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第四章冒険者事業

ギルドマスターの説明①

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···何故ここまでバレてるんだ。

私はこの大柄な男性に「精霊使い」の「アリサ」ということが何故かバレている。
本当に何故なんだ。私はなにもしてない!···わけではないけど。

でも「精霊使い」っていう職業で冒険者登録したんだからバレてるも何もないかな?
あれこれ考えていると、男性がゴホンと咳払いをして、自己紹介を始めた。

「···すみません、私はここのギルドマスターのアーヴィルと申します。えー、アリサ様、あなた様のことは獣人国のギルドマスターから聞いております。『精霊使い様が冒険者登録をしに来たのだが、紋章を発行出来なかった』と。正直信じられる話では無かったのですが···」

「ちょ、ちょっと待ってください」

私は男性の話を止める。疑問点があるのだ。

「あの、獣人国からこの場所まで、結構な距離がありますよね?どうやってここまで私の情報が···」

そう、今日登録したばかりなのにここまで情報が早く来るとは思えない。私達は転移魔法も使っているのでここまでこれたが、馬車でも難しいだろう。まさか伝書鳩などでもいるのだろうか。いや、それでも厳しいはず···。

「あ、獣人国の上級魔法使いの契約した精霊様のおかげですよ」

「え?獣人国に精霊と契約してる方がいるんですか?」

私はすっとんきょうな声をあげてしまった。少し恥ずかしくなっていると、アーヴィルさんは笑って説明してくれた。

「少なくとも魔力が人間より多い獣人の国、獣人国は上級魔法使いが多くいます。獣人国にはなんと精霊様と契約した獣人が一人いるのです」

「···一人?」

獣人国全体でたった一人?少なすぎではないだろうか。

「···精霊使い様にとって、精霊様と契約することは難しいことではないのかもしれません。しかし、精霊様と契約することは魔法使いにとって最大の名誉と言っても過言ではありません。上級魔法使いであり精霊様と契約している者は賢者などと呼ばれておりますし」

な、なるほど。前にフォレから聞いて凄いなーとは思っていたが、そこまでとは···。
なんだか普通にポンポン契約しているせいか、申し訳ない気持ちになる。
気づかれない程度のため息をつくと、アーヴィルさんが「でも」と話を続けた。

「精霊使い様は本当に別の次元です。たまに精霊使い様の良くない噂も聞きますが、魔法の源、そしてその魔力の源を生み出す精霊様に好かれる方です。世界に羨まれないわけがありません。それと同時に、そんな素晴らしい精霊使い様に近づこうとする悪い輩が現れないよう、国は精霊使い様を保護します。その他にも自分達が有利になることは山ほどあるんですけどね」

私が頷きながら聞いていると、アーヴィルさんが一息ついた。

「話が長くなりそうですね。まず、ここまでアリサ様の情報が素早く伝わったのは、他でもない上級魔法使いとその精霊様のおかげです。アリサ様は冒険者登録なさるのですよね?本当に良いのですか?」

私は「はい」と頷いた。私が精霊使いだから一応言っているのだろう。国に保護じゃなくてまさかの冒険者登録で良いのか的な意味で。
でも私は王宮でぼんやり過ごすくらいだったら、この未知の世界を冒険したいと心から思う。

そんな私の意思が伝わったのか、アーヴィルさんは微笑み、ゆっくり頷いた。

「···わかりました。では、ギルドから支給されるバッジの紋章でよろしいでしょうか」

「あ、そういえば紋章がなんとか言ってましたね。他にも何かあるんですか?」

「はい。一般的には冒険者ギルドから、その者が本当に冒険者であるか、または何ランクであるかなどを示すものとしてあります。バッジだと不自由な方やオシャレな方の為に、最近はギルドでできるだけ装身具を加工し、紋章として使う所もあるらしいです。あ、紋章として扱う分には問題ありませんよ」

「でも、失くしたり奪われたりしませんか?」

私が奪われる可能性はかなり低いと思うのだが。

「少なくとも悪用される心配はありません。それにまた支給すればいい話です。···きっとアリサ様はランクが上がった後無くした場合、そのランクはどうなるのか、ということを知りたいのですよね?」

「え?あぁ、まあ、はい」

まだそのランクのこともよくわからないのだが···。まあ話を聞こう。

「獣人国のギルドが一番にやらかしたのはコレです。今回は『精霊使い様』という独特すぎる職業の為、すぐに見つかりましたが···」

いやたぶん私が精霊使いだからやらかしちゃったんだろうけどね。

アーヴィルさんがコレと言って指を指したのは小さな水晶玉だった。
不思議だったのが、獣人国の街にあった、犯罪者を見つける水晶玉より明らかに小さく、透明で透き通っており、ガラスのようなものだったのだ。

アーヴィルさんが「触れてみてください」と言うので、水晶玉にそっと指先から触れてみた。すると触れた部分から何やら彩色が広がっていった。透明だった水晶玉が、どんどん鮮やかな色で染まっていく。それに色は水色、黄緑、橙色、桃色など···混色されているわけではない、グラデーションと言った方が近い彩りだった。とにかく、水晶玉がどんどん彩色されていったのだ。

唖然とする私にアーヴィルさんが驚いたように、少し嬉しそうに言う。

「この鮮やかな様々な色···美しいですね。水晶玉に彩られた色は、自分の性格や感情を表すとも言われているんですよ。橙色は元気な性格、青色は冷静などがあります。しかしここまで鮮やかな···多くの色が出たのは私も初めて見ました。きっと貴方様は感情豊かで純粋なのでしょう」

私を尊敬の眼差しで見るアーヴィルさん。しかし私は「は、はぁ···」という微妙な返事を返した。正直自分が純粋だとはとても思えない。フリーデ国のあの二人のことは当然憎んでいる。感情豊かなのかはわからないが、まあいちいち怒ったり驚いたり喜んだりする私は喜怒哀楽が激しいのだろう。

「話を戻します。冒険者登録の際に大切なことは、今現在アリサ様が行っている、『水晶玉に触れる行為』です。他にも方法はありますが、これが一番手早いことかと。既にこの水晶玉はアリサ様の物です。紋章が失くなってしまった場合、持ち主がこの水晶玉に触れると、水晶玉が反応し、その者が本当に持ち主か確かめることができます。なのでこの水晶玉はギルドで管理をさせていただきます」

説明を聞き、私はもう一度水晶玉をまじまじと見つめる。
こんな小さな物にそんな効果があるのか。はっきり言って本当に凄い。これぞまさに異世界という感じだ。

「他に質問はございますか?」

「あ、じゃあランクについて教えてください」

「はい。ランクはEからSまであります」

「え?」

思わずそう言った私に「どうかされましたか?」と声をかけたアーヴィルさん。
私はアーヴィルさんが当たり前のように言う言葉に疑問を浮かべた。
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