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2話 この男、初恋につき
5・遠慮がちなので
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「痛っ」
悠にペチっと額を平手で弾かれて、思わず額に手をやる蓮。
「蓮のバカ」
「なんだよ……」
涙目で悠を見つめ返すと、彼女はムッとしている。
「わたしの話しちゃんと聞いてた?」
悠が何故、怒っているのか……
「参加したくて参加したって言ってない。不可抗力だったの。断り切れなかったわたしにも責任はあるとは思うけれど、そんな風に言うのは酷いわ」
”止めてくれて、嬉しかったんだから”と再びぎゅっと蓮の背中に腕を回す悠。蓮はおずおずと抱きしめ返す。
「ヤキモチ妬いたの?」
と彼女に問われ、
「うん」
と素直に肯定する。
すると悠は更に背中に回した腕に力を入れ、
「蓮、三多くんと仲いいよね」
と切り出す。
「うん。同期だし……」
蓮は何を言われるのだろうと、身構えてしまう。
「三多くんは良い人だと思う。でも蓮とは性格も違うし、考え方も違う。彼に悪気がなくても、蓮はそのことで傷つくこともある」
悠が何を言わんとしているのか分からず、黙って話を聞いていた。
「だから、三多くんの言いなりになっちゃダメなの」
”心配なんだよ”と言う悠に何といえば良いのか分からず、唇を噛みしめる。
「蓮は人付き合いとかそういうの、優先するのわかる。大事なのもわかるけど……嫌なら嫌って言わなきゃ伝わらないんだよ?」
三多は同期の中でも一番つきあいやすかった。
それは彼が人当たりが良くて、分け隔てなく接する人だからだと思う。
他にも仲のいい人がたくさんいる中で、何故かいつも蓮と一緒にいることを選んだ三多。
それについては蓮も以前から疑問を持っていて、
『営業って結局、どんなに仲が良くてもライバルだからさ』
と彼は笑った。
『池内って誰ともつるまないだろ? 噂話とかもしないし』
蓮がつるまないのは、群れるのが苦手だからだ。
嫌なことを嫌と言えない。
空気を大事にしたい。
しんみりしたのも苦手。
元カノと別れてからは変人扱いされていたので、一人でいる方が楽だったというのもある。その中で三多だけが変わらなかったから。
「我慢する関係は、仲が良いって言わないの。蓮がいくら三多くんを友達だと思ってても、それは友達って言わない。わたしとも同じなんだよ」
だからちゃんと言ってと悠は言う。
「怖いよ」
「何が?」
と悠。
「だって、また別れようとか言われたら……俺」
口ごもる蓮に、悠の様子が変わる。
「それは……付き合ってるとか言っているだけで、半年経ってもデートにすら誘ってくれないからでしょ!」
「いや……だって……」
どうやら藪蛇だったようだ。
「形だけの恋人って何?! わたしは……」
クスンと悠が泣きまねをするので、蓮は慌てる。
「結構楽しみにしてたのに……」
「いや、あのですね。その件に関しては」
蓮の背中を嫌な汗が駆け抜けたのだった。
悠にペチっと額を平手で弾かれて、思わず額に手をやる蓮。
「蓮のバカ」
「なんだよ……」
涙目で悠を見つめ返すと、彼女はムッとしている。
「わたしの話しちゃんと聞いてた?」
悠が何故、怒っているのか……
「参加したくて参加したって言ってない。不可抗力だったの。断り切れなかったわたしにも責任はあるとは思うけれど、そんな風に言うのは酷いわ」
”止めてくれて、嬉しかったんだから”と再びぎゅっと蓮の背中に腕を回す悠。蓮はおずおずと抱きしめ返す。
「ヤキモチ妬いたの?」
と彼女に問われ、
「うん」
と素直に肯定する。
すると悠は更に背中に回した腕に力を入れ、
「蓮、三多くんと仲いいよね」
と切り出す。
「うん。同期だし……」
蓮は何を言われるのだろうと、身構えてしまう。
「三多くんは良い人だと思う。でも蓮とは性格も違うし、考え方も違う。彼に悪気がなくても、蓮はそのことで傷つくこともある」
悠が何を言わんとしているのか分からず、黙って話を聞いていた。
「だから、三多くんの言いなりになっちゃダメなの」
”心配なんだよ”と言う悠に何といえば良いのか分からず、唇を噛みしめる。
「蓮は人付き合いとかそういうの、優先するのわかる。大事なのもわかるけど……嫌なら嫌って言わなきゃ伝わらないんだよ?」
三多は同期の中でも一番つきあいやすかった。
それは彼が人当たりが良くて、分け隔てなく接する人だからだと思う。
他にも仲のいい人がたくさんいる中で、何故かいつも蓮と一緒にいることを選んだ三多。
それについては蓮も以前から疑問を持っていて、
『営業って結局、どんなに仲が良くてもライバルだからさ』
と彼は笑った。
『池内って誰ともつるまないだろ? 噂話とかもしないし』
蓮がつるまないのは、群れるのが苦手だからだ。
嫌なことを嫌と言えない。
空気を大事にしたい。
しんみりしたのも苦手。
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だからちゃんと言ってと悠は言う。
「怖いよ」
「何が?」
と悠。
「だって、また別れようとか言われたら……俺」
口ごもる蓮に、悠の様子が変わる。
「それは……付き合ってるとか言っているだけで、半年経ってもデートにすら誘ってくれないからでしょ!」
「いや……だって……」
どうやら藪蛇だったようだ。
「形だけの恋人って何?! わたしは……」
クスンと悠が泣きまねをするので、蓮は慌てる。
「結構楽しみにしてたのに……」
「いや、あのですね。その件に関しては」
蓮の背中を嫌な汗が駆け抜けたのだった。
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