129 / 147
────3章【久隆と大里】
□8「優しい君と思い出」
しおりを挟む
****♡Side・咲夜
「おはよ…う…久隆?」
朝、目を覚ましたら隣に寝ていたはずの彼がいなかった。
久隆?どこ行ったの?
咲夜はベッドから降りると、寝室を出て隣の書斎へ向かうが、やはり彼は居ない。その奥のシャワールームにも居なかったものの、お湯が注がれているところであった。咲夜は泣きそうな顔をし、踵を返そうとしたが、それは叶わない。
「!」
「おはよ、咲夜」
突然、後ろから抱きしめられ、心が跳ねる。
「どうしたの、泣きそうな顔して」
顔を覗き込まれチラッと目だけ久隆に向けると、彼の指先は咲夜のシャツのボタンにかけられていた。耳元では大好きな彼の声。
「どこにいたの?」
と、恥ずかしさを隠す為、質問で返すと、それを見透かしたように首筋にキスをされた。
「テラスにいた」
「何故?」
ゆっくりと脱がされていくシャツ。彼は一緒に入ろうと誘っているのだ。咲夜はそれを拒否しなかった。目の前には、洋風で広めのバスタブと大きな窓。
「ちょっと兄さんから電話が来ていて」
時刻は五時をまわったところである。咲夜は、ずいぶん早い時間に連絡が来るのだなと思っていた。確か久隆の兄は昨日、クヌギという旅館から帰宅したと聞いている。帰宅といっても自宅マンションへであって、大崎邸にではない。
「和…いや、都筑と一緒に暮らすとかで、今朝引越しらしい」
「え、そうなの?」
旅行に行ったと思ったら、帰って来るなり引越し作業とは。ずいぶんハードだな、と思っているうちに支度が整う。今日も学校だというのに、朝からイケナイことをしようとしてるのだと思うとドキドキした。
「早く入ろう?」
と、急かされながらバスルームに足を踏み入れるのだった。
「今週の土日は何かあるの?」
身体を洗い終え、湯船に浸かりながら、彼へ問いかける。外はまだ薄暗い。大きな窓はステンドグラスで外からの覗き防止になってはいるが、ここは三階。しかも裏庭は、敷地内のテニスコートが広がっている。覗かれることはまずないであろう。と、なるとこのステンドグラスはただの洒落たデザインということになる。
「土曜日は撮影があるよ。終わったらみんなで遊びに行こうか」
と咲夜の質問に、彼は答えと提案をくれた。
「ほんと?」
「うん、何処行きたいの?」
指先で頬を撫でながら彼が問う。優しい笑みを浮かべながら。
「葵の行きたいところがいいな、いつも俺の意見ばかり優先するから」
「わかった。あとで聞いてみようね」
****
「いいの?」
と、問われ、体中を優しく撫でる久隆の手にうっとりしながら、コクコクと咲夜は頷いた。その”いいの?”は同意を求めているわけではない。気持ちいいのか聞いているのだ。自分は彼に愛されたい、ただそれだけ。
「んんッ」
「ゆっくり時間をかけたいけれど、朝ごはんの時間になっちゃうからね」
そう言って彼は咲夜の股《もも》に手をかけると、咲夜自身を口に含んだ。
「やあッ…」
いつもよりせっかちなその行動に慣れなくて、一気に体温が上がる。
「あああッ」
吸っちゃ、やあッ。
駄目だよお…。
快感が、咲夜の背中を駆け上がっていく。彼の形の整った指先が根元をしごき、舌が鈴口を這う。閉じようとする股を押さえつけカリをちゅうッと吸い上げる。
「んッ…だめえッ」
上下する指先、わざと音を立てる唇。咲夜は気持ちよさに、胸を仰け反らせた。咲夜の様子に彼がチラリと目をやる。とても満足そうに。
久隆の愛撫好きッ
きもちいの…
でも、早く繋がりたいよ
久隆の温もり感じたい
愛しいというように舐めあげるその舌が、早く奥を愛撫するのを願った。
そこはいいのッ
久隆と一緒に良くなりたいの
ねえ?気づいて
チラッと彼に視線を送る。何せ鈍感な彼のことだ、気付いてくれないかもしれない。
「どうしたの?」
案の定、心配そうな顔をされてしまった。
「くちゅくちゅして?」
小さな声で甘えてみる。その言葉に彼は一瞬驚いたようで。
「もう、欲しいの?」
と問われてしまう。恥ずかしいのを堪えて勇気を出したのにと、困った表情を浮かべながら、
「早く繋がりたいの」
と、正直な思いを告げる。
「!」
彼は何も言わず咲夜の蕾に舌を這わせながら、咲夜自身をしごき始めた。
「やああッ」
前も後ろもなんて駄目だよおッ
おかしくなっちゃう
「拡げちゃ…やあッ」
「よく解さないと入らないだろ?」
それは意地悪。わざと咲夜の羞恥心を煽っているのだ。
「んッ…はあッ」
卑猥な音が部屋を包んでゆく。咲夜はやがて全てを彼に委ねるのだった。
「あああッ」
ジェルと共に指が中に入ってくる頃には、何も考えられなくなっていた。ただ彼と繋がりたい、愛されたい。それだけが咲夜を支配してゆく。いつだって彼に理性を奪われて。最後は、彼にただ無心でしがみつく。大好きな久隆の腕の中は幸せでいっぱいで。
「くりゅ…好きッ」
「うん、愛してるよ」
そう、愛で満たされるのだ。
****
「ふぅ…んんッ」
目を閉じて彼の胸の中。今だけは全てを忘れられる。久隆と大里のこと、自分の境遇のこと、葵の置かれている立場のこと。会えない妹のこと、亡くした父のこと、久隆とのこの先。もうこれ以上なにも失うことが無いように。ぎゅっと彼にしがみつく。
「力抜いてるんだよ?」
耳元で優しい声がして、虚ろな目で見つめ返せば、ゆっくりと彼自身が奥へと侵入してくる。
「や…あああッ」
入り口が擦れ、奥へとゆっくり進んでいき、甘い痺れと快感を咲夜にもたらす。いつの間にか快感という奈落に呑まれて、目の前は真っ白になった。それは、彼のもたらす優しい世界。まるで何も考えなくていいよ、とでもいうように。
「はあッ」
いつまでたっても上手に呼吸ができない咲夜の背中を、優しくなでる温かな手の平。最後まで腰を進めた彼は、ぎゅっと咲夜を抱きしめると、その身体を抱き起こした。咲夜が対面騎乗位を好きなのを知っていたから。
「くりゅ…」
「辛い?」
頬を撫で優しく問いかけられ、首を横に振る。深く繋がるのは確かに少し辛いが、彼はいつだって自分本意な行為はしない。その理性を剥ぎ取りたいのに、なかなか適わない。
部屋にBGM代わりに静かに流している曲が、シュガーに変わる。久隆は一瞬コンポに目を向けた。その曲にどんな思い出が詰まっているのか、咲夜は知らない。わかっていることと言えば、久隆のために大里がその曲を歌うことくらいだ。不安になって彼を見つめれば、極上の笑みを浮かべられ戸惑う。
大里との思い出というわけではなさそうだけど。
聞いたら駄目なのかな?
「どうかしたの?」
「ううん」
不安をかき消すように彼の首に両腕を回し肩に顔を乗せる。久隆は俺ものと自分に言い聞かせて。
「咲夜、愛してるよ」
「あッ」
愛の言葉を合図にゆっくりと快楽に支配されてゆく。
「あああッ」
思い出も全部、俺のものにしたいと言ったら欲張りなのかな?
それとも、久隆は許してくれる?
何もかもきっと彼は許すのであろう。自分のせいで心に傷を負っても責めすらしない。ただ優しさだけで包む彼を、自分はどれくらい傷つけて苦しめてきたのだろう?
「好きッ大好きッ」
少しでも自分の愛が伝わることを願って想いを告げる。
「久隆が好きだよ」
「うん」
「愛してるのッ」
「うん、大好きだよ」
彼は何を思うのだろう彼は。意外と久隆が単純なことを咲夜は知らなかったのである。
「おはよ…う…久隆?」
朝、目を覚ましたら隣に寝ていたはずの彼がいなかった。
久隆?どこ行ったの?
咲夜はベッドから降りると、寝室を出て隣の書斎へ向かうが、やはり彼は居ない。その奥のシャワールームにも居なかったものの、お湯が注がれているところであった。咲夜は泣きそうな顔をし、踵を返そうとしたが、それは叶わない。
「!」
「おはよ、咲夜」
突然、後ろから抱きしめられ、心が跳ねる。
「どうしたの、泣きそうな顔して」
顔を覗き込まれチラッと目だけ久隆に向けると、彼の指先は咲夜のシャツのボタンにかけられていた。耳元では大好きな彼の声。
「どこにいたの?」
と、恥ずかしさを隠す為、質問で返すと、それを見透かしたように首筋にキスをされた。
「テラスにいた」
「何故?」
ゆっくりと脱がされていくシャツ。彼は一緒に入ろうと誘っているのだ。咲夜はそれを拒否しなかった。目の前には、洋風で広めのバスタブと大きな窓。
「ちょっと兄さんから電話が来ていて」
時刻は五時をまわったところである。咲夜は、ずいぶん早い時間に連絡が来るのだなと思っていた。確か久隆の兄は昨日、クヌギという旅館から帰宅したと聞いている。帰宅といっても自宅マンションへであって、大崎邸にではない。
「和…いや、都筑と一緒に暮らすとかで、今朝引越しらしい」
「え、そうなの?」
旅行に行ったと思ったら、帰って来るなり引越し作業とは。ずいぶんハードだな、と思っているうちに支度が整う。今日も学校だというのに、朝からイケナイことをしようとしてるのだと思うとドキドキした。
「早く入ろう?」
と、急かされながらバスルームに足を踏み入れるのだった。
「今週の土日は何かあるの?」
身体を洗い終え、湯船に浸かりながら、彼へ問いかける。外はまだ薄暗い。大きな窓はステンドグラスで外からの覗き防止になってはいるが、ここは三階。しかも裏庭は、敷地内のテニスコートが広がっている。覗かれることはまずないであろう。と、なるとこのステンドグラスはただの洒落たデザインということになる。
「土曜日は撮影があるよ。終わったらみんなで遊びに行こうか」
と咲夜の質問に、彼は答えと提案をくれた。
「ほんと?」
「うん、何処行きたいの?」
指先で頬を撫でながら彼が問う。優しい笑みを浮かべながら。
「葵の行きたいところがいいな、いつも俺の意見ばかり優先するから」
「わかった。あとで聞いてみようね」
****
「いいの?」
と、問われ、体中を優しく撫でる久隆の手にうっとりしながら、コクコクと咲夜は頷いた。その”いいの?”は同意を求めているわけではない。気持ちいいのか聞いているのだ。自分は彼に愛されたい、ただそれだけ。
「んんッ」
「ゆっくり時間をかけたいけれど、朝ごはんの時間になっちゃうからね」
そう言って彼は咲夜の股《もも》に手をかけると、咲夜自身を口に含んだ。
「やあッ…」
いつもよりせっかちなその行動に慣れなくて、一気に体温が上がる。
「あああッ」
吸っちゃ、やあッ。
駄目だよお…。
快感が、咲夜の背中を駆け上がっていく。彼の形の整った指先が根元をしごき、舌が鈴口を這う。閉じようとする股を押さえつけカリをちゅうッと吸い上げる。
「んッ…だめえッ」
上下する指先、わざと音を立てる唇。咲夜は気持ちよさに、胸を仰け反らせた。咲夜の様子に彼がチラリと目をやる。とても満足そうに。
久隆の愛撫好きッ
きもちいの…
でも、早く繋がりたいよ
久隆の温もり感じたい
愛しいというように舐めあげるその舌が、早く奥を愛撫するのを願った。
そこはいいのッ
久隆と一緒に良くなりたいの
ねえ?気づいて
チラッと彼に視線を送る。何せ鈍感な彼のことだ、気付いてくれないかもしれない。
「どうしたの?」
案の定、心配そうな顔をされてしまった。
「くちゅくちゅして?」
小さな声で甘えてみる。その言葉に彼は一瞬驚いたようで。
「もう、欲しいの?」
と問われてしまう。恥ずかしいのを堪えて勇気を出したのにと、困った表情を浮かべながら、
「早く繋がりたいの」
と、正直な思いを告げる。
「!」
彼は何も言わず咲夜の蕾に舌を這わせながら、咲夜自身をしごき始めた。
「やああッ」
前も後ろもなんて駄目だよおッ
おかしくなっちゃう
「拡げちゃ…やあッ」
「よく解さないと入らないだろ?」
それは意地悪。わざと咲夜の羞恥心を煽っているのだ。
「んッ…はあッ」
卑猥な音が部屋を包んでゆく。咲夜はやがて全てを彼に委ねるのだった。
「あああッ」
ジェルと共に指が中に入ってくる頃には、何も考えられなくなっていた。ただ彼と繋がりたい、愛されたい。それだけが咲夜を支配してゆく。いつだって彼に理性を奪われて。最後は、彼にただ無心でしがみつく。大好きな久隆の腕の中は幸せでいっぱいで。
「くりゅ…好きッ」
「うん、愛してるよ」
そう、愛で満たされるのだ。
****
「ふぅ…んんッ」
目を閉じて彼の胸の中。今だけは全てを忘れられる。久隆と大里のこと、自分の境遇のこと、葵の置かれている立場のこと。会えない妹のこと、亡くした父のこと、久隆とのこの先。もうこれ以上なにも失うことが無いように。ぎゅっと彼にしがみつく。
「力抜いてるんだよ?」
耳元で優しい声がして、虚ろな目で見つめ返せば、ゆっくりと彼自身が奥へと侵入してくる。
「や…あああッ」
入り口が擦れ、奥へとゆっくり進んでいき、甘い痺れと快感を咲夜にもたらす。いつの間にか快感という奈落に呑まれて、目の前は真っ白になった。それは、彼のもたらす優しい世界。まるで何も考えなくていいよ、とでもいうように。
「はあッ」
いつまでたっても上手に呼吸ができない咲夜の背中を、優しくなでる温かな手の平。最後まで腰を進めた彼は、ぎゅっと咲夜を抱きしめると、その身体を抱き起こした。咲夜が対面騎乗位を好きなのを知っていたから。
「くりゅ…」
「辛い?」
頬を撫で優しく問いかけられ、首を横に振る。深く繋がるのは確かに少し辛いが、彼はいつだって自分本意な行為はしない。その理性を剥ぎ取りたいのに、なかなか適わない。
部屋にBGM代わりに静かに流している曲が、シュガーに変わる。久隆は一瞬コンポに目を向けた。その曲にどんな思い出が詰まっているのか、咲夜は知らない。わかっていることと言えば、久隆のために大里がその曲を歌うことくらいだ。不安になって彼を見つめれば、極上の笑みを浮かべられ戸惑う。
大里との思い出というわけではなさそうだけど。
聞いたら駄目なのかな?
「どうかしたの?」
「ううん」
不安をかき消すように彼の首に両腕を回し肩に顔を乗せる。久隆は俺ものと自分に言い聞かせて。
「咲夜、愛してるよ」
「あッ」
愛の言葉を合図にゆっくりと快楽に支配されてゆく。
「あああッ」
思い出も全部、俺のものにしたいと言ったら欲張りなのかな?
それとも、久隆は許してくれる?
何もかもきっと彼は許すのであろう。自分のせいで心に傷を負っても責めすらしない。ただ優しさだけで包む彼を、自分はどれくらい傷つけて苦しめてきたのだろう?
「好きッ大好きッ」
少しでも自分の愛が伝わることを願って想いを告げる。
「久隆が好きだよ」
「うん」
「愛してるのッ」
「うん、大好きだよ」
彼は何を思うのだろう彼は。意外と久隆が単純なことを咲夜は知らなかったのである。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる