精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜

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第四章冒険者事業

旅先の国の兵士達

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   やっと門が見えた。
隣にはうーま、フォレそれから···道中で契約した、火の最高位の精霊、ロラン。
ここまで歩き歩き、ひたすら歩き···。やっとのことで着いた所は立派な門だった。
獣人国の街には門と木の板の塀ぐらいしかなかった。しかし、ここの門はやけに豪華で、周りの塀もガッチリとしている。おまけに塀の中には、遠くからでも見えるほどの大きな建物がずらりと並び、奥には城のようなものがあるのがわかる。
ここってまさか···。

「王都···?」

「正解よ」

フォレの声。
振り向くと、ドヤ顔を決めるフォレ。最近ドヤ顔が多いなぁなんて思いつつ、フォレに尋ねる。

「ねえ、ここって人間の国でしょ?王都が獣人国と近すぎない?それに···なんであんなに兵が居るの?」

獣人国と隣国になってしまうぐらいは仕方ないとして、人間の国の王都と獣人国が近すぎではないだろうか。王都からどんどん兵を出して、いち早く戦争でも起こしそうだ。
あと···門の前に居る大量の兵士はなんなんだ。

「まあ、私達は凄いと思うわよ。確かに王都は近かったけど、一日で国を渡っているんだもの。私達は移動速度が速いし、王都も元々近かったけど···。一言で言えば、私達が凄いから、かしらね。
   あと兵は知らないわ。近くで事件でも起こったんじゃないの?」

私達はやっぱり速かったのか。···確かに明らかに速かったな。
兵は知らないのか。でもとても邪魔だ。人間の国だから目立たないと思っていたが、精霊使いだとバレたらそんな問題じゃない。普通に王宮へ連行されてしまうだろう。まあフォレ達が居るから無理矢理は無いと思うが···目立つのは嫌だ。
というわけで···。

「フォレ、待っててくれる?」

「···はぁ!?何言ってんの!?今度こそ美味しいご飯を食べさせて貰うんだから!」

あ、まだそのこと覚えてたんだ。
でも目立つのは周りの精霊が居るからなんだよなぁ···。全員にここで待機して貰いたい。

「目立つからし、美味しい食べ物も買ってくるから···ね?」

フォレは不満そうに「わかったわよ」と吐き捨てた。
ロランや他の精霊にもそう伝えると、不満そうにしながらも全員承諾してくれた。

でも今回はうーまは連れて行こう。
うーまはとても綺麗だけど、馬は珍しくないし、何より未知の場所にひとりぼっちは心細い。

というわけで精霊を連れていない私は、他人から見れば馬と人間、ただの旅人に見えるはず!それに冒険者なのだからそう警戒されないだろう。

そう自分に言い聞かせながら、門へと近づく。
大丈夫、私は何も悪いことなんてしてない。ちょっと特殊な体質なだけ。目つきが悪いのは仕方ない。兵士だってこれぐらい気にしない。

「こ、こんばんは···」

ぎこちない挨拶を兵士に向ける。私の目つきに驚いたのか、兵士達は驚いて固まっていたが、一人の兵士が「このお方だ!」と叫んだ。
このお方って?私のこと?
意味がわからなかったが、叫んだ兵士の顔を見てふと思い出す。

確かこの人はー。

ーあの精霊使いの護衛をしていた兵士だったはず···。

···なんだか嫌な予感がしてきた。

「おお!この方が精霊使い様か!」

「最高位の精霊様が居るのではないのか?人違いでは?」

「いや、そこの馬とこの目つきは間違いない!魔法使いにでも見てもらえば数百の精霊様がいらっしゃるはず!」

和気藹々とした兵士達。物凄く嫌な予感がする。
「ではでは」と馬車を用意し、当たり前のように私を乗せようとする兵士達に透かさずストップをかける。

「いや、どこに連れて行こうとしているんですか!?」

「どこって···王宮ですが」

「いやいやいや。その精霊使い様とかとは一切関係ありません。人違いです」

「いえしかし···。私のことを覚えていませんか?崖道で出会った···」

「いえいえ崖道で精霊使い様などには会っていません。私はただの一般人です。ただの冒険者なので門を潜らせてください」

そう、今の私は一般人。魔法使いでもなんでも連れて来なさい。どうせ精霊なんて居ないのだから。
そう心の中で勝ち誇っていると、今度は兵士からストップがかかった。

「少しおかしな箇所がございますね···。私は『崖道で出会った』としか発言しておりません。何故精霊使い様が居たことを知っておられるのですか?そもそもただの一般人があの崖道から徒歩で···馬が居たとしても、このような短時間で来れるとは思えないのですが」

···まずい。

「い、いや~精霊使い様だなんて言っておりませんよ。あはは。精霊、じゃなくて、動物使い、そう動物使いと言ったのです。が、崖道も遠い所ではなくて、そこら辺の山です。ホント困っちゃいますよ」

いや説明下手くそか。自分でも呆れてしまう。
咄嗟に言ってしまったが、動物使いなんて職業あるのか。

「動物使い?獣使いのことでしょうか。いやそれでもおかしいてますよね?
    どこから獣使いの話題が出てきたのでしょう。それに周りには街や草原くらいしかないはず···」

痛い所を突かれる。見かけによらず鋭いな。
でも本当にどうしよう。私はただ王都を巡り歩きたいだけなのだ。なんでいちいち面倒事になるんだ。

このまま言い争っていても見兼ねたフォレが乱入してくるだろう。しかし言いなりになって王都へ連れて行かれるわけにもいかない。
私は頭を必死に働かせ、なんとか打開策を生み出そうとする。だが思いつかない。無理でしょこんなの。

「あなた達邪魔なんだけど」

私が諦めているといつものパターンでフォレ登場。隣にはロランも居る。
突然の精霊に驚いた兵士達は固まっていたが、目の前に居るものが最高位の精霊だと気がついたのか、その場に跪いた。何もそこまでしなくても···。

しかし、一人立っていたさっきの兵士は、丁寧にお辞儀をすると、コホンと咳払いをして話を始めた。

「これはこれは最高位の精霊様。おや、そちらの···なんとまたしても最高位の精霊様ですか。それも火の···。いえ、失礼致しました。宜しければ王宮へご招待させて頂きたいのです。少し国王陛下とお話をさせていただく程度でいいのです。宜しいでしょうか?」

「宜しいわけないでしょ。この子は精霊使いだけど一般人よ?この国は精霊使いが国に入ると王宮へ案内される制度でもあるのかしら?」

「い、いえ、ございません。しかし常識的なことでもあります。精霊使い様は一国の王よりも権力があるとも言われるお方。そのような方が同じ権力者とお会いになるのは当然のことかと」

「こっちの方が権力あるなら王が出迎えなさいよ。それこそ無礼ではないのかしら。『少し話を』とか言って、この子のことをこの国が保護でもする気でしょ?旅人なんだからここに長く居座る気はないわよ」

お互い一歩も譲らない。悔しいが流石フォレといった感じだ。
ロランは飽きているのか欠伸をして眠そうにしている。少しは興味を持て。

しかし体制としてはこちらが有利なはずだ。何よりそんな権力の高い奴に無理矢理連れて行くなんて出来ないのだから。まあここまで大勢の兵士を連れて門の前でウエルカムしていたのに行かないというのも私の良心が痛むが···。勝手にそっちが始めたことだ。うん。

「···し、しかし知っての通り最近この国の精霊使い様が居なくなられました。国は精霊使い様がいらっしゃるだけで繁栄します。しかしその精霊使い様が突然居なくなられたことで国王陛下は納得がいかないだけなのです。ここに居ろと言っているわけではないのです。説得···本当に少し話をしていただけるだけで良いのです···」

だんだんと声が小さくなってきている兵士。フォレの威圧に自信が無くなってきているのだろう。フォレがくるりと私の方へ振り返る。

「どうする?面倒くさいからあとはもうアリサに任せるわ」

急に押し付けないでください。
どうすればいいのだろう。確かに精霊使いの資格を消したのは私達だ。正確にはフォレだが。
こちらにも非はあるが、明らかにあちらの方が無礼だった。断っても問題ないはずだが···。

「···わかりました。少し話すだけですよ」

私がそう呟くと、跪いていた兵士達も一気に喜び始めた。
フォレが「いいの?」と言ってきたが、私は小さく頷いた。
面倒くさいが、罪悪感を残して後々後悔するくらいなら、その国王とやらにきっちり話を付けようじゃないか。



旅先不運が起きた私は大きくため息をついた。
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