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────1話*俺のものになってよ
15・お前を本気で俺様のモノに
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****♡side・副社長(皇)
「何見てるんだ?」
イチャイチャしている二人を引きはがし、電車に無理やり仕事を押し付けると、皇はなにやら雑誌を見ている塩田に問う。
「あんたには関係ない」
と彼はこちらを見向きもせず、真剣に読みふけっているようだ。
皇は彼を夢中にさせているモノが気になり、背後に回ると手元を覗き込む。
──は?
塩田がこんなモノを?
驚くのも無理はない。彼が読んでいるのは、恋愛ノウハウ。
「お前……。そんなにアイツが好きなのか?」
思わずついて出る言葉。恋愛なんて無縁だったはずの彼は、電車との恋愛の為にそんなものに真剣になっている。
「悪いか?」
皇の質問に、ムッとする塩田。そんな彼に興味が湧いた。
今までなら自分が一番で、自分に興味を示さない者に苛立ちを感じることもあった。だがあくまでもそれは、自分が中心でないと気が済まないから。
残念なことに、相手に興味があって振り向かせたいわけではない。単に服従させたいだけであった。
しかし塩田に対しては、違う感情が芽生え始めている。
「うまくいってるんだろ? なら、そんなもの必要ないだろう」
皇は彼の隣に腰かけるとじっと彼を見つめ、そう進言した。すると彼は不服そうな表情をする。どうやら二人の関係に何か不満があるようだ。
「なんだ、そんな顔をして」
皇が塩田にそう問うと、彼は雑誌の一角を差して、
「恋人っていうのはデートとかするものじゃないのか?」
と言う。
彼の口から”デート”という言葉が出ることに驚く。
「したことないのか?」
「ない」
「する約束は?」
「いや」
軽く首を横に振ると、彼は再び雑誌に視線を落とす。男女だったり同性のペアが、街中を楽しそうに歩く挿絵をじっと見つめているようだ。まるでそれを羨ましいとでも言いたげな彼に、皇は”可愛いな”と感じる。
──アイツなら誘いそうなものだが、遠慮でもしてるのか?
「したいなら自分から誘えばいいだろう?」
”それとも”
「俺様と出かけてみるか?」
と皇は続けた。
すると塩田は、あからさまに嫌な顔をする。
「何故あんたと出かける必要があるんだ」
と。
「デートが何か、俺様が教えてやるよ」
「断る」
即答する彼の髪に指先を絡め弄ぶ。思わずクククと声が漏れた。誰かに夢中になるなんて思いもよらなかった彼に、夢中になり始めている自分がいる。そのことが、どうにもおかしかった。
その上、本気で彼を手に入れたいと思い始めている。
──俺様はどうかしている。
自分以外のすべての人間は、俺様の生涯を彩るわき役だと思っていたのに。
(それもどうかしている)
──誰にも見向きしなかった塩田が、恋人の為に恋愛について知ろうとしている。それは俺様にこそに向けられるべきだ。
(どんな独裁者だ)
──特別な人間が特別なものを与えられるべきなんだ。
それは俺様にこそふさわしい。
(だいぶクレイジーである)
──なあ、そうだろう? 塩田。
(塩田はうんとは言わないはずである)
「何見てるんだ?」
イチャイチャしている二人を引きはがし、電車に無理やり仕事を押し付けると、皇はなにやら雑誌を見ている塩田に問う。
「あんたには関係ない」
と彼はこちらを見向きもせず、真剣に読みふけっているようだ。
皇は彼を夢中にさせているモノが気になり、背後に回ると手元を覗き込む。
──は?
塩田がこんなモノを?
驚くのも無理はない。彼が読んでいるのは、恋愛ノウハウ。
「お前……。そんなにアイツが好きなのか?」
思わずついて出る言葉。恋愛なんて無縁だったはずの彼は、電車との恋愛の為にそんなものに真剣になっている。
「悪いか?」
皇の質問に、ムッとする塩田。そんな彼に興味が湧いた。
今までなら自分が一番で、自分に興味を示さない者に苛立ちを感じることもあった。だがあくまでもそれは、自分が中心でないと気が済まないから。
残念なことに、相手に興味があって振り向かせたいわけではない。単に服従させたいだけであった。
しかし塩田に対しては、違う感情が芽生え始めている。
「うまくいってるんだろ? なら、そんなもの必要ないだろう」
皇は彼の隣に腰かけるとじっと彼を見つめ、そう進言した。すると彼は不服そうな表情をする。どうやら二人の関係に何か不満があるようだ。
「なんだ、そんな顔をして」
皇が塩田にそう問うと、彼は雑誌の一角を差して、
「恋人っていうのはデートとかするものじゃないのか?」
と言う。
彼の口から”デート”という言葉が出ることに驚く。
「したことないのか?」
「ない」
「する約束は?」
「いや」
軽く首を横に振ると、彼は再び雑誌に視線を落とす。男女だったり同性のペアが、街中を楽しそうに歩く挿絵をじっと見つめているようだ。まるでそれを羨ましいとでも言いたげな彼に、皇は”可愛いな”と感じる。
──アイツなら誘いそうなものだが、遠慮でもしてるのか?
「したいなら自分から誘えばいいだろう?」
”それとも”
「俺様と出かけてみるか?」
と皇は続けた。
すると塩田は、あからさまに嫌な顔をする。
「何故あんたと出かける必要があるんだ」
と。
「デートが何か、俺様が教えてやるよ」
「断る」
即答する彼の髪に指先を絡め弄ぶ。思わずクククと声が漏れた。誰かに夢中になるなんて思いもよらなかった彼に、夢中になり始めている自分がいる。そのことが、どうにもおかしかった。
その上、本気で彼を手に入れたいと思い始めている。
──俺様はどうかしている。
自分以外のすべての人間は、俺様の生涯を彩るわき役だと思っていたのに。
(それもどうかしている)
──誰にも見向きしなかった塩田が、恋人の為に恋愛について知ろうとしている。それは俺様にこそに向けられるべきだ。
(どんな独裁者だ)
──特別な人間が特別なものを与えられるべきなんだ。
それは俺様にこそふさわしい。
(だいぶクレイジーである)
──なあ、そうだろう? 塩田。
(塩田はうんとは言わないはずである)
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