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────1章【久隆と咲夜】

□10「君がいる平穏」

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****♡Side・大里

「なにしてんだ?」
大里がテーブルに突っ伏して唸っていると、頭上から呆れ声。
「飯、食ったのかよ?」
「久隆ッ」
大里が顔を上げると、
「はいはい、俺ですよ」
と久隆は呆れ顔で片肘をつき頬杖をし、こちらを見ていた。
「いや、まだ」
と返せば、
「今まで何してたんだよ、バカか?」
と。えらい言われようである。

「え、てか、なんでこっち?」
大里がキョロキョロと、葵と久隆の方に視線を走らせると、咲夜は葵の隣に座っていた。
「食べ終えたら、二人は上行くから」
それより、と久隆は続ける。
「魚と肉どっちにするんだ?」
大崎邸の夕飯は魚メニューか肉メニューの二択になっている。お品書きはテーブルの上にも置いてあった。
「今日の魚はムニエルなのか。魚にしようかな」
と大里が答えると、
「頼んできてやるよ」
と、久隆が立ち上がる。

やっぱり久隆が側にいると落ち着く。

大里は、乱れた心が落ち着いていくのを感じていた。時刻は19:30を回ったところらしい。
「なあ、そういえば学祭の方はどうするんだ?」
戻ってきた久隆は、飲み物を大里の前に置きながらそう質問してきた。十一月頭には生徒会の選挙があり、後半には学園祭が控えている。我が学園では、初等部から大学部までの一斉イベントになるので、高等部での出し物は部活動での出し物が主になっていた。クラスでやらない代わりに、個人でメンバーを集めて出し物をすることも許可されている。

「せっかくだし、何かやりたいよなー」
「そうだな」
席についた彼が柔らかい表情をするので、大里は安堵した。
「そういえば、被服科の奴らがファッションショーやるっていってたな。バンド演奏か、モデルしてくれないか?って」
「ふぅん。大里って顔広いんだな」
「やる?」
と思いきって聞くと
「俺、何ができんの?」
と彼は眉を寄せる。

それ、俺に聞くのか?

大里は額を押さえ、肩を揺らした。
「何、笑ってんだよ」
「久隆が面白過ぎるから」
「ちっ」
「モデルでいいじゃん。楽器できないし、音痴なんだから」
大里は、くくくと笑いながら提案をする。
「身長もないけどな!」
と、ムッとする彼に大里は吹いた。

「片倉は器用そうだよなー。キーボードとドラムは借りるとして..ベースは持ってるし。ギター弾けるやつ探さないとな」
と溢すと、
「風紀委員長が弾けるだろ」
「え?」
と、彼。その言葉に大里はポカンとする。
「忘れたのかよ?中二の時に行った、中、高等部の生徒会交流会。あの人生徒会役員でもないのに駆り出されて、バンド演奏してただろ?」
「ああっ、そういやそうだな」
「そもそも、あれで仲良くなったんだろ?大里は」

中二の時に参加した中等部、高等部の交流会で大里はバンド演奏のベースを担当。その時、高等部一年だった美崎と仲良くなったのだ。大里はきっかけをすっかり忘れており、ぼんやりと当時を思い出していたところへ、本日の配膳担当が久隆と大里、咲夜の前に料理を置いてゆく。
「霧島にはボーカルやってもらうか」
「いいんじゃない?」
二人は料理に箸をつけながら学祭の話に華を咲かせていた。
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