転生したらキングメーカーでした 〜ウォリックになった俺、未来知識で推しのために全力で闘います!!〜

月雪美玲

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いやー、平和だねー(今は)

9.デートだヨ!

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1435年11月23日

 リッキーだヨ!!デートだヨ!!!!!


 マジです。もう一度言います。マジです。

 この間、セシリー姉上から手紙が来て、ヘンリー義兄上とデートするから、俺とアニーも一緒に来ないかって話になって行くことにした。当然でしょ。アニーに会えるんだし。羨ましいでしょー。

 あ、あとついでに7歳になりました。まだまだちっちゃいですねー。アニーよりおちびちゃんです(身長が)。

「♪らんららーん馬車はきついなー」

 相変わらず長時間馬車に乗っているとお尻が痛い。ついでにタイヤもゴムがないので揺れる。ものすっごく揺れる。というわけで、気分を紛らわせるために歌を歌っている。

「♪ガタガター、早く降りたいー」

「ぼっちゃま、頭は大丈夫でしょうか」

 外にいる御者に声をかけられた。…いや、変な歌歌っているけど大丈夫だから。頭打ってくるくるパーとかじゃないからね?と言うか3歳の時のあれは中の人がまるまる変わっているし、そりゃあおかしくなったと思うだろうけど。

 いや、正常です。

「あー大丈夫。安心して」

 寧ろ乗り心地という面では御者の方が痛いだろう。こっちは多少クッション等があるものの向こうはない。いつか乗って確かめてみよう、っと。

 …心配だなぁ、と独り言を言う御者を俺はなんとなく眺めながら歌い続けた。


◯●◯

「お久しぶりです、アニー、姉上、義兄上」

「久しぶりね、リッキー。お父様とお母様やみんなは元気?」

 俺が挨拶をし終えた後、最初に話しかけてきたのはセシリー姉上だった。嫁いでからおよそ一年。昔のようなクールな雰囲気は残りながらも笑顔が昔より優しげになっている。

「ええ、元気ですよ。とうとうトムもジョニーも短剣を渡されたりして騎士になる準備も進めていますし、アリーは物語が好きだからジョーに本の読み聞かせをしています。父上と母上は…、相変わらず」

「なら良かったわ」

「あと、ジョウン姉上の結婚も決まったんですよ」

 ジョウン姉上の結婚相手はアランデル伯ウィリアム・フィッツアランだ。史実ではこの頃八代伯の叔父として摂政をしている筈だが、何故だか今世では既に爵位を継いでいる・・・・・・・・・・

(なーんか所々違和感があるんだよな)

 この世界は微妙に『俺の知っている歴史でない』。…というのも、今世でも俺は歴オタぶりを発揮し、父上に頼んで様々な歴史書を買ってもらっては、暇な時に読んでいた。

(…モンゴル軍のグルジア侵攻の緒戦にギオルギ4世が勝利した、っていうの俺の記憶と違うんだよな…。確かこの戦争で彼は敗北し、重傷。その後、妹のルスダンが継いだはずだけど…)

 この世界では彼女は兄と祖国を守るためにモンゴルに嫁いだ『悲劇の王女』ということになっている。
 他にもビザンツ帝国が十字軍に荒らされていない、カルマル同盟のマルグレーテ女王が実際に即位している、など少しずつ、俺の知っている歴史と異なっている。


 流石に話がそれ過ぎた。今回は勉強に来たのではなく、ピクニックに来たのだ。

「じゃあ、ここで話すのもなんだし、出発するか」

 ヘンリー義兄上の言葉で、俺たち四人は出発した。


◯●◯

「いいお天気…」

 俺以外の三人が住むウォリック城の側に流れるエイヴォン川のほとりに、俺たち四人は腰掛けた。中でもアニーは、楽しそうに笑っている。うん、可愛い。

「わぁっ!リッキー、見て見て、リスよ」

 アニーは一瞬びっくりした後、やや興奮しながらリスを手にのせた。

「本当だ、森から出てきたのかな?あいにく、俺たちは人間用の食べ物しか持ってないけど…」

「そうね…、どんぐりでも落ちてないか見ようかしら?それにしても可愛いわね…」

「アニーも可愛いよ」

「もう、リッキーったら!」

 小動物系美少女+リス=超絶可愛い!アルバムに永久保存するレベルに可愛い!

「ははは…。じゃあ森に入らない程度にどんぐりを探そっか」

 俺はヘンリー義兄上とセシリー姉上に許可をとると、アニーと一緒に歩き出した。森側には秋の花々。水仙、ローズマリー、ノースポール、雛菊。足元には赤く染まった葉のじゅうたん。時々りんごが降ってくる。…あぶない。

 アニーの手に乗っていたリスはどんぐりを見つけると飛び降りて地面に埋める。時々りんごも齧る。だが、特に何もないとアニーの手に戻ってくる。嬉しそうにするアニー可愛い(もちろんリスもだけど)。

 だから俺は近くにある綺麗な白薔薇と可愛らしいユリオプスデイジーを摘むと、白薔薇をアニーの頭に、ユリオプスデイジーをリスの手に乗せた。

「あっ…!リッキー、ありがとう…」

「お礼とかいいよ、俺が勝手に乗せただけだから」

 自分なりに、一応考えてやったことだけど。お見合いの時にダメダメだったので、とりあえず花について調べてみた。白薔薇には『深い尊敬』、『無邪気』などという意味があるらしい。あと一応、『相思相愛』という意味もある。

 あー、うん。多分、アニーも俺にある程度は好意は持ってくれていると思うよ?

「じゃあ、リスさんも花を持ってるんだし、リッキーにもお花あげるわね」

 そう言ってアニーは俺にリスを預け、片手で白薔薇を押さえながら、近くに咲く薔薇を見始めた。赤、白、黄色、ピンク…。様々な色の薔薇を見た後、アニーはオレンジ色の薔薇に決めたらしく、そこから一輪選んで俺の頭に乗せてくれた。

 オレンジ色の薔薇には『絆』、『信頼』といった意味がある。

「ありがとう、アニー」

「いいのよ。…やっぱりリッキーにはこういう暖かくて明るい色が似合うわ」

「そうかな?…まぁ、青とかよりもオレンジの方が似合うかもね。大人になっても、高級な素材の服とかは似合わなそうだな…」

 この時代はブルゴーニュ産の黒いシルクが最高級品だ。ブルゴーニュ公である善良公や突進公の肖像も黒い服を纏っているものが存在している。

「うーん、年齢を重ねて威厳が出たらもしかしたら…?」

「かもね…」

 と言ってもこんなテンションだと威厳が出る気がしない。そういう服を着ても似合わなくて自分でも笑ってしまいそうだ。

「でも、ヘンリー義兄上なら似合いそう」

「確かに、兄様なら…」

 二人でヘンリー義兄上が大人になり、高級な衣服を纏う姿を想像する。

「リッキー!アニー!そろそろご飯にしないかー?」

 ヘンリー義兄上に呼ばれ、俺とアニーといつのまにかアニーの肩に乗っていたリスは義兄上と姉上のいる方へ戻って行った。

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