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第三章異世界の常識
バレました
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「アリサ」
黒い声。バッグの中からだ。そしてこの声は···。
「なんでステーキ私の分も取らなかったの···?」
バッグの中からボソボソと聞こえてくるフォレの声。まずい。これはガチでキレてるやつだ。
「精霊ってステーキ食べるのかなぁ···って···」
「食べなくても死なない。ていうか不老不死みたいなもんだけど、一応味覚ぐらいあるんだから美味しいお肉食べたかったのになぁ···?」
絶対怒ってる。素直に「すみませんでした」と謝り、「そういえば」とフォレに質問する。
「フォレ、私の顔見た時怖いとか嫌な奴とか思わなかった?」
あの狐人族の女性のように、フォレは私を見ても驚かなかった。
うーまのような動物や、下級の頭が宜しくない精霊ならまだしも、フォレは大人の人間と変わりないくらい、いや、それ以上の知識などを持っているはずだ。
私のコンプレックスをものともしないフォレが気になる。
「アリサ、そんなこと気にしてたの?私はアリサの見た目なんか気にしない。大事なのは中身よ。
生まれつき怖い顔で優しい人と、笑顔で醜い考えをしている人。どっちがいいかなんて分かりきったことでしょう?」
フォレはあたりまえのように淡々と喋るが、私はフォレの言葉に大きな衝撃を受けていた。
これまで私の顔を見て怯える人々に、どれだけ見た目ではなく中身を見てほしいと思ったことか。そんな思いをフォレが実現していた。
「フォレ···」
「何よ?」
「大好き···」
「···はぁ!?な、何よ突然!べ、別に私もアリサのこと嫌いではないんだから!」
思わず出た私の言葉に動揺するフォレ。こういうところがかわいい。
異世界に来てあの国で最悪な扱いを受けたが、一方でシャルシィ、うーまや魔物達、冒険者四人。そしてフォレのように、優しい人に会えて良かったと思っている。
特にフォレは何も知らない赤子同然の私に、この世界のことを一から教えてくれた。なんだかんだ言って、根はとても優しい精霊だ。
「な、何笑ってるのよ。食料買いに行くんでしょ?早く行きなさい」
フォレに言われ、「はーい」と返事をする。
食べ物屋や服屋などを探していると、商店街のような所に出た。店がずらりと並んでいる。
食べ物屋も多くあり、とりあえず一番近い店に足を運んだ。
「らっしゃい!」
威勢のいいおっちゃんの声。耳を見るに、犬人族だろう。
店に来たはいいが、何を買おうか。長旅をすると思うし、手頃なものをたくさん買いたい。
商品の食べ物を見ると、果物や野菜が多い。八百屋のようなものだろう。地球でもあったようなものもあれば、不思議な形をしたものもある。
とりあえず口に合いそうなものを選ぶことにした。
「じゃあこれと、これと、あとは···」
美味しそうな食べ物を片っ端から選んでいく。といっても美味しそうなものばかりなので、かなりの量だ。
おっちゃんも「随分食べるんだね···」と衝撃を受けていた。
「金貨一枚と銀貨八枚だ。持ち合わせてるか?」
高いのだろうが余裕だ。私は額ぴったり出す。
「あ、ありがとな···」
少しぎこちない感謝の言葉を貰う。
そそくさと店を出て、服屋を目指す。こんな大きいローブでは怪しまれる。それにローブの中の服も歩き回っていたのでボロボロだ。
「いらっしゃいませ!どんな服をお探しですか?」
威勢のいい女性の声。獣人はみんな元気だなぁ。
あの狐人族の女性より少し年上のようだ。そして種族は···猫人族だろうか。
服はあまり目立たないのがいい。旅にもあまり邪魔にならない程度の。
「じゃあ普通の普段着で」
「分かりました。試着室はあちらになります。腕によりを掛けてお客様の魅力を引き出す服を厳選致します」
さっきの店などとは違い、丁寧な口調だ。試着室もあるのか。小さな店だが、ありがたい。
女性が「ローブをお預かりします」と言うので、私は特に何も考えず、深いフードを取る。
そう、油断していたのだ。
女性が呆気に取られた様子で私をまじまじと見る。
「耳が、無い···。獣人じゃない···。まさか········人間?」
どうしてそんなにも私を見るのだろうと思っていたが、「人間」と呟いた女性の言葉で今の私の置かれている状況が分かった。
まずい。やっと気づいたが、時すでに遅し。私が言い訳をしようと「あの···」と声を掛けようとすると、女性はさらに怯えて私を見るだけだった。
そりゃそうだろう。自分で言うのもなんだが、自分達を奴隷にするような奴が、自分を鋭い目つきでいるのだ。私は睨んではいないのだが、そう見えてしまう。
ならどうすれば良いか?···どうにもならない。
「に、人間···!誰か、助けて···。誰か···!」
女性はへたりと座り込み、営業スマイルも忘れてガクガクと震えていた。
しかし助けなど無用。私は別に何もしないし、既にたくさんの獣人が集う商店街。
「え?あれ···人間?」
「嘘でしょ?なんでこんな所に···」
「何しに来たんだ···。この街に何かしたらただじゃおかねぇ···!」
あちらこちらから私のことと思われる人間の悪口が聞こえる。
「こ、こんな店に、金目のものはないですぅ···。ご、ごめんなさい···殺さないで···」
怯える女性。もちろん私に人を殺す勇気はない。だから本当、この女性に哀れみしか感じない。
「人間!人間は何処だ!」
男性の声。声のする方を見ると、身体のガッチリとした、兵士のような獣人が二人ほど走って来ていた。
これはやばい。
獣人の兵士達は私を見つけると、明らかに敵意むき出しの目で睨んできた。
「そこの人間の女!この街に何をしに来た!少し話を聞かせて貰う。来い!」
そう言い、私の腕を掴み、無理矢理連れて行こうとする兵士。
もしかして何かやらかした人が警察に「署まで来て貰おう!」と連行されるやつだろうか。嫌だ!私は何もしていない!
しかし私の話も聞かないで腕を引っ張るような奴に何を言っても無駄。私の経験がそう告げている。
この兵士達には腹が立つが、ここは大人しく連行されよう···。
そう思った矢先ー。
「待ちなさい。黙っていようと思ったのだけれど、腹が立って仕方ないわ」
凛とした声。
いつの間にバッグから出たのだろうか。私と兵士の間にはフォレがいた。そしてフォレは冷たい目で兵士を見る。
「せ、精霊?馬鹿な···俺に魔力など少ないのに···。もしかして···森の精霊様!?」
「馬鹿か!最高位の森の精霊様がこんな場所にいるわけないだろ!これはきっとあの女の幻覚魔法だよ!」
「へぇ、あなた達にはこれも幻覚に見えるのね」
フォレが兵士達に吐き捨てたように言い、指を上の方へ上げる。
すると周りの草木が急速にメキメキと成長し、兵士達や周りの人達は悲鳴をあげた。
「し、失礼致しました!こ、これはこれは森の精霊様!そこの女性と何か関係がお有りでしょうか?」
「関係あるかって?ありまくりよ。この子は私の契約者で、精霊使いなんだから」
ガクガク震えていた兵士も、フォレの「精霊使い」という一言で動きが止まった。決して安心したという理由などではない。本当に意味が分からないといった顔をする兵士は、ようやくその言葉の意味に気がついた···と思ったら、私に向き直り、勢いよくその頭を深々と下げた。
「誠に申し訳ございませんでした!せ、精霊使い様だとは知らず···数々の無礼を···!」
言葉が震えているのが分かる。
本当に止めてほしい。大の男にこんな惨めな格好させていると思うと···呆れを通り越して申し訳なく思えてくる。
「顔を上げてください。もう宜しいです。私も少々腹を立たせましたが、周りに大勢の人がいるのですよ。兵士としてのプライドを忘れないでください」
やっぱりムカついていたので、少しキツい物言いになってしまった。
頭を下げていたので顔は見えなかったが、「はい···」という情けない涙ぐんだ声が聞こえてきた。
フォレも怒っていたようだが、「はあ」と兵士に呆れたようにため息をついた。まったく。自分のことでもないしそこまで怒らなくてもいいのに。
「おかーさん、なんでにんげんがせいれいつかいさまなの?」
幼い子供の声。
声の主を探すと、恐らく犬人族の幼い男の子が私を指差して言っていた。傍にいた母親らしき女性は慌てて男の子の口を抑える。しかし、私が見ていたことに気づいたようで、真っ青な顔で兵士同様、私に深々と頭を下げてくる。
「申し訳ありません!どうかこの子を殺さないでください!」
「おかーさん、なんでこんなにんげんがせいれいつかいさまなの?」
「アンタは黙っていなさいっ!」
「え?だって、みんなにんげんがきらいでにくいのに、にんげんがみんなのあこがれのせいれいつかいさまなんておかしいでしょ?にんげん、このまちにわるいことをするな!いなくなれ!ぼくがみんなをまもるんだから!」
「こら!本当に、も、申し訳ありません!この子を···いえ、この街を見逃してください!」
男の子が私にそう言った途端、真っ青になる人々。その子の母親はこの子を殺さないでという。
こんなモフモフの可愛い健気な男の子、殺すわけがない。ましてや街なんて···。
私が男の子に近づくと、母親はさらに顔を青くする。
「君、偉いね。大丈夫、私は何もしないから」
できるだけ怖がらせないようにしゃがみ、笑って言う。男の子は驚いた顔をして、周りの人達はほっとした様子を見せた。
「あ、あの···もし良ければ王宮に来ていただければ···ぜひ国王陛下とお話しを···」
さっきと打って代わり、小声で兵士達が言う。私はあからさまに嫌な顔をする。あたりまえだ。面倒くさい。
「嫌よ」
フォレがきっぱりと言う。
「し、しかし···」
「何か異論でも?」
「な、何もございません!」
私はこのやり取りもなんだか面白く思えてしまう。まあ、兵士達は必死なのだが。
「アリサ、服買うんでしょ?」
フォレに言われ、慌てて服屋に戻ると、怯えた猫人族の女性がいた。
うん、悲しいな。
黒い声。バッグの中からだ。そしてこの声は···。
「なんでステーキ私の分も取らなかったの···?」
バッグの中からボソボソと聞こえてくるフォレの声。まずい。これはガチでキレてるやつだ。
「精霊ってステーキ食べるのかなぁ···って···」
「食べなくても死なない。ていうか不老不死みたいなもんだけど、一応味覚ぐらいあるんだから美味しいお肉食べたかったのになぁ···?」
絶対怒ってる。素直に「すみませんでした」と謝り、「そういえば」とフォレに質問する。
「フォレ、私の顔見た時怖いとか嫌な奴とか思わなかった?」
あの狐人族の女性のように、フォレは私を見ても驚かなかった。
うーまのような動物や、下級の頭が宜しくない精霊ならまだしも、フォレは大人の人間と変わりないくらい、いや、それ以上の知識などを持っているはずだ。
私のコンプレックスをものともしないフォレが気になる。
「アリサ、そんなこと気にしてたの?私はアリサの見た目なんか気にしない。大事なのは中身よ。
生まれつき怖い顔で優しい人と、笑顔で醜い考えをしている人。どっちがいいかなんて分かりきったことでしょう?」
フォレはあたりまえのように淡々と喋るが、私はフォレの言葉に大きな衝撃を受けていた。
これまで私の顔を見て怯える人々に、どれだけ見た目ではなく中身を見てほしいと思ったことか。そんな思いをフォレが実現していた。
「フォレ···」
「何よ?」
「大好き···」
「···はぁ!?な、何よ突然!べ、別に私もアリサのこと嫌いではないんだから!」
思わず出た私の言葉に動揺するフォレ。こういうところがかわいい。
異世界に来てあの国で最悪な扱いを受けたが、一方でシャルシィ、うーまや魔物達、冒険者四人。そしてフォレのように、優しい人に会えて良かったと思っている。
特にフォレは何も知らない赤子同然の私に、この世界のことを一から教えてくれた。なんだかんだ言って、根はとても優しい精霊だ。
「な、何笑ってるのよ。食料買いに行くんでしょ?早く行きなさい」
フォレに言われ、「はーい」と返事をする。
食べ物屋や服屋などを探していると、商店街のような所に出た。店がずらりと並んでいる。
食べ物屋も多くあり、とりあえず一番近い店に足を運んだ。
「らっしゃい!」
威勢のいいおっちゃんの声。耳を見るに、犬人族だろう。
店に来たはいいが、何を買おうか。長旅をすると思うし、手頃なものをたくさん買いたい。
商品の食べ物を見ると、果物や野菜が多い。八百屋のようなものだろう。地球でもあったようなものもあれば、不思議な形をしたものもある。
とりあえず口に合いそうなものを選ぶことにした。
「じゃあこれと、これと、あとは···」
美味しそうな食べ物を片っ端から選んでいく。といっても美味しそうなものばかりなので、かなりの量だ。
おっちゃんも「随分食べるんだね···」と衝撃を受けていた。
「金貨一枚と銀貨八枚だ。持ち合わせてるか?」
高いのだろうが余裕だ。私は額ぴったり出す。
「あ、ありがとな···」
少しぎこちない感謝の言葉を貰う。
そそくさと店を出て、服屋を目指す。こんな大きいローブでは怪しまれる。それにローブの中の服も歩き回っていたのでボロボロだ。
「いらっしゃいませ!どんな服をお探しですか?」
威勢のいい女性の声。獣人はみんな元気だなぁ。
あの狐人族の女性より少し年上のようだ。そして種族は···猫人族だろうか。
服はあまり目立たないのがいい。旅にもあまり邪魔にならない程度の。
「じゃあ普通の普段着で」
「分かりました。試着室はあちらになります。腕によりを掛けてお客様の魅力を引き出す服を厳選致します」
さっきの店などとは違い、丁寧な口調だ。試着室もあるのか。小さな店だが、ありがたい。
女性が「ローブをお預かりします」と言うので、私は特に何も考えず、深いフードを取る。
そう、油断していたのだ。
女性が呆気に取られた様子で私をまじまじと見る。
「耳が、無い···。獣人じゃない···。まさか········人間?」
どうしてそんなにも私を見るのだろうと思っていたが、「人間」と呟いた女性の言葉で今の私の置かれている状況が分かった。
まずい。やっと気づいたが、時すでに遅し。私が言い訳をしようと「あの···」と声を掛けようとすると、女性はさらに怯えて私を見るだけだった。
そりゃそうだろう。自分で言うのもなんだが、自分達を奴隷にするような奴が、自分を鋭い目つきでいるのだ。私は睨んではいないのだが、そう見えてしまう。
ならどうすれば良いか?···どうにもならない。
「に、人間···!誰か、助けて···。誰か···!」
女性はへたりと座り込み、営業スマイルも忘れてガクガクと震えていた。
しかし助けなど無用。私は別に何もしないし、既にたくさんの獣人が集う商店街。
「え?あれ···人間?」
「嘘でしょ?なんでこんな所に···」
「何しに来たんだ···。この街に何かしたらただじゃおかねぇ···!」
あちらこちらから私のことと思われる人間の悪口が聞こえる。
「こ、こんな店に、金目のものはないですぅ···。ご、ごめんなさい···殺さないで···」
怯える女性。もちろん私に人を殺す勇気はない。だから本当、この女性に哀れみしか感じない。
「人間!人間は何処だ!」
男性の声。声のする方を見ると、身体のガッチリとした、兵士のような獣人が二人ほど走って来ていた。
これはやばい。
獣人の兵士達は私を見つけると、明らかに敵意むき出しの目で睨んできた。
「そこの人間の女!この街に何をしに来た!少し話を聞かせて貰う。来い!」
そう言い、私の腕を掴み、無理矢理連れて行こうとする兵士。
もしかして何かやらかした人が警察に「署まで来て貰おう!」と連行されるやつだろうか。嫌だ!私は何もしていない!
しかし私の話も聞かないで腕を引っ張るような奴に何を言っても無駄。私の経験がそう告げている。
この兵士達には腹が立つが、ここは大人しく連行されよう···。
そう思った矢先ー。
「待ちなさい。黙っていようと思ったのだけれど、腹が立って仕方ないわ」
凛とした声。
いつの間にバッグから出たのだろうか。私と兵士の間にはフォレがいた。そしてフォレは冷たい目で兵士を見る。
「せ、精霊?馬鹿な···俺に魔力など少ないのに···。もしかして···森の精霊様!?」
「馬鹿か!最高位の森の精霊様がこんな場所にいるわけないだろ!これはきっとあの女の幻覚魔法だよ!」
「へぇ、あなた達にはこれも幻覚に見えるのね」
フォレが兵士達に吐き捨てたように言い、指を上の方へ上げる。
すると周りの草木が急速にメキメキと成長し、兵士達や周りの人達は悲鳴をあげた。
「し、失礼致しました!こ、これはこれは森の精霊様!そこの女性と何か関係がお有りでしょうか?」
「関係あるかって?ありまくりよ。この子は私の契約者で、精霊使いなんだから」
ガクガク震えていた兵士も、フォレの「精霊使い」という一言で動きが止まった。決して安心したという理由などではない。本当に意味が分からないといった顔をする兵士は、ようやくその言葉の意味に気がついた···と思ったら、私に向き直り、勢いよくその頭を深々と下げた。
「誠に申し訳ございませんでした!せ、精霊使い様だとは知らず···数々の無礼を···!」
言葉が震えているのが分かる。
本当に止めてほしい。大の男にこんな惨めな格好させていると思うと···呆れを通り越して申し訳なく思えてくる。
「顔を上げてください。もう宜しいです。私も少々腹を立たせましたが、周りに大勢の人がいるのですよ。兵士としてのプライドを忘れないでください」
やっぱりムカついていたので、少しキツい物言いになってしまった。
頭を下げていたので顔は見えなかったが、「はい···」という情けない涙ぐんだ声が聞こえてきた。
フォレも怒っていたようだが、「はあ」と兵士に呆れたようにため息をついた。まったく。自分のことでもないしそこまで怒らなくてもいいのに。
「おかーさん、なんでにんげんがせいれいつかいさまなの?」
幼い子供の声。
声の主を探すと、恐らく犬人族の幼い男の子が私を指差して言っていた。傍にいた母親らしき女性は慌てて男の子の口を抑える。しかし、私が見ていたことに気づいたようで、真っ青な顔で兵士同様、私に深々と頭を下げてくる。
「申し訳ありません!どうかこの子を殺さないでください!」
「おかーさん、なんでこんなにんげんがせいれいつかいさまなの?」
「アンタは黙っていなさいっ!」
「え?だって、みんなにんげんがきらいでにくいのに、にんげんがみんなのあこがれのせいれいつかいさまなんておかしいでしょ?にんげん、このまちにわるいことをするな!いなくなれ!ぼくがみんなをまもるんだから!」
「こら!本当に、も、申し訳ありません!この子を···いえ、この街を見逃してください!」
男の子が私にそう言った途端、真っ青になる人々。その子の母親はこの子を殺さないでという。
こんなモフモフの可愛い健気な男の子、殺すわけがない。ましてや街なんて···。
私が男の子に近づくと、母親はさらに顔を青くする。
「君、偉いね。大丈夫、私は何もしないから」
できるだけ怖がらせないようにしゃがみ、笑って言う。男の子は驚いた顔をして、周りの人達はほっとした様子を見せた。
「あ、あの···もし良ければ王宮に来ていただければ···ぜひ国王陛下とお話しを···」
さっきと打って代わり、小声で兵士達が言う。私はあからさまに嫌な顔をする。あたりまえだ。面倒くさい。
「嫌よ」
フォレがきっぱりと言う。
「し、しかし···」
「何か異論でも?」
「な、何もございません!」
私はこのやり取りもなんだか面白く思えてしまう。まあ、兵士達は必死なのだが。
「アリサ、服買うんでしょ?」
フォレに言われ、慌てて服屋に戻ると、怯えた猫人族の女性がいた。
うん、悲しいな。
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