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3話 その男、彼女溺愛につき
7・はい、おまんじゅう
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月曜日。
蓮との情事のことを思い出しながら、ふと彼の方に視線を向けると社長が走っていくところだった。
広すぎるワンフロアと言うのは、部署が各階にわかれているより大変なのではないかと思いつつ頬杖をつく。
土日は有意義な時間を持てたと思う。
──デート楽しかったなあ。
土曜日は映画館へ。
あまり人のいない穴場で、ロマンチックでクレイジーな洋画鑑賞。
いつもは映画館で飲食はしないのだが、変にアメリカに憧れている二人は初めてポップコーンを購入してみた。
もぎりのお兄さんが棚の下からデデーンとポップコーンを出すのを見て、二人して大笑い。
『どっから出るの?』
と彼がいつまでも笑っていたのが印象的だ。
その後は、呑めもしないのにお洒落なbarに連れて行って貰った。
──素敵なところだった。
呑まない悠には無縁な場所。
悠はノンアルコールカクテルを頂いた。
煌めくグラスに輝く液体。
うっとりしていると、
『そんなに気に入ったなら、また来ようね』
と彼は優しい笑みを浮かべる。
やっぱり優しくて暖かくて蓮のことが大好きだなと思う。
日曜日は家でオンラインゲームをしていた。
予想はしていたけれど、滅茶苦茶上手かったが……。
『なんなの? その恰好』
そのオンラインゲームは装備とは別に見た目を好きに変えることが出来た。
『可愛いでしょ?』
普段の彼はとてもお洒落。
だがゲーム内のキャラの破壊的なセンスに腹筋が崩壊しそうになる。
『なんでスーツに兎耳スリッパなの?』
『何か変?』
その後、悠が某オンラインショップで兎耳スリッパを購入したことは言うまでもない。今夜配送されるらしい。
──蓮、喜んでくれるかな?
社内は土足厳禁なので、もしかしたら会社で使うかもしれないと思うと、今から笑いがこみ上げる。
だが、彼はちょっぴり元気がなかった。
先日の元カノのことが尾を引いているのだろうか。
「池内くーーーーん!」
やっと蓮の近くまできた社長が彼の名を呼ぶ。
いつも通り、社員たちが二人に注目した。
「おはようございます、パイ社《シャ》。何か御用でしょうか?」
蓮は書類を片手に社長を見上げる。
「パイシャ?!」
「パイパン社長」
彼はチラッと社長の頭皮に目をやって。
「スキンヘッドをパイパンって呼ぶの止めてよ」
社長は地団駄を踏んだ。
「スキ社の方が良かったですか? パイシャの方が可愛いですよ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
”それは置いておいて”と社長。
「どうしたの今日は。調子悪いの? 何か悩んでるの? 今日は一人分しかやってないじゃないの」
「なんですか。いつもはちっともヤらしてくれないのに。また、パワハラですか?」
「!!!!」
社員が蓮の言葉にどよめく。
まるで社長がもったいぶっている女子のようである。
「もう! そんなことばかり言って。手出して」
何だろうと蓮が社長に向けて手を出す。
「お手じゃないんだから! 手のひらを向けなさいよ」
「注文が多いですね。俺は忙しいんですよ?」
「はい、おまんじゅう。これあげるから元気出して」
蓮は社長から薄皮まんじゅうを手渡された。
しかしこのことが物議を醸しだすことになると社長は気づいていなかったのだった。
蓮との情事のことを思い出しながら、ふと彼の方に視線を向けると社長が走っていくところだった。
広すぎるワンフロアと言うのは、部署が各階にわかれているより大変なのではないかと思いつつ頬杖をつく。
土日は有意義な時間を持てたと思う。
──デート楽しかったなあ。
土曜日は映画館へ。
あまり人のいない穴場で、ロマンチックでクレイジーな洋画鑑賞。
いつもは映画館で飲食はしないのだが、変にアメリカに憧れている二人は初めてポップコーンを購入してみた。
もぎりのお兄さんが棚の下からデデーンとポップコーンを出すのを見て、二人して大笑い。
『どっから出るの?』
と彼がいつまでも笑っていたのが印象的だ。
その後は、呑めもしないのにお洒落なbarに連れて行って貰った。
──素敵なところだった。
呑まない悠には無縁な場所。
悠はノンアルコールカクテルを頂いた。
煌めくグラスに輝く液体。
うっとりしていると、
『そんなに気に入ったなら、また来ようね』
と彼は優しい笑みを浮かべる。
やっぱり優しくて暖かくて蓮のことが大好きだなと思う。
日曜日は家でオンラインゲームをしていた。
予想はしていたけれど、滅茶苦茶上手かったが……。
『なんなの? その恰好』
そのオンラインゲームは装備とは別に見た目を好きに変えることが出来た。
『可愛いでしょ?』
普段の彼はとてもお洒落。
だがゲーム内のキャラの破壊的なセンスに腹筋が崩壊しそうになる。
『なんでスーツに兎耳スリッパなの?』
『何か変?』
その後、悠が某オンラインショップで兎耳スリッパを購入したことは言うまでもない。今夜配送されるらしい。
──蓮、喜んでくれるかな?
社内は土足厳禁なので、もしかしたら会社で使うかもしれないと思うと、今から笑いがこみ上げる。
だが、彼はちょっぴり元気がなかった。
先日の元カノのことが尾を引いているのだろうか。
「池内くーーーーん!」
やっと蓮の近くまできた社長が彼の名を呼ぶ。
いつも通り、社員たちが二人に注目した。
「おはようございます、パイ社《シャ》。何か御用でしょうか?」
蓮は書類を片手に社長を見上げる。
「パイシャ?!」
「パイパン社長」
彼はチラッと社長の頭皮に目をやって。
「スキンヘッドをパイパンって呼ぶの止めてよ」
社長は地団駄を踏んだ。
「スキ社の方が良かったですか? パイシャの方が可愛いですよ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
”それは置いておいて”と社長。
「どうしたの今日は。調子悪いの? 何か悩んでるの? 今日は一人分しかやってないじゃないの」
「なんですか。いつもはちっともヤらしてくれないのに。また、パワハラですか?」
「!!!!」
社員が蓮の言葉にどよめく。
まるで社長がもったいぶっている女子のようである。
「もう! そんなことばかり言って。手出して」
何だろうと蓮が社長に向けて手を出す。
「お手じゃないんだから! 手のひらを向けなさいよ」
「注文が多いですね。俺は忙しいんですよ?」
「はい、おまんじゅう。これあげるから元気出して」
蓮は社長から薄皮まんじゅうを手渡された。
しかしこのことが物議を醸しだすことになると社長は気づいていなかったのだった。
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