上 下
11 / 47
2話 この男、初恋につき

1・蓮の元彼女

しおりを挟む
 池内蓮は、恋人の相模悠から離れた席で、スマホの画面を見つめていた。
 飲み会は憂鬱だ。悠の傍に居られないから。
 
 元彼女と別れたのは悠が入社する二か月ほど前。
 出会いはこのような酒の席だった。

──まあ、フラれたんだけどね。

 社会人になるまで、非常に地味だったし同じ学科に女性があまりいなかったため、出逢いもない。社会人になって、スーツは男を五割り増しいい男に見せることを知った。
 入社一年目は普通に仕事をしていたため、声をかけられることもあったが何せ、恋愛初心者。社内で面倒は起こしたくないと慎重だった。
 そんな折、取引先数社で合同パーティが開かれたのである。

 彼女は社長令嬢だった。
 当時の蓮はそのことを知らず、食事に誘われOKをしたのだ。何ごとも社会勉強。その程度の軽い気持ちで行ったのが人生初デート。
 年上の彼女は話術にも長けていて、一緒にいるだけで楽しかった。
 蓮は彼女から色んなことを教わったのである。そこにはもちろん夜の相手も含まれた。

──楽しいと思っていたのは、俺だけだった。
 それが事実。

『あなたって、ツマラナイ男ね』
 そう言われ、二人の関係は幕を閉じる。
 何がいけなかったのか、わからないまま。
 自分は彼女にとって、アクセサリーにもなれなかった。
 プライドどころか、自信喪失してしまったのだ。

 それ以来、女性に苦手意識が芽生えてしまった蓮だったが、彼は決定的なことを理解していなかったのである。
 恋愛にはまず『好きという気持ちが必要』だということを。

 初めての彼女にフラれた蓮は正直、何もやる気が起きなくなっていた。
「ちょっと! 池内くんどうしたの?!」
「なんです? 社長」
 真面目で見目が良く仕事のできる蓮は、入社当時から社長からとても気に入られており、なにかと気にかけて貰っていた。
 だが、あんなに心配されたのは初めてだろう。
「具合い悪いの? 何か悩みでもあるの? 池内くん、今日は一人分しか仕事してないじゃない」
 その頃から蓮は、勝手に人の仕事までやるような社員であった。
 好きなようにやらせてもらえていたと思う。

「そんな、何人分もやれなんて。パワハラですか?」
 社長にあたっても仕方ない。現状が変わらないのは分かっている。
 これはただの甘えだ。
「!!!!」
「ちゃんと自分の分は終わっているので、良いじゃないですか」
 連は頬杖をつき、ため息をつく。
 すると、
「ちょっとー! みんな本気出して! 今日は池内くん手伝ってくれないからね!」
 社長の矛先は別なところへ向かったのだった。
 あれ以来、社長とはおかしなやり取りが定番となったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...