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────1話*俺のものになってよ
16・嘘か真か……幻……いや、地獄か?
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****♡Side・電車
「塩田、デートはどこに行きたいんだ?」
「遊園地」
電車が業務を終え苦情係に戻ると副社長の皇と塩田の話し声。皇が苦情係に入り浸っているのは毎度のことだが、話の内容が穏やかではない。
──は? デート?
塩田と副社長が?
「初デートの遊園地はオススメしないぞ」
と、皇。
塩田は手元の雑誌から顔をあげ、彼を嫌そうに見上げる。
「不服そうな顔しやがって」
クククっと皇は笑うと、
「待ち時間が長いから、できたてカップルだと喧嘩別れが多いらしいぞ」
と続けた。
「ふーん」
「そんなに遊園地に行きたいのか?」
と言う彼の質問に雑誌の開いたページを指差す、塩田。
その手元を覗き込む彼。なんとも自然で仲が良さそうだ。ほんの少し苦情係を空けただけで、恋人が奪われそうな現状に電車は頭痛がする。
「観覧車なぁ……」
“塩田は意外とロマンチックなんだな”と溢す彼に、
「恋人が喜ぶと書いてある」
と真面目な塩田。
「真に受けすぎだろ」
「は?」
「いやまあ、喜ぶかもしれんが」
皇は態勢を戻すと、顎に手をやって。
彼の言葉に塩田は何故か満足そうだ。
「塩田っ」
電車が堪らなくなって塩田に声をかけると、皇が不敵な笑みを浮かべる。塩田の前に立ち、なんと言うべきか迷っていると回転イスに腰掛けている彼が電車の腰に腕を回し腹に頬をつけた。
「なんだ?」
「あ、アイツとデートすんの?」
──塩田は俺のだよね?
止めてもいいんだよね?
「は?」
と電車の言葉に、塩田は驚いた顔をする。
「俺がなんで、あんなアホとデートせにゃならん」
「おい、指を差すな塩田」
と皇は笑って。
「だって……今……」
電車が唇を噛みしめ言葉を濁すと、彼は不思議そうな表情を浮かべ、
「俺はお前と……なんで泣きそうなんだ」
「俺と?」
──今、俺とって言った?
俺とデートしてくれるの? 塩田が?
まて、夢か?
「塩田、デートしてくれんの?!」
とく言い気味に問いかければ、
「恋人はデートするものなんだろ?」
と、彼は雑誌のページを指差して。
「そ、そうだけど……」
「したくないのか?」
と、少ししょんぼりする彼が可愛い。
きっと一所懸命、恋愛について学ぼうとしてくれているのだろう。
「したいに決まってるじゃん!」
そんな彼を笑顔にしたくて、そう言うと何故かムッとされる。
「じゃあ、なんで誘わないんだ?」
と。
──可愛いなぁ、塩田。
「誘ったら、断られると思って」
と電車が素直に理由を述べれば、彼はこちらを睨み付けてくる。
「誘ってもないのに、わかるわけないだろ。俺はてっきり……」
「ごめん、塩田」
電車は嬉しくなって彼を抱き寄せた。しかし今は業務中である。
イチャイチャし出した二人に皇が舌打ちをし、唯野がやれやれと肩をすくめ、キッチンに向かった板井は足の小指をぶつけ悶絶していたのだった。
「塩田、デートはどこに行きたいんだ?」
「遊園地」
電車が業務を終え苦情係に戻ると副社長の皇と塩田の話し声。皇が苦情係に入り浸っているのは毎度のことだが、話の内容が穏やかではない。
──は? デート?
塩田と副社長が?
「初デートの遊園地はオススメしないぞ」
と、皇。
塩田は手元の雑誌から顔をあげ、彼を嫌そうに見上げる。
「不服そうな顔しやがって」
クククっと皇は笑うと、
「待ち時間が長いから、できたてカップルだと喧嘩別れが多いらしいぞ」
と続けた。
「ふーん」
「そんなに遊園地に行きたいのか?」
と言う彼の質問に雑誌の開いたページを指差す、塩田。
その手元を覗き込む彼。なんとも自然で仲が良さそうだ。ほんの少し苦情係を空けただけで、恋人が奪われそうな現状に電車は頭痛がする。
「観覧車なぁ……」
“塩田は意外とロマンチックなんだな”と溢す彼に、
「恋人が喜ぶと書いてある」
と真面目な塩田。
「真に受けすぎだろ」
「は?」
「いやまあ、喜ぶかもしれんが」
皇は態勢を戻すと、顎に手をやって。
彼の言葉に塩田は何故か満足そうだ。
「塩田っ」
電車が堪らなくなって塩田に声をかけると、皇が不敵な笑みを浮かべる。塩田の前に立ち、なんと言うべきか迷っていると回転イスに腰掛けている彼が電車の腰に腕を回し腹に頬をつけた。
「なんだ?」
「あ、アイツとデートすんの?」
──塩田は俺のだよね?
止めてもいいんだよね?
「は?」
と電車の言葉に、塩田は驚いた顔をする。
「俺がなんで、あんなアホとデートせにゃならん」
「おい、指を差すな塩田」
と皇は笑って。
「だって……今……」
電車が唇を噛みしめ言葉を濁すと、彼は不思議そうな表情を浮かべ、
「俺はお前と……なんで泣きそうなんだ」
「俺と?」
──今、俺とって言った?
俺とデートしてくれるの? 塩田が?
まて、夢か?
「塩田、デートしてくれんの?!」
とく言い気味に問いかければ、
「恋人はデートするものなんだろ?」
と、彼は雑誌のページを指差して。
「そ、そうだけど……」
「したくないのか?」
と、少ししょんぼりする彼が可愛い。
きっと一所懸命、恋愛について学ぼうとしてくれているのだろう。
「したいに決まってるじゃん!」
そんな彼を笑顔にしたくて、そう言うと何故かムッとされる。
「じゃあ、なんで誘わないんだ?」
と。
──可愛いなぁ、塩田。
「誘ったら、断られると思って」
と電車が素直に理由を述べれば、彼はこちらを睨み付けてくる。
「誘ってもないのに、わかるわけないだろ。俺はてっきり……」
「ごめん、塩田」
電車は嬉しくなって彼を抱き寄せた。しかし今は業務中である。
イチャイチャし出した二人に皇が舌打ちをし、唯野がやれやれと肩をすくめ、キッチンに向かった板井は足の小指をぶつけ悶絶していたのだった。
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