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────1話*俺のものになってよ
20・煌めく月と瞳の中の笑顔
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****♡Side・電車
「皇くん、いるかね?」
副社長の皇とギャアギャアやっていると、我が社のトップである社長が苦情係に顔を出す。皇以外の者が不思議そうな表情を浮かべた。社長は塩田と目が合うと、優しい笑み溢す。
──塩田は社長のお気に入りだもんなあ。
どうこうなるとかなさそうだけど。
電車はそっとため息をつくと、塩田に後ろから抱きつく。社長はスラリと背が高く、ビシッとスーツを着こなし、年配だが若く見える。正直、塩田と並んで立つとお似合いだ。それに対し、自分は明るい髪に童顔、子供っぽく見えた。それを利用して塩田に甘えている部分もあるが、恋人となった今は並んでお似合いの二人でありたい。
──黒く染めようかな。
大人っぽくなったら、塩田と似合うかな?
前髪を指先で一つまみし、そんなことを考えていると、塩田の手が電車の腕に触れる。”どうかしたのか?”とでも言うように。
「俺様に何か用か?」
電車が塩田に言葉を発しようとしていたら、カウンターの上に足を組み腰かけていた皇が、社長に向かって言葉をかけた。そこで皆が彼に注目する。
「なんだ、お前ら。変な顔をして」
と皇。
「副社長、皇って言うんですか?」
と板井。
そこで、皇が皆の視線の意味を理解した。
「なんだお前ら、俺様の名前も知らんのか! なんて奴らだ」
皇はプンスカしているが、なんだか可愛らしい。
「まったく」
皇は社長に手招きをされカウンターから降りると人差し指を突き出し、
「いいかお前ら、上司は敬えよ。この俺様を」
と、捨て台詞を残して苦情係を出ていく。
──いやまて。
あんたが言うのか?
社内で一番威張ってるあんたが?
電車は吹き出しそうになる。なんとも愉快な人だ。あれで見た目が良くなかったら、ただの笑い者なのだが。
残念ながら見た目も良く、モデル体型で社内ではかなり人気がある。性格には相当難ありだが。
──金持ってるしな。
ある意味面白いし。
「ん?」
笑いたいのをこらえていると、塩田にクイクイとワイシャツの袖を引かれる。なんだろうと彼に視線を移せば、じっとこちらを見上げていた。心配そうに。
「さっき何か言おうとしてただろ」
と、彼。
「あ、髪染めようかなって思って」
と答えれば、
「何故」
と問われる。
「染めたほうが大人っぽいかなって思って」
と返すと、彼が腕を伸ばし電車の髪をさらりと撫でた。
電車はドキリとする。何でもない仕草に色気を感じてしまう。
「このままじゃダメなのか?」
と、彼。
「俺は月みたいに綺麗なお前の髪、好きだよ」
と続けて。
彼の瞳に映るのは煌めく金。まるで月だ。続いて彼の瞳に映りこんだのは電車の笑顔。
「なんだ、嬉しそうな顔して」
不思議そうな彼に、
「塩田が大好きだよ」
と電車は目を細めたのだった。
「皇くん、いるかね?」
副社長の皇とギャアギャアやっていると、我が社のトップである社長が苦情係に顔を出す。皇以外の者が不思議そうな表情を浮かべた。社長は塩田と目が合うと、優しい笑み溢す。
──塩田は社長のお気に入りだもんなあ。
どうこうなるとかなさそうだけど。
電車はそっとため息をつくと、塩田に後ろから抱きつく。社長はスラリと背が高く、ビシッとスーツを着こなし、年配だが若く見える。正直、塩田と並んで立つとお似合いだ。それに対し、自分は明るい髪に童顔、子供っぽく見えた。それを利用して塩田に甘えている部分もあるが、恋人となった今は並んでお似合いの二人でありたい。
──黒く染めようかな。
大人っぽくなったら、塩田と似合うかな?
前髪を指先で一つまみし、そんなことを考えていると、塩田の手が電車の腕に触れる。”どうかしたのか?”とでも言うように。
「俺様に何か用か?」
電車が塩田に言葉を発しようとしていたら、カウンターの上に足を組み腰かけていた皇が、社長に向かって言葉をかけた。そこで皆が彼に注目する。
「なんだ、お前ら。変な顔をして」
と皇。
「副社長、皇って言うんですか?」
と板井。
そこで、皇が皆の視線の意味を理解した。
「なんだお前ら、俺様の名前も知らんのか! なんて奴らだ」
皇はプンスカしているが、なんだか可愛らしい。
「まったく」
皇は社長に手招きをされカウンターから降りると人差し指を突き出し、
「いいかお前ら、上司は敬えよ。この俺様を」
と、捨て台詞を残して苦情係を出ていく。
──いやまて。
あんたが言うのか?
社内で一番威張ってるあんたが?
電車は吹き出しそうになる。なんとも愉快な人だ。あれで見た目が良くなかったら、ただの笑い者なのだが。
残念ながら見た目も良く、モデル体型で社内ではかなり人気がある。性格には相当難ありだが。
──金持ってるしな。
ある意味面白いし。
「ん?」
笑いたいのをこらえていると、塩田にクイクイとワイシャツの袖を引かれる。なんだろうと彼に視線を移せば、じっとこちらを見上げていた。心配そうに。
「さっき何か言おうとしてただろ」
と、彼。
「あ、髪染めようかなって思って」
と答えれば、
「何故」
と問われる。
「染めたほうが大人っぽいかなって思って」
と返すと、彼が腕を伸ばし電車の髪をさらりと撫でた。
電車はドキリとする。何でもない仕草に色気を感じてしまう。
「このままじゃダメなのか?」
と、彼。
「俺は月みたいに綺麗なお前の髪、好きだよ」
と続けて。
彼の瞳に映るのは煌めく金。まるで月だ。続いて彼の瞳に映りこんだのは電車の笑顔。
「なんだ、嬉しそうな顔して」
不思議そうな彼に、
「塩田が大好きだよ」
と電車は目を細めたのだった。
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