10 / 47
1話 その男、crazyにつき
7・微妙な心の距離
しおりを挟む
「ね。気を取り直して、会場いこっか」
蓮の両手を掴み見上げれば、彼は目を細め眩しそうに悠を見つめ返した。
「さてー。池内ちゃん遅すぎじゃない?」
蓮と連れだって合コンこと飲み会の会場に入ると、彼は早速営業部の者たちに拉致される。肩をがしっと掴まれ、別の会社の女子たちがいる席へ。
「相模さんとイチャイチャしてて遅くなったとかなら、おこですよ?」
「気のせいじゃない?」
と蓮。
悠は蓮を見送って、自社の女子たちが集まっている席へ向かった。
「あら、相模さん。池内くんは?」
貸し切りと言うことだけあって、ざっと数えて三十人以上集まっているようだ。蓮の所属する営業事務の女子の座っている席に混ざると、早速蓮の所在について問われ、彼のいる方を指でつつく。
「連れていかれちゃった」
我が社はワンフロア式な為、二人がつきあっていることを知らない人はいない。蓮とつき合い始めてから色んな課の人から話かけられるようになり、仲の良い人も増えた。
「心配じゃないの?」
と隣の女子に問われる。
「蓮、モテないし」
店員に飲み物を頼むと、頬杖をついて悠はそう答えた。
「池内くんは……モテないというより、好意をスルーするのよねえ」
蓮の所在を訪ねた向かい側の席の女子が、肩を竦め彼の方をチラリと見ながら。
「相模さん、よく恋人関係になれたわよねえ。羨ましー。池内くん狙ってた人、たくさんいたのに」
と、隣の女子。
「それはわたしもちょっと……なんか冗談みたいな展開で、気絶している間に恋人関係になってたのよね」
一回別れたけど、という言葉を飲み込んで。
ため息をついていると、店員が悠の飲み物を前に置いていく。
その時、蓮のいる方から黄色い悲鳴が聞こえた。
──大変おモテになっているようで。
「心配なら行ってくればいいのに」
と隣の女子。
「うんー」
蓮はどうやら他社の女の子たちと名刺交換をしているようである。
「傍にいたら、楽しめないかもしれないし」
「うわー。彼女の余裕?」
「そんなんじゃありません」
向かい側の女子と、隣の女子が気を使って悠をそっとしておいてくれた。
悠は一人、物思いにふける。蓮がこちらを気にしていることも気づかずに。
蓮が心から気を許せる相手が自分だけだとして。
それでも言ってくれないことの方が多いのだ。
どうしてなのか、悠には分かっている。
──やっぱり原因はあれだよねえ。
「ん……?」
テーブルの上に置かれたスマホにいつの間にか新着メッセージ。
「ふふ……」
「相模さん、どうしたの?」
一人で画面を見て笑っている悠に気づいた向かい側の女子が不思議そうに問う。
「ううん」
そこにはたった一つの絵文字。
悠は顔を上げ蓮の方を見たのだった。
蓮の両手を掴み見上げれば、彼は目を細め眩しそうに悠を見つめ返した。
「さてー。池内ちゃん遅すぎじゃない?」
蓮と連れだって合コンこと飲み会の会場に入ると、彼は早速営業部の者たちに拉致される。肩をがしっと掴まれ、別の会社の女子たちがいる席へ。
「相模さんとイチャイチャしてて遅くなったとかなら、おこですよ?」
「気のせいじゃない?」
と蓮。
悠は蓮を見送って、自社の女子たちが集まっている席へ向かった。
「あら、相模さん。池内くんは?」
貸し切りと言うことだけあって、ざっと数えて三十人以上集まっているようだ。蓮の所属する営業事務の女子の座っている席に混ざると、早速蓮の所在について問われ、彼のいる方を指でつつく。
「連れていかれちゃった」
我が社はワンフロア式な為、二人がつきあっていることを知らない人はいない。蓮とつき合い始めてから色んな課の人から話かけられるようになり、仲の良い人も増えた。
「心配じゃないの?」
と隣の女子に問われる。
「蓮、モテないし」
店員に飲み物を頼むと、頬杖をついて悠はそう答えた。
「池内くんは……モテないというより、好意をスルーするのよねえ」
蓮の所在を訪ねた向かい側の席の女子が、肩を竦め彼の方をチラリと見ながら。
「相模さん、よく恋人関係になれたわよねえ。羨ましー。池内くん狙ってた人、たくさんいたのに」
と、隣の女子。
「それはわたしもちょっと……なんか冗談みたいな展開で、気絶している間に恋人関係になってたのよね」
一回別れたけど、という言葉を飲み込んで。
ため息をついていると、店員が悠の飲み物を前に置いていく。
その時、蓮のいる方から黄色い悲鳴が聞こえた。
──大変おモテになっているようで。
「心配なら行ってくればいいのに」
と隣の女子。
「うんー」
蓮はどうやら他社の女の子たちと名刺交換をしているようである。
「傍にいたら、楽しめないかもしれないし」
「うわー。彼女の余裕?」
「そんなんじゃありません」
向かい側の女子と、隣の女子が気を使って悠をそっとしておいてくれた。
悠は一人、物思いにふける。蓮がこちらを気にしていることも気づかずに。
蓮が心から気を許せる相手が自分だけだとして。
それでも言ってくれないことの方が多いのだ。
どうしてなのか、悠には分かっている。
──やっぱり原因はあれだよねえ。
「ん……?」
テーブルの上に置かれたスマホにいつの間にか新着メッセージ。
「ふふ……」
「相模さん、どうしたの?」
一人で画面を見て笑っている悠に気づいた向かい側の女子が不思議そうに問う。
「ううん」
そこにはたった一つの絵文字。
悠は顔を上げ蓮の方を見たのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
イケメン幼馴染に処女喪失お願いしたら実は私にベタ惚れでした
sae
恋愛
彼氏もいたことがない奥手で自信のない未だ処女の環奈(かんな)と、隣に住むヤリチンモテ男子の南朋(なお)の大学生幼馴染が長い間すれ違ってようやくイチャイチャ仲良しこよしになれた話。
※会話文、脳内会話多め
※R-18描写、直接的表現有りなので苦手な方はスルーしてください
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる