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────2章【久隆と葵】

□9「運命と相性」

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****♡Side・咲夜

「やッ..」
「ん?イヤ?」
咲夜が久隆に後ろから抱き締められうっとりしていると、浴衣のあわせから彼の手が滑り込んで来たので驚きに声をあげた。
「やじゃな..うぅんッ..」
「咲夜..」

何故そんな切ない声で呼ぶの。

彼の舌が何度も首筋を行ったり来たりしたかと思うと、ちゅうぅッと鎖骨のあたりを吸い上げ、手が咲夜の胸を這い回る。
「あああッ」
「ここ、いいんだね」
と、彼に耳元で囁かれ、身体中が熱くなっていくのを感じた。
「はぁッ..」

おかしくなっちゃうよ。
久隆の声..。
なんでこんなに身体を熱くさせるの?

ああ..いつだって、久隆を虜にしたいと願っているのに、虜になってしまうのは自分の方なのだ。たまらなくなって、
「ねえ、早く」
と強請るが、
「どうしたの?咲夜」
彼は焦らすのだ。
「早く抱いてよぉ」
咲夜は熱に浮かされ身体を反転させると、彼にすがりつくように抱きついた。

『遺伝子レベルで惹かれあう大崎一族と姫川一族』
それは、生態系的な意味で男女ならありえるけど、これは?
『運命だから』
違う。自分はただ、久隆が好きなだけ。出逢い惹かれ合うことが運命だったとしても、自分たちは自分の意志で選び取ったのだ。何かに翻弄されているわけじゃない。欲しくてたまらないのは久隆を愛しているから。

「待ちきれないの?可愛い」
と、彼は咲夜の合わせを横に開くと鎖骨に舌を這わせ始める。
「んんッ」
「可愛い。俺の咲夜」
「ああッ..んッ」
彼は浴衣の前から手を滑り込ませると咲夜の下着の両サイドに手をかけ、ゆっくりと下ろしていく。

ああ、そうか。
遺伝子レベルで惹かれ合うのは悪いことじゃない。
相性がいいってことだ。

「恥ずかしい?」
久隆が下着を下ろす手元を見ている。”それ”が布からこぼれ落ちる瞬間を見逃さないとでも言うように。
「んんッ」
咲夜自身が硬く立ち上がっていたので、下着を下ろす瞬間その先端は、彼から丸見えになった。恥ずかしさと興奮で、先端は濡れそぼっている。彼はじーっとそれを見つめていた。まるで“美味しそうだ”とでも言っているように感じ、咲夜は更に興奮を覚えるのだ。

早く、早く求められたい。
言葉にしない久隆だから行動で示して欲しい。
気が狂うほどに俺を、求めてよ。

「舐めてあげる」
と、久隆は咲夜をベッドに横たえると、浴衣の裾を左右に開き咲夜自身にしゃぶりついた。
「あああッ♡」
「ほら、もっと厭らしく足開いて」
「やッ」
「無理矢理がいいの?」
彼は咲夜の股《もも》をゆっくりと開くと満足そうに、愛しそうにそこを舐め始めた。

****

「んッ..や..」
彼にむちゅッむちゅッと、厭らしく咲夜自身を舐めあげられ、気持ちよさに身を捩る。

今日こそ俺に夢中にさせたいのにッ。
久隆..。
久隆はいつだって冷静だ。
ううん、今日までは。

「ああ…んんッ♡」
咲夜は段々と理性を保てなくなっていた。彼は無言で咲夜に快楽を植えつけてゆく。もっと彼の心を自分に惹き付けたくて久隆のほうに目をやろうとしたが、つぷッと指が奥へと侵入してきたので、それどころではない。

え?いつの間に?

咲夜が想いに夢中になっている間に、そこは舐めあげられ潤わされて、厭らしくひくついていた。そして、いつもより熱を持っているようにも感じる。

やぁッ..。
なに?なんでぇッ。

「あッ..くりゅッ..」
いつもの比ではない快感が咲夜の背筋を駆け昇っていく。媚薬でも使っているのかと思い、彼の方に目を向けたがそうではないようだ。

おかしくなっちゃう!
なんで?今日、我慢したから?
浴衣だから?

咲夜は、思いつく限り、いつもと違う理由を探すが理由がわからない。いつもより感じている咲夜に、彼は違和感を覚えたのか、手を止めこちらの様子を窺っている。
「咲夜?どうしたの?」
優しい響きにうっとりしてしまいそうになるが、不安には勝てそうにない。
「なんか、変なのッ」
と涙目で訴えれば彼は蕾から指を引き抜き、咲夜の顔の両側に手をついて、瞳を覗き込んだ。

「くりゅッ..なんか怖いッ..身体変ッ」
咲夜の訴えを聞き、彼は慌ててボトルを確認している。消費期限にも、成分にも問題はないようで、彼は困った顔をしながら咲夜の肌を手の平で優しく撫でた。大丈夫だよ、と言うように。しかし、全く大丈夫ではなかった。
「やああんッ♡」
脇腹を胸に向かって優しく撫でられただけなのにイキそうになる。

身体変だよぉッ。
欲しいの。
欲しくてたまらないッ。
久隆が欲しいよッ。

「久隆ッ」
何故だかわからないが、久隆が欲しくて堪らない。“繋がりたい”その感情が咲夜の脳を支配していく。
「いれてぇ..」
懇願すれば彼は驚いた顔をした。しかし、涙を溢しながらねだるものだから、切迫しているのかと傍らのゴムに手を伸ばす。
「咲夜、どうしちゃったの?」
と彼は、困ったように眉を八の字にして咲夜の両足を持ち上げ腰を少し高くすると、つぷぷっと久隆自身をそこへ挿入した。
「あッ..んんんッ♡」
奥が擦れ、求めていた衝撃が快感となって咲夜を包む。ゆっくりと焦らしながら腰を進める久彼にしっかりとしがみついて。

キス..。
欲しいのッ。

小さく口を開け、チロと舌を出せば望み通り彼が口づけをくれる。咲夜は何も考えられなくなっていた。

****

「ふ..んッ..あッ♡」
いつもなら恥ずかしがる咲夜が、夢中で久隆にしがみき喘ぎ声を漏らすのを、彼は複雑な表情で見ていた。自ら、見てとでもいうかのように開かれた腿《もも》。そこにあるのはピンク色の綺麗な果実。
「くりゅ..いいッ」
抱きついた彼のいい匂い、そして目の前には柔らかそうな耳たぶ。

食べたい。
久隆の耳たぶ..あむあむしたい。

「!?」
咲夜は何かに誘われるように、彼の耳たぶを甘噛みした。歯に感じる程よい弾力。そのまま舌でちろっと舐める。
「咲夜..ダメ..」
咲夜は気づかなかった、彼のその変化に。
「はぁッ..なんでそんなイタズラ..」
彼は、明らかに興奮状態に陥った。行為の最中でさえ興奮を隠す彼が。
「咲夜が悪いんだよ?」
「う?..ひゃッ」
彼に突然ぎゅっと抱き締められると、先ほどまでの比ではないくらいリズミカルに奥を突かれ、二人の間に息づくピンクの果実が久隆の肌に擦れる。
「うんッ..あああんッ♡」

気持ちいッ。
久隆、好き。

「咲夜、どれ程厭らしい顔してるか分かってる?」
「ふぇ?」
「俺以外に見せたらダメだよ」
「くりゅぅ..」
「可愛い。なに、そんな甘えた顔しても許してあげないよ?」
言葉とは裏腹に、優しい笑顔を向ける彼にうっとりする、咲夜。身体がもっと欲しいと疼いて、奥をきゅっと締め付けた。
「くっ..咲夜、そんな締め付けないでよ」
「くりゅ..好きッ♡」
うわ言のように何度も囁けば、彼が咲夜自身を握り込む。二人の間でくちゅくちゅと音をたて、厭らしさを増し咲夜の欲情を煽ってゆく。
「咲夜、愛してるよ」
「うぅぅんッ♡」

も、何も考えられないッ

先に熱を放ったのは咲夜の方。続いて奥には無機質な壁越しに熱を感じた。彼が蕾からから引く抜く時ズルリと内が擦れ、咲夜は声を漏らしてしまう。そして熱がこぼれ落ちないようにと、注意を払う彼を、なんだか不思議な気持ちで見ていた。
「眠たいの?」
「うん」
うとうとする咲夜のお腹の辺りを、暖かい湯で絞ったタオルで拭いてくれる彼を、ぼんやりと瞳に映す。こうなってしまうと、全裸なことすら気にならない。
「しょうがないね」
彼の手が髪や頬を撫でてくれるのが心地よい。ふと、明日は彼がいないことに気づいて急に寂しくなる。

「ぎゅって、して」
と咲夜は頬を撫でる手に触れ、おねだりすると彼は微笑んだ。そのままベッドの中に潜り込み、掛け布団を引く。その腕に引き寄せられ、彼の胸のなかで鼓動を聞いていた。
「浮気したら嫌だよ?」
有り得ないことだと思いながらも、甘えたくてそんなこと言えば、
「したことないし、しないよ」
と、彼はクスッと笑ったのだった。
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