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5話 その男、繊細につき
6・蓮の好みの女性
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「わあ、綺麗だね」
展望レストランへ行ってみると、個室を用意できるという。その言葉に甘えて個室をチョイスするとガラス張りの向こうは、まるで宝石箱をひっくり返したように煌めいている。
「そうだね」
と蓮。
彼は眩しそうに悠を見つめていた。
出された料理はどれも、ため息が出るほど美味しい。
「ねえ、蓮」
「んー?」
「彼女とはどんなところに遊びに行ったの?」
悠の質問に蓮はむせた。
「なに、さっきから……」
蓮が元彼女のことで傷ついていたことは知っている。
しかしわだかまりは解消されたのではないだろうか?
宣戦布告された以上、敵のことは知っておくに限る。
「ほらあ、元カノさん。蓮のこと諦めてないでしょ? いろいろ知っておいた方がいいかなと思って」
蓮は困った顔をしつつも、
「デートと言えるようなデートはあまりしたことがないかな」
と切り出す。
それは一体どういう意味なのだろうか?
──まさか、一日ホテルに籠もりきりとか?!
そんな性欲まみれの関係なんて許さないわよ!
ぎりぎりと拳を握り締める悠に、ぎょっとする蓮。
「接待のお供というか……パーティへの同伴が多かったかな」
そういう意味ね、とひとまず拳をしまう悠。
「社長令嬢とは言え、事業に携わっている人だから」
「へえ。彼女、一人っ子?」
「いや。お兄さんがいるらしいんだけれど、偉い浪費家で。経営には向いてないから、彼女が会社を継ぐらしい」
気が強く素直とは言い難い、蓮の元彼女。
兄の影響もあり自分がしっかりしないといけないと思ったのかも知れない。
彼女に同情してしまいそうになったが、それとこれは別。だからと言って蓮は渡せない。
「蓮って、どんな女性に惹かれやすいの?」
「今日はいろいろ踏みこんでくるね」
悠が今まで聞かなかったのは興味が無いからではない。単に、そっとしておくべきだと思ったから。
「だって、大好きな人のことはなんでも知りたいでしょ?」
「大好きな人……」
蓮のはにかんだ笑顔。
こんなところが純情だなと思ってしまう。
「そうだなあ。凛とした女性が好きかな。背筋を伸ばして自分を生きている人」
恐らくそれは悠のことを形容しているのだろう。
だが、ある意味元彼女もそういう人よねえと悠は思う。
今、蓮の瞳の中に自分しかいなくても。
きっと彼女をキラキラした目で見ていた時は存在する。
それは憧れで、愛ではなかったかもしれない。
そう思うと、ちょっぴり妬けてしまうのだ。
だが、それはどうしようもない。
過去なのだから。
そして、よそ見をしない彼だからこそ、悠はこれからも手を抜かずに頑張ろうと思うのだった。
展望レストランへ行ってみると、個室を用意できるという。その言葉に甘えて個室をチョイスするとガラス張りの向こうは、まるで宝石箱をひっくり返したように煌めいている。
「そうだね」
と蓮。
彼は眩しそうに悠を見つめていた。
出された料理はどれも、ため息が出るほど美味しい。
「ねえ、蓮」
「んー?」
「彼女とはどんなところに遊びに行ったの?」
悠の質問に蓮はむせた。
「なに、さっきから……」
蓮が元彼女のことで傷ついていたことは知っている。
しかしわだかまりは解消されたのではないだろうか?
宣戦布告された以上、敵のことは知っておくに限る。
「ほらあ、元カノさん。蓮のこと諦めてないでしょ? いろいろ知っておいた方がいいかなと思って」
蓮は困った顔をしつつも、
「デートと言えるようなデートはあまりしたことがないかな」
と切り出す。
それは一体どういう意味なのだろうか?
──まさか、一日ホテルに籠もりきりとか?!
そんな性欲まみれの関係なんて許さないわよ!
ぎりぎりと拳を握り締める悠に、ぎょっとする蓮。
「接待のお供というか……パーティへの同伴が多かったかな」
そういう意味ね、とひとまず拳をしまう悠。
「社長令嬢とは言え、事業に携わっている人だから」
「へえ。彼女、一人っ子?」
「いや。お兄さんがいるらしいんだけれど、偉い浪費家で。経営には向いてないから、彼女が会社を継ぐらしい」
気が強く素直とは言い難い、蓮の元彼女。
兄の影響もあり自分がしっかりしないといけないと思ったのかも知れない。
彼女に同情してしまいそうになったが、それとこれは別。だからと言って蓮は渡せない。
「蓮って、どんな女性に惹かれやすいの?」
「今日はいろいろ踏みこんでくるね」
悠が今まで聞かなかったのは興味が無いからではない。単に、そっとしておくべきだと思ったから。
「だって、大好きな人のことはなんでも知りたいでしょ?」
「大好きな人……」
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こんなところが純情だなと思ってしまう。
「そうだなあ。凛とした女性が好きかな。背筋を伸ばして自分を生きている人」
恐らくそれは悠のことを形容しているのだろう。
だが、ある意味元彼女もそういう人よねえと悠は思う。
今、蓮の瞳の中に自分しかいなくても。
きっと彼女をキラキラした目で見ていた時は存在する。
それは憧れで、愛ではなかったかもしれない。
そう思うと、ちょっぴり妬けてしまうのだ。
だが、それはどうしようもない。
過去なのだから。
そして、よそ見をしない彼だからこそ、悠はこれからも手を抜かずに頑張ろうと思うのだった。
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