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special love『運命の恋人』
4:大崎家の伝統
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****♡Side・圭一(長兄)
「圭一さん」
圭一が自室で”大崎家伝統”と書かれている箱を見つめていると軽快なノックの音が聞こえ、続いて一人の男性が入ってくる。
「ああ、都筑か」
彼は、姫川都筑。
圭一と久隆の実父の再婚相手である、姫川真咲の一五個下の弟。圭一の八つ上だ。彼に初めて出会ったのは五歳の時で、圭一の初恋の相手でもある。大学に上がった圭一は、そろそろ想いを告げられたらいいなと思っていた。彼は大崎グループ社長である父の秘書も務めており、美人で優秀だ。
「それは?」
と圭一の手元を覗き込む、彼。
振り返ればキス出来てしまいそうな距離。彼の匂いがとても好きだ。柔軟剤だろうか。とてもいい香りがする。
「ああ、これは大崎家に代々伝わる、理性を鍛える方法」
箱を開くと肌色のパッケージばかりのDVDがびっしりと詰まっていた。
それを見て都筑は困った顔をする。
「圭一さんもご覧になられるのですか?」
と、彼。
「いや、俺には不要だ」
圭一は都筑以外に興味がない。
性欲がないわけではないが、彼以外に欲情などしたりはしない。もっとも理性を鍛えるのは”姫川家”対策なのだが。姫川家の男児は大崎家の人間にとって特別な存在だ。
代々惹かれ合いながらも何らかの事情で結ばれなかった、または引き裂かれた大崎家と姫川家の恋人たち。
彼らは皮肉を込め”運命の恋人”と両一族から呼ばれている。しかも全ての男児同士が惹かれるというわけでも、決まった法則があるわけでもない。
悲しい歴史を繰り返してきた両家の者たちは、時には出逢わせないようにしたり、引き裂かれるのを食い止めようとしたり、いろんな努力を続けてきた。
そうしているうちに両家の絆は深まり、同性婚が可能になるより遥か昔から協定を結んできたのだ。
”惹かれ合うもの同士が現れたら、全力でバックアップしよう”と。
それでも歴史は繰り返す。
圭一の父である奏もまた、咲夜の父である真咲と一度は引き裂かれた”運命の恋人”であったのだ。奏に想いを寄せていた女性の手により、騙されて二人は一度別な道を歩み始める。しかも騙した女性は奏が手に入れられないと分かると、真咲を騙し婚姻した。彼女との間に産まれたのが咲夜である。咲夜はその事をまだ知らない。
だが、彼らはその事を知ることとなる。
真咲は真実を知ったが奏が幸せな家庭を築いていることを知っていたので、ずっと言えずにいたらしい。しかし圭一の母は重い病を患ってしまった。彼女が圭一たちを残しこの世を去ったのが久隆が三つ、圭一が五つの時である。
時期早々だとは思ったらしいが葬儀の日、真咲は奏に真実を打ち明けた。妻を失い悲しみに暮れていた奏が、かつて結婚を約束し、幼い頃から一緒に居た相手の手を掴むのは自然なことだろう。
母を失い悲しみに暮れていた一家に、二人の家族が加わったのはそれから間もなくのことであった。
男ばかり五人の家族だが大崎家には二十名からの住み込みの従業員こと、通称ファミリーがいる。毎日が賑やかだ。
「本当に?」
母を失った頃のことを思い出していると都筑から突然質問を受けドキリとした。
まるで、ホントに寂しくないのかと聞かれているように感じたからだ。
「なんで、疑ってるんだよ」
「圭一さん、カッコいいのに浮いた話の一つも聞かないし」
「カッコいい?」
圭一の通うK学園には、いろんなランキングというものがある。その中の一つ、K学イケメンランキング首位を毎年キープしているのは圭一だったが、まったくそう言うものに興味を示さない圭一は、自分が美形に分類されることに無自覚だったのである。
「圭一さん」
圭一が自室で”大崎家伝統”と書かれている箱を見つめていると軽快なノックの音が聞こえ、続いて一人の男性が入ってくる。
「ああ、都筑か」
彼は、姫川都筑。
圭一と久隆の実父の再婚相手である、姫川真咲の一五個下の弟。圭一の八つ上だ。彼に初めて出会ったのは五歳の時で、圭一の初恋の相手でもある。大学に上がった圭一は、そろそろ想いを告げられたらいいなと思っていた。彼は大崎グループ社長である父の秘書も務めており、美人で優秀だ。
「それは?」
と圭一の手元を覗き込む、彼。
振り返ればキス出来てしまいそうな距離。彼の匂いがとても好きだ。柔軟剤だろうか。とてもいい香りがする。
「ああ、これは大崎家に代々伝わる、理性を鍛える方法」
箱を開くと肌色のパッケージばかりのDVDがびっしりと詰まっていた。
それを見て都筑は困った顔をする。
「圭一さんもご覧になられるのですか?」
と、彼。
「いや、俺には不要だ」
圭一は都筑以外に興味がない。
性欲がないわけではないが、彼以外に欲情などしたりはしない。もっとも理性を鍛えるのは”姫川家”対策なのだが。姫川家の男児は大崎家の人間にとって特別な存在だ。
代々惹かれ合いながらも何らかの事情で結ばれなかった、または引き裂かれた大崎家と姫川家の恋人たち。
彼らは皮肉を込め”運命の恋人”と両一族から呼ばれている。しかも全ての男児同士が惹かれるというわけでも、決まった法則があるわけでもない。
悲しい歴史を繰り返してきた両家の者たちは、時には出逢わせないようにしたり、引き裂かれるのを食い止めようとしたり、いろんな努力を続けてきた。
そうしているうちに両家の絆は深まり、同性婚が可能になるより遥か昔から協定を結んできたのだ。
”惹かれ合うもの同士が現れたら、全力でバックアップしよう”と。
それでも歴史は繰り返す。
圭一の父である奏もまた、咲夜の父である真咲と一度は引き裂かれた”運命の恋人”であったのだ。奏に想いを寄せていた女性の手により、騙されて二人は一度別な道を歩み始める。しかも騙した女性は奏が手に入れられないと分かると、真咲を騙し婚姻した。彼女との間に産まれたのが咲夜である。咲夜はその事をまだ知らない。
だが、彼らはその事を知ることとなる。
真咲は真実を知ったが奏が幸せな家庭を築いていることを知っていたので、ずっと言えずにいたらしい。しかし圭一の母は重い病を患ってしまった。彼女が圭一たちを残しこの世を去ったのが久隆が三つ、圭一が五つの時である。
時期早々だとは思ったらしいが葬儀の日、真咲は奏に真実を打ち明けた。妻を失い悲しみに暮れていた奏が、かつて結婚を約束し、幼い頃から一緒に居た相手の手を掴むのは自然なことだろう。
母を失い悲しみに暮れていた一家に、二人の家族が加わったのはそれから間もなくのことであった。
男ばかり五人の家族だが大崎家には二十名からの住み込みの従業員こと、通称ファミリーがいる。毎日が賑やかだ。
「本当に?」
母を失った頃のことを思い出していると都筑から突然質問を受けドキリとした。
まるで、ホントに寂しくないのかと聞かれているように感じたからだ。
「なんで、疑ってるんだよ」
「圭一さん、カッコいいのに浮いた話の一つも聞かないし」
「カッコいい?」
圭一の通うK学園には、いろんなランキングというものがある。その中の一つ、K学イケメンランキング首位を毎年キープしているのは圭一だったが、まったくそう言うものに興味を示さない圭一は、自分が美形に分類されることに無自覚だったのである。
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