上 下
6 / 11
俺が…キングメーカー(予定)!?

5.ちゃんと勉強もしてるヨ!!

しおりを挟む
1432年8月31日

 リッキーだヨ!!
 鼻血事件(?)から暫く経ち、もう夏も終わり。もっとも、俺のいるバークシャー(ロンドンの西隣)は北緯51度。東京が北緯35度くらいだからめっちゃ北だ。夏なのに20度代で涼しいヨ!クーラーを効かせなくても快適!わーい、転生万歳ー!(医療とか終わってるけど)。

 さて、そんな俺は曇りである今日も籠って勉強をしている。え、ちょっとは外に出ろって?別にいいじゃん。俺、結構インドア派なんだもん(前世から)。え?運動しろ?ナニー?キコエナーイ


 コホン。勉強に集中しよう。俺は今、様々な戦について勉強している。主に百年戦争についてだ。今はエドワード黒太子の初陣、クレシーの戦いについて学んでいる。(前世知識で)イングランドのロングボウ部隊が活躍した、ということは知っているが、その他のことについては詳しく知らない。

「リッキー。クレシーの戦いに関して何か質問はあるか?」

 父上が背後から話しかけてきた。今日は休日なので俺の面倒を見てくれている。

「あ、はい。我が国の軍のロングボウはフランス軍のクロスボウより強いのですか?ここには我が軍が上から射て…、と書かれているのですが…」

 そうだな、と考える素振りを見せる父上。

「まず、違いから話していこうか。我が国のロングボウははっきり言ってクロスボウより原始的だ。その上、引く力もかなりいるため扱いも難しい。だが、羽が多く長いため射程距離が長い。そして扱いが難しいということは、きちんと訓練してきた先鋭たちが使えるということだ。
 一方フランスのクロスボウはまず速度が速く、近距離で当てられたらひとたまりもない。そしてそこまで訓練せずとも扱える。ただ、ロングボウより矢が短い故に、ロングボウより射程距離が短いのだ。
 あと、射ることができる本数が違う。ロングボウは短期間でたくさん、クロスボウは長期間で少数、と覚えておけばいい。
 だから、総合的にロングボウが強いが、射手を失った場合、損失が大きいのもロングボウだ、ということだ」

「へぇ、ありがとうございます、父上」

「じゃあ、次はカレー包囲戦だな。こっちはこの本の方が詳しく書かれている。ヘンリー5世陛下の頃の史料は、義父上ちちうえが書いたり集めたりしたおかげで、我が家にもたくさんあるが、ブルターニュ継承戦争のものとかは多くなくてな…。今度探してくる」

 義父上、と父上が呼ぶのは俺の祖父で母上の父、故人で先代ソールズベリー伯トマス・モンタキュートのことだ。ヘンリー5世に付き従い、活躍を遂げていた中、ジャンヌ・ダルクが現れるより前にオルレアン包囲戦で亡くなっている。近くを砲撃された時に負った怪我の影響だそうだ。

「祖父上の史料ですか。ちょっと気になりますねぇ」

 何か面白いことが書いていないかな、と考え始める。

「残念だがリッキー。面白いことややらかしは書いていない。イングランド視点で戦争の記述があるのみだぞ」

 げ、俺の考えバレてる。そしてイングランド視点ってことは都合悪いこと書いてないだろうな。たくさんあってもどこまでが真実なんだか。

「私自身、義父上のことはよく知らないしな。ヘンリー5世陛下の元で活躍こそしていたが、裏を返すとアリスと共にいなかった、ということになるからな。アリスから義父上の話をあまり聞いたことがない」

 つまり祖父上が書いたものについては信憑性不明、っと。大丈夫かな。

「まぁ、私が知っていることは記しておくし、正確な史料をその時までには探しておくから安心しろ」

「ちゃんとわかってますね、父上」

 俺の心読めるんじゃないかな、この人。父上のことが少しずつわかってきたような気がする。

「わかっていますね、とはなんだ。当たり前だろう」

 父上がクスリ、と笑った。雲が動き、陽の光が入ってきた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...