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────1章【久隆と咲夜】

□14「君に悶絶」

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****♡Side・久隆

「おはよ」
翌朝、久隆が従業員食堂にいくと大里たち三人と和しかいなかった。時間を確認し、納得する。朝ごはんにしては少し遅い。プレートに食べたいものを乗せてゆきつつ、久隆が見上げたテレビにはニュースが流れていた。

「久隆、おはよう」
久隆が卵をプレートに乗せようか迷っているといつの間にか、カウンターで葵とお喋りをしていた筈の咲夜が側に立っている。
「おはよ、咲夜」
と久隆は、彼に気づき顔が綻ぶ。
「ぅう」
その笑顔に悩殺されたのか、彼は頬をほんのり赤らめ、久隆のTシャツの裾を引っ張る。

え?
なに?
凄い可愛いッ。

「どうしたの?」
と久隆が問うと、
「久隆、いつもそんな顔しないから」
と言う返答。

どんな顔して咲夜を見ていたと言うのだろう?

久隆にはさっぱりわからなかったが、ちゅッとその唇にキスをした。
「な、なんで」
と驚く彼に、
「して欲しそうな顔してたから」
と久隆が返すと、
「そんな物欲しそうな顔してた?」
と、恥ずかしそうだ。


「またイチャイチャしやがって」
久隆がカウンターの咲夜の隣の席に腰かけるなり、大里からヤジが飛んできる。大里と葵は学園祭の話をしてたようだ。選挙の方については、どうやら話が纏まったように感じる。それは二人の席の前に拡げられたレポート用紙のメモが物語っていた。
「大里くんも参加するんだってね」
不安そう口にする、咲夜。話の内容はどうやらモデルのことらしい。久隆はプチトマトを口に運びながら軽く頷く。
「何が不安?」
大人しく隣に座っている彼を、じっと見つめ。
「大里くんカッコいいから、久隆が…」
”とられちゃったら嫌だ”と、小さな声で抗議する彼が可愛くて堪らなかった。

なんでそんな可愛いんだろう?
俺の目には君しか映らないのに。
不安になって凹む君が可愛すぎて、今すぐ襲いたくなる。
うーん。やはりノルマを増やそう。

「今夜はいっぱい可愛がってあげるよ、咲夜」
「えっ」
「今日は食べてもいいでしょ?」
「何言ってるの、朝ごはん食べながらッ」

どれくらい好きだと言えば、俺にとっては君だけなことが伝わるのかな?
どんな言葉にしたら伝わるの?

「咲夜」
「うん?」
なあに?と耳を寄せる彼に、
「愛してるよ」
と、告げる。シンプルにしか言えない自分がもどかしい。
「俺も」
「!」
嬉しそうに笑う彼に全てを持っていかれそうになる。

どうしよう。
好きで好きで頭がおかしくなりそう。
なんなの、咲夜の魅了度。

****

───撮影所にて。

久隆は大里が担当から話を聞いているのを眺めていた。
「ん?」
すると、傍に人の気配。
「久隆、似合う?」
と、咲夜である。残りの撮影が大里のカットのみとなったため、葵は下着部門の方へ行ってしまっていた。
「ダメだよ、そんな」
咲夜は、久隆が大里の方ばかり見ていることにやきもちを妬き、肌の透ける白い生地の薄いシャツで気を惹こうとしたようだ。久隆は、咲夜の胸の突起が透けているのを見て慌てる、近場にあった黒いシャツを掴むと更衣室へ彼を連れ込む。
「んッ、痛いッ」
久隆が乱暴に腕を掴んでしまったため、彼が顔をしかめる。
「ごめん、でもダメだからこんなの」
「久隆..」

そんな目で見ないで。
襲いたくなるじゃないか。

プチプチと彼のシャツのボタンを外しながら、
「俺の性欲刺激しないでよ、咲夜」
と言えば、
「じゃあ、俺だけ見ていてよッ」
と涙目の彼。

咲夜のやきもちが堪らなく好きだ。
一度は諦めたものだから。

「見てるじゃないか」
「だって」

可愛い。
犯したい。

「だってじゃないの。したくなるだろ」
「久隆が?欲情してくれるの?」
「何いってんの、ほんと。何時だって理性が崩壊しそうなのに」
「ほんとに?」
久隆は彼に白いシャツの代わりに黒いシャツを着せてやると、優しく抱き締めた。
「いい子だから、おイタしないで?」
「うんー」
と彼は、まだ何か不満そうだ。
「咲夜」
「だって!久隆は..」
久隆はそっと離れ、目を泳がす彼を見つめる。
「いつも、憧れみたいな目で大里くんを見てるから」
「は?」

いつそんな顔した?
そりゃ、身長が羨ましいとか
イケメンで羨ましいとか思うけど。

「容姿に憧れはあるが、好きとかそんなんじゃないよ?」
「なんで憧れるの?」
「そりゃ、咲夜だってカッコいい方が好きだろ?」
「俺は、久隆だから好きなのッ。久隆はわかってないよね?」

そんなこと言われたって、君にはわからないだろ?
俺の不安も苦しみも。

「そのままでいいッ」
「咲夜は残酷だ」
「なんで…」
「じゃあ、なんで俺に振り向いてくれたの?」

葵ちゃんがきっかけを作ってくれただけに過ぎない。
それなのに。
俺に努力するなって言いたいの?

「答えられないくせに」
と彼をなじると、
「俺は…」
咲夜は泣き出しそうな顔をして俯く。
「おいで」
「くりゅ…」
彼の腕を掴むと更衣室を出た。向かった先は、フロアに設置されている仮眠室。
「ここは?」
久隆は彼を中へ押し込むと鍵をかける。
「咲夜、服を脱いで」
「なんで?」
「抱きたい、今すぐ」
と言い放てば、彼はとても困った表情をした。
「自分で脱ぐのはいや?」
と、立ち尽くす彼を久隆は少し乱暴にベッドへと押し倒して。

****

「ぅ..ひっく」

泣かせた。
最悪だ。




「やだぁ!いやぁ...ッ」
簡易ベッドの上で無理やり服を引き剥がすと、久隆は咲夜に愛撫をはじめた。
「なんで嫌がるんだよ」
「いやッ」
「咲夜、覚えてる?」
「うぅッ...」

咲夜を初めて抱いたのは、慰めるためだった。自分に気持ちが向いていない咲夜を、どんな思いで抱いたのか君は知らない。

「初めてした時のこと」
「うぅ?」

君の心の中には葵ちゃんしかいなくて。
一欠片すら、君の心のなかに自分はいなかった。

「咲夜には、俺の気持ちなんてわからないだろッ」
「いやッ..こわいッ」

努力しなきゃいけない。
だって、二度とあんな想いは嫌だから。

「んんッ..」
嫌がる彼を押し付け無理やり唇を奪い、手は世話しなく脇腹を撫で上げる。
「久隆ッ..やだよぉッ」
「何がいや?」
「だって」
「抱かせてよ、咲夜が欲しい。今すぐ」

**

外ではドアの前を行き交う足音と機材を運ぶ音。
「やぁッ..」
久隆に逆らえない彼の奥をつく。奥に腰を進める度にベッドが軋む。
「やめてッ」
ちっともよがらない咲夜に不安を覚え始めた久隆は、イかせようと咲夜自身に指を絡めると、彼はぽろぽろと涙を溢した。

「久隆ッ」
「...」
「やだッ..」
「何がそんなに嫌なんだよ!」
「んんッ..はぁッ」
彼の背中に手を回し抱き締めると、首筋に舌を這わせ、
「好きだよ、咲夜」
と囁く。
「っく..」
「そんなに拒絶されたら辛いよ」
そこで初めて、彼が久隆にしがみついた。
「ねえ?好きじゃないの?俺のこと」
と不安を咲夜にぶつければ、
「好きッ」
と、返ってくる。やっと熱を持ち始めた彼の吐息に久隆はイきそうになった。

「ほんとに?」
「好きだよッ..あッんんッ」
「もっと感じて」
「んッ..やッ」
「イって。俺を満足させて」

俺の不安も苦悩も書き消して。
お願いだから。

「ほら、くちゅくちゅしてあげる」
「んッ..はぁッ..もうッ」
「好きだ、愛してる」
「ああああッ」

何が嫌だった?
何がダメだった?
ねえ、愛してくれる?
咲夜、お願い。

**

熱を放出した咲夜の身体を拭いてあげるが、彼はしくしくと泣いていた。
「泣かないで」
と久隆はその髪を撫でる。
「だって、嫌だっていったのに」
「何が嫌なの?」
ガタガタと外で物音がする。
「こんなとこで..エッチなんてやだ!」

あ、なんだ。
そっか。

「外にだって聞こえちゃうし、恥ずかしいよ」
と泣きじゃくる彼。
「うん」
「みんなにバレちゃうし」
「うん、ごめん」
久隆はホッとしながら咲夜に腕を伸ばし抱きしめた。
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