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6話 この男、慎重につき

2・予習は大切、フルボッジウム

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 あのクレイジーな映画を観るならば、予告くらいは観ておくべきだと先に風呂から出た蓮はバッグからタブレットを取り出すと、例の映画情報へアクセス。
 前回見た時もかなりクレイジーだとは思ったが、今回は予告動画が見れるようになっている。見なくても分かるが、かなりやばい。
「これは!」

 大見出しには『あなたもわたしもフルボッジウム!』と書かれていた。
 つまり、完勃かんだちという意味合いの様だ。

──俺はついているが、悠はどうだろう?
(そういう問題ではない)
 
 チラリとノートパソコンからスマホに視線を移すとライトがチカチカしている。メッセージを受信したようだ。
 誰だろう? とメッセージを覗き込んでみると社長からであった。
「パイ社から?」
 社長のアイコンは可愛いちびキャラ。いつの間に設定されたのかグループが出来ていた。メンバーは、悠と三多と蒼姫。蓮に、何故か社長が含まれている。グループ名は『映画仲間』、悠が作ったようだ。

──いつの間にこんなものを作ったんだ?
 そして、入った記憶がないのは何故?

 恐らく悠が勝手にグループに突っ込んだのだと思われるが、ここ最近スマホを渡した記憶は……。
「あった! 饅頭の時か」
 蓮は顎に手をやると眉を寄せ複雑な表情をしたが、
「まあ、いいか」
と前向きに考えることにした。
 そして再びグループチャットに目を向ける。

『なんなの! 君たちだけ交流深めてズルいじゃない! きいいいい』
と社長のメッセージが書き込まれていた。
「全然良くない!」
 しかもその下には三人のメッセージが増えている。

『社長も一緒に行きましょう、【麻薬密売犯は二度隠す】三多くんと蒼姫くんも行くことに決まっているので』
と悠。
 きっと風呂場で送信したのだろう。
『え? 俺まだ行くとは』
と蒼姫。
『今度はミステリー? アクション?』
と三多。
 彼はなかなか乗り気だ。
『コメディよ!』

 悠のメッセージで一旦会話は途切れている。
「まずいな、既読をつけてしまった」
 蓮はこの謎の集まりに頭を抱えた。また変な仲間が増えてしまったからだ。
 
──下ネタコメディばかり観に行く映画仲間って一体……。

 これ以上どうにもならないので、再び視線をノートパソコンへ戻す。
 とりあえずこのトチ狂った映画の予告版を観ておくべきだろう。再生をクリックすると音声が聞こえ始めた。
 軽快な音楽と共に男性たちのなんと表現すれば良いのか分からない悲鳴が聞こえる。それは歓喜の悲鳴なのか、なんなのか。
 画面は空港。どうやらモミモミしているところは映せないらしく、悲鳴を上げている男たちのアイコンが現れる仕様となっている。
 左下にはモミモミ数一位の警官のアイコンと名前、モミモミ数が表示され右下にはモミモミ総数がカウント表示されていた。

「これは! カオス」
 悠がとても好きそうだなと思いつつ、蓮は苦笑しながら動画鑑賞を続けたのだった。
 背後に悠が立っているとも気づかずに。
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