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5話 その男、繊細につき

3・素敵すぎて悶絶

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「あら、蓮。よく会いますわね。ご機嫌いかが? 地味な彼女さん」

 数十分前。
「夕飯、外で食べて行こうよ」
 終業後、いつものように蓮と手を繋ぎながら駐車場へ向かう悠。
「外食がいいの?」
 蓮は料理上手。夕飯は大抵、彼が作ってくれる。
「デートがしたいのっ」
「じゃあ、悠にお任せで」
 優しい彼がニコッと笑う。やはり社内での彼とプライベートでは別物だなと思った。

 いつものように助手席に乗り込みシートベルトすると、少し座席を倒した蓮。
 悠は運転席側から乗り込むと、彼に覆いかぶさり目を閉じる彼に口づけした。
「ちょ、え?」
 想定外の彼は慌てる。
「キス、したいなあって思って」
と言えば、彼の手が悠の頭の後ろに伸び、引き寄せられた。
「んんッ……」
 さっきよりも長い口づけ。
「満足した? 俺のお姫様」
「んー。もっとしたくなっちゃった」
 ”ここ、会社の敷地内だからさあ”と言われ、彼の手が背中に伝うのを感じる。
 なにかあったわけでもなく、突然イチャイチャしたくなるのが恋人同士というものだ。

「お泊りセット積んでたよね?」
 悠は体勢を直すとカーナビで周辺地図を確認しながら。
「ん、あると思う」
 カーナビを操作していた悠の手を取り、その手の甲にちゅっと口づける蓮。
「俺は良いけど、そっちは大丈夫なの?」
「ん、ある」
 それは着替えのことだ。
「じゃあ、泊まろっか」
と言う彼に同意するように悠はシートベルトを確認し、アクセルを踏み込んだ。

 愛の営みと言えばラブホが定番だが、二人はそのような場所を活用しない。厭らしい話だが商社マンの強みと言えば、その収入。
 クラシカルな外観の良いところを予約したまでは良かったが。

──また会っちゃった。
 ここの最上階のレストラン、商談とかでも使われるしねえ。
 お洒落だもの。

 蓮の元カノにロビーで出くわし、蓮が固まった。
 よっぽど苦手なのだろう。
 相変わらず嫌味な女は商談相手なのだろうか、前回とは別な外国人と同伴だった。蓮の話しでは社長令嬢。それなりのポストに違いない。
 
 彼女は連れを先に行かせると、蓮のネクタイの上からつつつっと指先で撫でる。ゴージャスで妖艶な彼女。
 彼女に比べたら確かに自分は地味かも知れないが、普通だ! と思いながら、その腕を掴もうとした。気安く蓮に触らないでもらいたい。
 だが、蓮は悠のその手を制す。

「嫌味しか言えないの?」
 悲し気に彼女を見つめるその瞳。哀れだとでも思っているのだろうか。
「あら、事実でしてよ?」
と彼女。
「そう。でも俺にとって悠は”世界一素敵な人だから”」
と蓮。
「うっ」
 悠は彼の言葉に悶絶し、うずくまった。

──やばい、鼻血でそう。
 蓮、素敵すぎる。

 悠の様子を見てぎょっとする彼女。
「え? ちょ……大丈夫? 悠」
 具合が悪いのかと、慌てる蓮。
 なんだか申し訳ない状況になってしまったのだった。
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