48 / 218
────1話*俺のものになってよ
21・頭大丈夫ですか?副社長
しおりを挟む
****♡Side・塩田
「塩田、俺様と出かけよう」
「断る」
用事が済んだのか、再び副社長の皇は苦情係へとやってくる。いつも以上にシツコイ彼に塩田はため息をつく。
つくづく暇な会社だなと思い、通常なら助けてくれるはずの電車に目を向ければ、彼は珍しくPCに向かっていた。
塩田は彼が『デートだから、絶対定時であがる』と息巻いていたことを思い出す。
──言えば手伝ってやるのに。
そういえば、最近甘えてこないな……。
頬杖をつき、彼を眺めていると、
「手伝ってやろうか?」
と課長の唯野が彼に声をかけている。
これまた珍しい。いつもはコーヒー片手に丸ごとバ〇ナばかり食べているあの唯野が、だ。
塩田は”俺が”と言おうとして皇に阻まれた。
「出かけるくらい、いいだろ」
「シツコイな、あんた」
と塩田が嫌な顔をして皇に目を向けると、視界の端で板井が何とも言えない顔をしている。
恐らく”上司にその口の利き方は……”とでも思っているのであろう。板井はこの部署で、唯一の常識人であった。
「名前を呼べ」
しかし皇は気分を害した様子はない。塩田は誰に対してもこの態度である。それをわかった上で社長は塩田を気に入り、無理やり社に引き込んだ。皇も、こんな塩田だからこそ執着するのである。
「皇」
仕方なく名前を呼べば、皇は驚いたのち満面の笑みを浮かべ、
「悪くない」
と溢す。
──頭大丈夫か?
何がそんなに嬉しいんだ、名前を呼ばれたくらいで。
そんなことを思っていると、ガタっと立ち上がる電車が塩田の視界に入る。
「塩田」
少し苛立っているように思えて、
「あんたのせいで、電車が不機嫌だ」
と皇に抗議すれば、
「そんなこと、俺様の知ったことではない」
と回転椅子にふんぞり返った。
──お前は魔王か!
塩田は自分のことを棚に上げ、心の中でそんなことをツッコむ。
「塩田、返ろう」
ツカツカと塩田のところまで歩いてきた電車に腕を掴まれ、彼を見上げると憤慨しているように感じるが、笑顔だ。
「仕事は?」
「課長がやってくれるって」
塩田が驚いて唯野に目を向けると目が合い、苦笑いしている。つまり押し付けたということだろうか。
「電車、貸し一だからな」
と片手をあげる唯野。
「菓子一っすね」
と電車。
丸バナで良いかなと呟いている。
──まて、たぶんその”カシ”違うぞ。
電車に指摘しようとするが、就業のチャイムに塩田の声はかき消された。
「帰ろう」
「ああ」
後で指摘すれば良いかと思いつつ、塩田は席から立ち上がる。”イチャイチャすんな!”と皇に野次を飛ばされながら。
「レストラン予約してあるんだ」
電車はそんなことお構いなしで、嬉しそうにそう言った。
彼が笑顔ならいいかと塩田は思うのだった。
「塩田、俺様と出かけよう」
「断る」
用事が済んだのか、再び副社長の皇は苦情係へとやってくる。いつも以上にシツコイ彼に塩田はため息をつく。
つくづく暇な会社だなと思い、通常なら助けてくれるはずの電車に目を向ければ、彼は珍しくPCに向かっていた。
塩田は彼が『デートだから、絶対定時であがる』と息巻いていたことを思い出す。
──言えば手伝ってやるのに。
そういえば、最近甘えてこないな……。
頬杖をつき、彼を眺めていると、
「手伝ってやろうか?」
と課長の唯野が彼に声をかけている。
これまた珍しい。いつもはコーヒー片手に丸ごとバ〇ナばかり食べているあの唯野が、だ。
塩田は”俺が”と言おうとして皇に阻まれた。
「出かけるくらい、いいだろ」
「シツコイな、あんた」
と塩田が嫌な顔をして皇に目を向けると、視界の端で板井が何とも言えない顔をしている。
恐らく”上司にその口の利き方は……”とでも思っているのであろう。板井はこの部署で、唯一の常識人であった。
「名前を呼べ」
しかし皇は気分を害した様子はない。塩田は誰に対してもこの態度である。それをわかった上で社長は塩田を気に入り、無理やり社に引き込んだ。皇も、こんな塩田だからこそ執着するのである。
「皇」
仕方なく名前を呼べば、皇は驚いたのち満面の笑みを浮かべ、
「悪くない」
と溢す。
──頭大丈夫か?
何がそんなに嬉しいんだ、名前を呼ばれたくらいで。
そんなことを思っていると、ガタっと立ち上がる電車が塩田の視界に入る。
「塩田」
少し苛立っているように思えて、
「あんたのせいで、電車が不機嫌だ」
と皇に抗議すれば、
「そんなこと、俺様の知ったことではない」
と回転椅子にふんぞり返った。
──お前は魔王か!
塩田は自分のことを棚に上げ、心の中でそんなことをツッコむ。
「塩田、返ろう」
ツカツカと塩田のところまで歩いてきた電車に腕を掴まれ、彼を見上げると憤慨しているように感じるが、笑顔だ。
「仕事は?」
「課長がやってくれるって」
塩田が驚いて唯野に目を向けると目が合い、苦笑いしている。つまり押し付けたということだろうか。
「電車、貸し一だからな」
と片手をあげる唯野。
「菓子一っすね」
と電車。
丸バナで良いかなと呟いている。
──まて、たぶんその”カシ”違うぞ。
電車に指摘しようとするが、就業のチャイムに塩田の声はかき消された。
「帰ろう」
「ああ」
後で指摘すれば良いかと思いつつ、塩田は席から立ち上がる。”イチャイチャすんな!”と皇に野次を飛ばされながら。
「レストラン予約してあるんだ」
電車はそんなことお構いなしで、嬉しそうにそう言った。
彼が笑顔ならいいかと塩田は思うのだった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説


エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
303号室の熊さん〜純情巨漢は私の救世主でした〜
茜琉ぴーたん
恋愛
ある夜…彼氏の部屋で家事をしていたら、ベランダに締め出された菜穂。仕方なく隣の部屋に助けを求めることにしたのだが、隣人はヒゲもじゃの大男だった。
彼は話してみると善人で、懐いた菜穂は恩返しにと散らかった部屋の片付けを申し出る。そして隣室の彼氏へのプチ復讐を考え始めて…。
(148話+おまけ8話)
*1日2話〜3話の更新です。
*キャラクター画像は、自作原画をAI出力し編集したものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる