6 / 13
special love『運命の恋人』
2:君には渡さない
しおりを挟む
****♡Side・姫川咲夜(義理の弟)
「久隆、身長伸びなくて落ち込んでたぞ」
と、大里聖。
彼は咲夜と久隆の幼馴染みである。そんな彼から受けた報告。
分かってる、久隆が自分より男らしくありたいということくらい。そんな事しなくても充分魅力的なのに。
──ベビーフェイスに良い声、歌は音痴だけれど。
なによりも僕を大事にしてくれる。
「可愛いよな」
と溢す聖を咲夜は眉を寄せ見上げた。
自分同様、彼もまた久隆のことが好きなのだ。聖はカッコいい。咲夜は焦っていた。
「く、久隆はカッコいいよ!」
「へ?」
と、彼は呆けた顔を咲夜に向けて。
「久隆は渡さないからね!」
「お、おお?」
咲夜はズンズンと教室に向かって歩き出す。彼を置いて。
「おい、待てって」
背中からかけられる声を無視し。
**・**
『あのね、アフロにしようと思うんだけど』
聖に先手を打って久隆に告白をし咲夜が安心していたら、おかしな現場に出くわしてしまった。
咲夜は大崎邸の従業員食堂に入ろうとして固まる。
──今、なんか久隆の声でおかしな会話が聞こえたような気がしたんだけど?
まさか、髪で身長を盛ろうって?
久隆、可愛すぎる!
ぎゅってしたいッ。
咲夜もまた身長のことでは悩んでいたが、久隆の可愛さに悩みも吹っ飛んだ。彼はモテる。告白をしてくるものは見たことは無いが。それはそうである、常にハイスペックな聖と咲夜が傍でガードしているのだから。
そろっとドアを開け、咲夜は何食わぬ顔で中に入っていく。会話は一旦落ち着いたようで……。
「久隆?」
久隆は項垂れ、咲夜にとって義理の兄にあたる圭一はカワハギを食べていた。
先に咲夜に気付いたのは兄である。
「なんだ咲夜、抱っこか?」
と聞かれた。
この兄はいつまで経っても咲夜たちを幼児扱いする。
「! ダメ、咲夜は俺が抱っこしてあげるの!」
と、久隆。
「なんだ、色気づいて。おチビのくせに」
兄は久隆の頬をぷにぷにと、つついた。咲夜はそんな二人をにこにこしながら見ていたのだった。
**・**
──可愛いなあ。そういうとこが好き。
傍に行けば、むぎゅっと抱き締めてくれる。
大好きな久隆の温もりにうっとりしていると、
「夕飯食べよう? 咲夜」
と言葉をかけられた。
大崎邸には二十人もの従業員が在沖しているため朝はビュッフェ、夜はメインを魚と肉から選べる。元は家族と別だったらしいが、居心地の良さからもっぱら従業員食堂に入り浸りだ。
「咲夜どっちにする? 今日はメインの肉はチーズインハンバーグだって」
「ハンバーグ好きッ」
「カワハギを食え、おチビ共」
二人がきゃっきゃしていると横から圭一が口を挟む。
しかし、
「ハンバーグにする」
と、久隆。
「俺の話、聞いてたか?」
という圭一の言葉を無視し、すくっと立ち上がる久隆。
やれやれと肩を竦め圭一も立ち上がると二人のために飲み物を作ってくれる。
「久隆は?」
「ピーチ」
紅茶の種類のようだ。圭一は咲夜がストレートを好むことを知っているので自分は問われない。
「また、そんな邪道なもの飲んで」
ぶつくさ言いながらも入れてくれる圭一は久隆にとても甘い。
何故なら久隆は甘えん坊で寂しがりやな癖に、お兄ちゃんだからと言って我慢するから。いつだって咲夜にいいところを見せたがるのだ。
圭一はそんな久隆のことなどお見通しでいつも心配している。咲夜は咲夜で、自分が素直に甘えなければ久隆が甘え辛いと思っていたから、いつでも二人にべったりだ。きっと圭一はそのことにも気づいているに違いない。
「久隆、身長伸びなくて落ち込んでたぞ」
と、大里聖。
彼は咲夜と久隆の幼馴染みである。そんな彼から受けた報告。
分かってる、久隆が自分より男らしくありたいということくらい。そんな事しなくても充分魅力的なのに。
──ベビーフェイスに良い声、歌は音痴だけれど。
なによりも僕を大事にしてくれる。
「可愛いよな」
と溢す聖を咲夜は眉を寄せ見上げた。
自分同様、彼もまた久隆のことが好きなのだ。聖はカッコいい。咲夜は焦っていた。
「く、久隆はカッコいいよ!」
「へ?」
と、彼は呆けた顔を咲夜に向けて。
「久隆は渡さないからね!」
「お、おお?」
咲夜はズンズンと教室に向かって歩き出す。彼を置いて。
「おい、待てって」
背中からかけられる声を無視し。
**・**
『あのね、アフロにしようと思うんだけど』
聖に先手を打って久隆に告白をし咲夜が安心していたら、おかしな現場に出くわしてしまった。
咲夜は大崎邸の従業員食堂に入ろうとして固まる。
──今、なんか久隆の声でおかしな会話が聞こえたような気がしたんだけど?
まさか、髪で身長を盛ろうって?
久隆、可愛すぎる!
ぎゅってしたいッ。
咲夜もまた身長のことでは悩んでいたが、久隆の可愛さに悩みも吹っ飛んだ。彼はモテる。告白をしてくるものは見たことは無いが。それはそうである、常にハイスペックな聖と咲夜が傍でガードしているのだから。
そろっとドアを開け、咲夜は何食わぬ顔で中に入っていく。会話は一旦落ち着いたようで……。
「久隆?」
久隆は項垂れ、咲夜にとって義理の兄にあたる圭一はカワハギを食べていた。
先に咲夜に気付いたのは兄である。
「なんだ咲夜、抱っこか?」
と聞かれた。
この兄はいつまで経っても咲夜たちを幼児扱いする。
「! ダメ、咲夜は俺が抱っこしてあげるの!」
と、久隆。
「なんだ、色気づいて。おチビのくせに」
兄は久隆の頬をぷにぷにと、つついた。咲夜はそんな二人をにこにこしながら見ていたのだった。
**・**
──可愛いなあ。そういうとこが好き。
傍に行けば、むぎゅっと抱き締めてくれる。
大好きな久隆の温もりにうっとりしていると、
「夕飯食べよう? 咲夜」
と言葉をかけられた。
大崎邸には二十人もの従業員が在沖しているため朝はビュッフェ、夜はメインを魚と肉から選べる。元は家族と別だったらしいが、居心地の良さからもっぱら従業員食堂に入り浸りだ。
「咲夜どっちにする? 今日はメインの肉はチーズインハンバーグだって」
「ハンバーグ好きッ」
「カワハギを食え、おチビ共」
二人がきゃっきゃしていると横から圭一が口を挟む。
しかし、
「ハンバーグにする」
と、久隆。
「俺の話、聞いてたか?」
という圭一の言葉を無視し、すくっと立ち上がる久隆。
やれやれと肩を竦め圭一も立ち上がると二人のために飲み物を作ってくれる。
「久隆は?」
「ピーチ」
紅茶の種類のようだ。圭一は咲夜がストレートを好むことを知っているので自分は問われない。
「また、そんな邪道なもの飲んで」
ぶつくさ言いながらも入れてくれる圭一は久隆にとても甘い。
何故なら久隆は甘えん坊で寂しがりやな癖に、お兄ちゃんだからと言って我慢するから。いつだって咲夜にいいところを見せたがるのだ。
圭一はそんな久隆のことなどお見通しでいつも心配している。咲夜は咲夜で、自分が素直に甘えなければ久隆が甘え辛いと思っていたから、いつでも二人にべったりだ。きっと圭一はそのことにも気づいているに違いない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる