがる』と息巻いていたことを思い出す。
──言えば手伝ってやるのに。
そういえば、最近甘えてこないな……。
頬杖をつき、彼を眺めていると、
「手伝ってやろうか?」
と課長の唯野が彼に声をかけている。
これまた珍しい。いつもはコーヒー片手に丸ごとバ〇ナばかり食べているあの唯野が、だ。
塩田は”俺が”と言おうとして皇に阻まれた。
「出かけるくらい、いいだろ」
「シツコイな、あんた」
と塩田が嫌な顔をして皇に目を向けると、視界の端で板井が何とも言えない顔をしている。
恐らく”上司にその口の利き方は……”とでも思っているのであろう。板井はこの部署で、唯一の常識人であった。
「名前を呼べ」
しかし皇は気分を害した様子はない。塩田は誰に対してもこの態度である。それをわかった上で社長は塩田を気に入り、無理やり社に引き込んだ。皇も、こんな塩田だからこそ執着するのである。
「皇」
仕方なく名前を呼べば、皇は驚いたのち満面の笑みを浮かべ、
「悪くない」
と溢す。
──頭大丈夫か?
何がそんなに嬉しいんだ、名前を呼ばれたくらいで。
そんなことを思っていると、ガタっと立ち上がる電車が塩田の視界に入る。
「塩田」
少し苛立っているように思えて、
「あんたのせいで、電車が不機嫌だ」
と皇に抗議すれば、
「そんなこと、俺様の知ったことではない」
と回転椅子にふんぞり返った。
──お前は魔王か!
塩田は自分のことを棚に上げ、心の中でそんなことをツッコむ。
「塩田、返ろう」
ツカツカと塩田のところまで歩いてきた電車に腕を掴まれ、彼を見上げると憤慨しているように感じるが、笑顔だ。
「仕事は?」
「課長がやってくれるって」
塩田が驚いて唯野に目を向けると目が合い、苦笑いしている。つまり押し付けたということだろうか。
「電車、貸し一だからな」
と片手をあげる唯野。
「菓子一っすね」
と電車。
丸バナで良いかなと呟いている。
──まて、たぶんその”カシ”違うぞ。
電車に指摘しようとするが、就業のチャイムに塩田の声はかき消された。
「帰ろう」
「ああ」
後で指摘すれば良いかと思いつつ、塩田は席から立ち上がる。”イチャイチャすんな!”と皇に野次を飛ばされながら。
「レストラン予約してあるんだ」
電車はそんなことお構いなしで、嬉しそうにそう言った。
彼が笑顔ならいいかと塩田は思うのだった。
「塩田、俺様と出かけよう」
「断る」
用事が済んだのか、再び副社長の皇は苦情係へとやってくる。いつも以上にシツコイ彼に塩田はため息をつく。
つくづく暇な会社だなと思い、通常なら助けてくれるはずの電車に目を向ければ、彼は珍しくPCに向かっていた。
塩田は彼が『デートだから、絶対定時であがる』と息巻いていたことを思い出す。
──言えば手伝ってやるのに。
そういえば、最近甘えてこないな……。
頬杖をつき、彼を眺めていると、
「手伝ってやろうか?」
と課長の唯野が彼に声をかけている。
これまた珍しい。いつもはコーヒー片手に丸ごとバ〇ナばかり食べているあの唯野が、だ。
塩田は”俺が”と言おうとして皇に阻まれた。
「出かけるくらい、いいだろ」
「シツコイな、あんた」
と塩田が嫌な顔をして皇に目を向けると、視界の端で板井が何とも言えない顔をしている。
恐らく”上司にその口の利き方は……”とでも思っているのであろう。板井はこの部署で、唯一の常識人であった。
「名前を呼べ」
しかし皇は気分を害した様子はない。塩田は誰に対してもこの態度である。それをわかった上で社長は塩田を気に入り、無理やり社に引き込んだ。皇も、こんな塩田だからこそ執着するのである。
「皇」
仕方なく名前を呼べば、皇は驚いたのち満面の笑みを浮かべ、
「悪くない」
と溢す。
──頭大丈夫か?
何がそんなに嬉しいんだ、名前を呼ばれたくらいで。
そんなことを思っていると、ガタっと立ち上がる電車が塩田の視界に入る。
「塩田」
少し苛立っているように思えて、
「あんたのせいで、電車が不機嫌だ」
と皇に抗議すれば、
「そんなこと、俺様の知ったことではない」
と回転椅子にふんぞり返った。
──お前は魔王か!
塩田は自分のことを棚に上げ、心の中でそんなことをツッコむ。
「塩田、返ろう」
ツカツカと塩田のところまで歩いてきた電車に腕を掴まれ、彼を見上げると憤慨しているように感じるが、笑顔だ。
「仕事は?」
「課長がやってくれるって」
塩田が驚いて唯野に目を向けると目が合い、苦笑いしている。つまり押し付けたということだろうか。
「電車、貸し一だからな」
と片手をあげる唯野。
「菓子一っすね」
と電車。
丸バナで良いかなと呟いている。
──まて、たぶんその”カシ”違うぞ。
電車に指摘しようとするが、就業のチャイムに塩田の声はかき消された。
「帰ろう」
「ああ」
後で指摘すれば良いかと思いつつ、塩田は席から立ち上がる。”イチャイチャすんな!”と皇に野次を飛ばされながら。
「レストラン予約してあるんだ」
電車はそんなことお構いなしで、嬉しそうにそう言った。
彼が笑顔ならいいかと塩田は思うのだった。
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