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special love『運命の恋人』
1:念願の恋人
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****♡side:久隆
「咲夜、あのね」
ぎゅっと抱き締め合いながら一所懸命言葉を繋ぐ。
──咲夜が好き。
小さい頃からずっと一緒にいたのに、ドキドキするんだ。
毎日一緒に寝てるのに咲夜の匂いにクラクラするの。
毎日一緒にお風呂に入っていたのに、最近君を見るのが恥ずかしくて。
好きが溢れちゃうんだ。
恋人になりたい。咲夜の特別に。
高等部に上がり、久隆は咲夜の前ではカッコつけたがるようになっていた。クールでカッコいい男になるんだ! そして咲夜をメロメロにするんだからと、可愛いことを考えつつ。
恋人になりたくて告白しようと試みるが……。
先ほどの身体測定では咲夜に身長は抜かされるし、キスは自分からできないし、情けないところばかりみせている。今度こそカッコよくスマートに決める! と意気込んではみたものの。
──なんて言えばいいんだよ。
”you!俺とつきあっちゃいなよ”
……バカか……?
”ずっと好きでした、付き合ってください”
うーん真面目すぎる?
”咲夜、俺にしときなよ”
誰と争ってるんだ?
”咲夜には俺しかいないよ”
自意識過剰?
──あああああ! いい台詞浮かばない。
一人悶々として唸っていると、咲夜はクスッと笑った。
その綺麗で可愛らしい笑顔に見惚れていると、
「久隆、好きだよ。僕の恋人になって」
とストレートに告げられた。
久隆は真っ赤になる。
「返事は?」
小首を傾げる彼に思わずちゅっと口づけ。
「お、俺も好きッ。嬉しい!」
とかっこつけるのも忘れて素直な返事をしてしまった。
──うわッ。
ここは
”そこまでいうなら俺様の恋人にしてやるよ”
って言うべきだったか。しくじった!
変な漫画の見すぎである。
**・**
「お兄ちゃ……兄さん」
子供っぽいと思い久隆は慌てて言い直す。大崎邸、従業員食堂にて。
久隆は三つ上の兄、圭一の元にいた。今日の身体測定の結果で気分は落ち込み気味だ。兄はまるでモデルのような体型なのに何故自分はチビで華奢なのか。
「ん? 抱っこか?」
「ちがーう!」
この兄は弟である久隆を溺愛しており、いつまでも幼児扱いする。ベビーフェイスで可愛らしい顔をしているので無理も無いが。
大崎邸西の一階奥にある従業員食堂は大崎邸に勤める二十名ほどの従業員、通称ファミリーのために作られた。ログハウスの内装のように落ち着く、お洒落なカフェのような雰囲気を醸し出している。対面式のキッチンには大崎邸専属のコックが控えており、片親であり父がいつも仕事で不在だった大崎兄弟は大食堂ではなくこちらを利用していた。
そのため父が再婚した後も、義理の兄弟である咲夜を含めこちらを利用している。
「なんだよ、抱っこしてやるのに」
「け、結構です」
「まったく、甘えん坊が大人のふりして」
酷い言われようだ。兄はブラックコーヒーの入ったコーヒーカップを口元へもって行きながら久隆を眺めている。用はなんだ? とでも言うように。
「あのね、アフロにしようと思うんだけど」
「ぶっ」
普段クールであまり表情も変えない兄がコーヒーを吹いた。
「なんだって?」
「だから、アフロ」
「何故に……気でも触れたか?」
対面キッチンの中で作業をしていた大崎邸料理長の南が二人の会話に大笑いしている。笑っちゃいけないと思ったのか後ろを向き肩を揺らして。久隆は泣きそうな顔をし無言で兄に健康診断の簡易結果を渡す。兄もまた無言で受け取った。
「咲夜に三センチ抜かれた」
「なんだ、色気づいたのか」
チラと健康診断の用紙から顔をあげ久隆に目を移して。
「うちの家系って長身じゃない? パパ……父さんもお祖父ちゃんも兄さんだって高いのに……」
兄は中学の時から長身であった。
「仮に長身の家系であっても、久隆が伸びる保証は無い」
「そ、そんなあ……」
「お前もカワハギを食え」
それこそ伸びる保障はどこにもない。単なる兄の好物である。
「咲夜、あのね」
ぎゅっと抱き締め合いながら一所懸命言葉を繋ぐ。
──咲夜が好き。
小さい頃からずっと一緒にいたのに、ドキドキするんだ。
毎日一緒に寝てるのに咲夜の匂いにクラクラするの。
毎日一緒にお風呂に入っていたのに、最近君を見るのが恥ずかしくて。
好きが溢れちゃうんだ。
恋人になりたい。咲夜の特別に。
高等部に上がり、久隆は咲夜の前ではカッコつけたがるようになっていた。クールでカッコいい男になるんだ! そして咲夜をメロメロにするんだからと、可愛いことを考えつつ。
恋人になりたくて告白しようと試みるが……。
先ほどの身体測定では咲夜に身長は抜かされるし、キスは自分からできないし、情けないところばかりみせている。今度こそカッコよくスマートに決める! と意気込んではみたものの。
──なんて言えばいいんだよ。
”you!俺とつきあっちゃいなよ”
……バカか……?
”ずっと好きでした、付き合ってください”
うーん真面目すぎる?
”咲夜、俺にしときなよ”
誰と争ってるんだ?
”咲夜には俺しかいないよ”
自意識過剰?
──あああああ! いい台詞浮かばない。
一人悶々として唸っていると、咲夜はクスッと笑った。
その綺麗で可愛らしい笑顔に見惚れていると、
「久隆、好きだよ。僕の恋人になって」
とストレートに告げられた。
久隆は真っ赤になる。
「返事は?」
小首を傾げる彼に思わずちゅっと口づけ。
「お、俺も好きッ。嬉しい!」
とかっこつけるのも忘れて素直な返事をしてしまった。
──うわッ。
ここは
”そこまでいうなら俺様の恋人にしてやるよ”
って言うべきだったか。しくじった!
変な漫画の見すぎである。
**・**
「お兄ちゃ……兄さん」
子供っぽいと思い久隆は慌てて言い直す。大崎邸、従業員食堂にて。
久隆は三つ上の兄、圭一の元にいた。今日の身体測定の結果で気分は落ち込み気味だ。兄はまるでモデルのような体型なのに何故自分はチビで華奢なのか。
「ん? 抱っこか?」
「ちがーう!」
この兄は弟である久隆を溺愛しており、いつまでも幼児扱いする。ベビーフェイスで可愛らしい顔をしているので無理も無いが。
大崎邸西の一階奥にある従業員食堂は大崎邸に勤める二十名ほどの従業員、通称ファミリーのために作られた。ログハウスの内装のように落ち着く、お洒落なカフェのような雰囲気を醸し出している。対面式のキッチンには大崎邸専属のコックが控えており、片親であり父がいつも仕事で不在だった大崎兄弟は大食堂ではなくこちらを利用していた。
そのため父が再婚した後も、義理の兄弟である咲夜を含めこちらを利用している。
「なんだよ、抱っこしてやるのに」
「け、結構です」
「まったく、甘えん坊が大人のふりして」
酷い言われようだ。兄はブラックコーヒーの入ったコーヒーカップを口元へもって行きながら久隆を眺めている。用はなんだ? とでも言うように。
「あのね、アフロにしようと思うんだけど」
「ぶっ」
普段クールであまり表情も変えない兄がコーヒーを吹いた。
「なんだって?」
「だから、アフロ」
「何故に……気でも触れたか?」
対面キッチンの中で作業をしていた大崎邸料理長の南が二人の会話に大笑いしている。笑っちゃいけないと思ったのか後ろを向き肩を揺らして。久隆は泣きそうな顔をし無言で兄に健康診断の簡易結果を渡す。兄もまた無言で受け取った。
「咲夜に三センチ抜かれた」
「なんだ、色気づいたのか」
チラと健康診断の用紙から顔をあげ久隆に目を移して。
「うちの家系って長身じゃない? パパ……父さんもお祖父ちゃんも兄さんだって高いのに……」
兄は中学の時から長身であった。
「仮に長身の家系であっても、久隆が伸びる保証は無い」
「そ、そんなあ……」
「お前もカワハギを食え」
それこそ伸びる保障はどこにもない。単なる兄の好物である。
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