上 下
45 / 218
────1話*俺のものになってよ

18・俺には、恋人らしいは難しい【微R】

しおりを挟む
****♡Side・塩田

「ねえ、塩田」
 電車でんまはバスタブのふちに頬杖をつき、洗い場で身体に泡を滑らせている塩田に声をかけて来た。
「なんだ」
「明日、夕食どこかに食べに行こうよ」
「外食したいのか?」
と、塩田が不思議そうな顔をすると、彼は柔らかく微笑んで、
「デート、しようよ」
と言いなおす。
「デート……」
「ね、いいでしょ?」
 優しい眼差し。塩田はじっと彼を見つめた。
 電車でんまは同期で同じ部署。何かと言えばしょっちゅう家に入り浸っていたし、何でも知っていると思っていた。強引な奴だと思っていたのに、彼は優しい。
「いいよ」
 きっと”自分おれを思ってのことなんだ”と解釈した塩田が承諾の意を示すと、彼は嬉しそうな顔をする。

 相手に笑っていて欲しいと願うことが、恋なのかもしれない。

 恋なんて無縁だった自分には、”恋人らしいこと”なんて簡単には思いつかない。馬鹿みたいに勉強して”こういうことをすればいいのか”と頭で理解するだけ。
「楽しみだね」
と、彼。
「そうだな」
と返せば、彼が愛しそうに塩田の髪に触れる。塩田はそんな彼に口づけた。


****♡Side・電車でんま

──最近、塩田が積極的だ。
 嬉しけど、戸惑う。

 塩田の唇が離れ、電車は困ったように笑みを浮かべる。ここは風呂場で、全裸。変な気を起こすつもりはなかったが、自分の意志に反して下半身が反応しそうである。理性と煩悩の狭間で行ったり来たり。
 わき腹をツネって耐えていると、
「少し開けて」
と、塩田が浴槽に入ってくる。
「うん」

──ええッ!

 今にも”おはよう”してしまいそうな自分自身と戦う電車に、追い打ちをかけるかのように彼は、電車の胸にその背中を預け腰かけた。

──ご、拷問⁈

 困惑する電車などお構いなし。
「えっと、塩田」
「ん?」
「ひっつきすぎじゃない?」
 耐えきれず、彼にそう言うと、
「いいだろ」
と不機嫌な返事。
 電車はため息をつくと、そっと後ろから彼を抱きしめた。
「ご機嫌斜めなの?」
 耳元で優しく問えば、
「別に」
と短く答える。

──塩田が悪いんだよ?
 無自覚だから。

 電車は、塩田のせいにして理性を投げ捨てた。首筋に吸い付き、彼の胸の飾りに指を滑らす。
「おい……何して……」
 慌てる彼に電車は、
「誘ってるんでしょ?」
と問い、
「んッ……はあッ……そんなことしてない」
と嫌がってはいないが、やんわりと抵抗し涙目で振り返る彼に口づけた。
「俺をその気にさせたいんでしょ?」
「んんッ……なんでそうなるッ」
「こんな状態でくっつかれたら、誰だって平静じゃいられない」
「はあッ……俺はただ……」

 ”恋人みたいにしたかっただけ”
 彼の頬を伝う涙。

──なんて愛しいんだろう。
 俺は馬鹿だな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

白バイ隊員への強淫

熊次郎
BL
浅野拓哉は28歳の白バイ隊員だ。バイクを乗り回し、日々任務を遂行している。白いヘルメットとスカイブルーの制服が奮い立たせるは、仕事への情熱だけのはずたった、、、

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

処理中です...