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俺が…キングメーカー(予定)!?

4.ここは…楽園…?

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1432年5月8日


 リッキーだヨ!!ようやく冬も過ぎて季節は春!(そりゃ五月だからね)。近くの森ではヨーロッパでの春の象徴、ブルーベルが咲いてるヨ!日本でいう桜的存在だね。
 転生して早くも半年近くなり、(え、早すぎ?ナンノコトー?)、外国に旅行中の人みたいに日本(主に食べ物)が恋しくなってきた。
 米とかないんだもん。なんか卵かけご飯とか漬物とかが無性に食べたくなる。せめて、中華料理が食べたい。激辛麻婆まーぼーとか焼売しゅうまいとか。

 つってもないんだけどね。ここ近世に迫る中世ヨーロッパだし。品種改良?なにそれオイシイノ?トマト?ナニソレ?みたいな時代。コロンブスが生まれてすらいないからね!


 さて、今日は叔母が二人訪ねてくるらしい。母上は一人っ子だから父方の叔母たちだ。名前はアンとセシリーという。
 アンさんは母上の一つ下。スタッフォード伯に嫁いでいて、既に何人か子を産んでいる。アンさんの孫はのちにリチャード3世を裏切ることになるバッキンガム公爵だ。
 セシリーさんは母上の七つ下。ヨーク公と婚約している。二人の間にはエドワード4世やリチャード3世などの子が(史実では)いた。つまり現代のチャールズ3世のご先祖様にあたる。歴史上の人物に会うとか俺、すげーな。転生してよかったかも。
 う…。転生だとかなんだとか思っていたら急にブラック企業とパワハラ上司のこと思い出して来た…。胃が痛い…。

「大丈夫、リッキー?」

 透き通ったやや低い声に話しかけられる。二番目の姉、セシリー姉上だ。雰囲気はクールで全体的に大人びているが、意外と優しく面倒見が良い。(個人的に)俺が今、一番信頼している一人だ。

「セシリー姉上…。ちょっと嫌なことを思い出して胃が…」

「昨日お父様に怒られたこと?そんなの気にしなくていいわよ。あの人、口うるさいし。お母様はなんであんなのをいいって思ってるのかしら?」

「ええ…と、まぁ人によって好みって違いますから」

「まぁそうね。それと叔母様方がもういらしたわよ」

「え、もう!?」

「それであなたを探していたんだもの。ジョウン姉様はトムとアリーを連れて行っていたし、どうせジョニーはお母様と居るでしょう。行くわよ」

 ぐいぐい、と腕を引かれ、叔母二人がいるらしき部屋へと連れて行かれる。南向きの、明るい一室で、庭の緑が見える、大変美しい部屋だ。

「あら、シシー、リッキー。遅かったわね」

 子供たちに取り囲まれている母上はドアを開けるなりそう声をかけてきた。シシーは姉上の愛称だ。

「ええ、ちょっと。お久しぶりです。叔母様方」

「こ、こんにちは」

「あらシシーは綺麗になったわね。リッキーはちょっと兄様に似てきたかしら?」

 母上の右前に腰掛ける亜麻色髪の優しげな女性が微笑んで言った。やや年長に見えるので、こちらがスタッフォード伯夫人のアン・ネヴィルだと思われる。

「アンもそう思う?でも最近リッキーの中身は私に似てきたの。でもシシーは変わらないわ。きっと将来シスみたいな素敵な女性になるのでしょうね」

 母上がそう言うと、左前に腰掛ける金髪の女性が恥ずかしそうにして口を開いた。愛称からしてこの金髪の女性の方がセシリー・ネヴィルだろう。

「…まぁ、アリスお姉様」

(あ、可愛い…)

 史実で「レビィ城の薔薇」と呼ばれたセシリー・ネヴィルなだけある美しさだ。前世平凡なアラサーで、今世三歳には眩しすぎる。ちょっと叔母とか呼べない。アンさんもね。

「ふふ、本当に可愛いわね。ヨーク公は幸せ者ね、こんなに可愛いシスと結婚できるなんて」

「も、もう、お姉様ったら。からかわないで。アンお姉様も助けて」

 照れるセシリーさんと微笑むアンさん。楽しそうな母上。女神のように美しい(主観)なセシリーさんと聖母のよう(主観)なアンさんと二人にはやや劣るが妖精のように愛らしく(主観)身内だからか超美しく見える母上。

(ここは、楽園…?)

 地上に楽園を見つけた俺はその眩しさに意識を失った。



──────────────────────────────────────

「…ッキー、リッキー!しっかりなさい!」

「ん…、セシリー、姉上…」

体を揺さぶられ、目を覚ますとセシリー姉上がいた。

「もう、やっぱり体調が悪いんじゃないの?」

「いえ、その…母上や叔母上たちの美しさにやられてしまいました…」

「は?」

 訳がわからない、という顔をする姉上。ヒュゥゥ、と俺たちの間を冷たい風が流れてゆく。

「あら、嬉しいわ、リッキー」

 本当に嬉しそうな顔をする母上。

「褒めてくれるなんてリッキーはいい子ね。うちの子たちも今こんな感じなの。子供はみんな可愛いわ」

 アンさんがおっとりと微笑む。

「子供…」

 未婚のセシリーさんが何かを考え始める。生まれてくるだろう自分の子供についてか。

「ほら、リッキー、トム、アリー。ジョウンとセシリーも。みんないらっしゃい。アン叔母様が抱っこしてあげるわ」

「アリー、だっこー」

真っ先に走って行ったのはアリーだ。アンさんに抱きつく。

「あー、アリーずるーい!僕も!」

トムにも飛びつかれるが、アンさんは上手く受け止める。

「ほら、リッキーも叔母上のところにいらっしゃい。うちは男三人だし貴方より大きいからこのくらい平気よ」

「あ、あの…、『叔母上』じゃなくてアンさんとシスさんとお呼びしてもいいですか?」

「全然いいわよ」

 アンさんが即答する。

「ええ、私も。急にどうしたの??」

 シスさんが尋ねてきた。

「いや、ちょっとこんなに美しい人を叔母とは呼べなくて」

「そんなこと気にしなくていいけれど、好きなようにしてくれていいわ」

「じゃ、僕もそう呼ぶー」

「アン…?シシュ…?」

 俺の真似をしてくるトムと上手く発音できてないアリー。

「平和ねぇ」

 何気なく、母上が呟いた。太陽が、俺たちを明るく照らしていた。
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