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第二章
第二十五話 光芒
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あのベルナデッタという侍女に止められ、結局シュテルと話すことができなかった。その後私はいつものようにお菓子を食べたりシュテルを見習って少し予習をしてみたりしていたが、頭の中は今朝のお姉様との会話やベルナデッタとの会話のことで頭がいっぱいだった。
そしてそのことを考えていると、もやもやとしていてはっきりしない感情が生まれてくる。漠然としているが、それは焦りや何か嫌な予感を感じたものだった。だがそんな曖昧な状態で、この感情が解放される術など思いつきもしない。
とりあえず、明日またシュテルを訪ねてみよう。邪魔になるようだったら、その明日また訪ねてみよう。昨日話していた限り、私のことを嫌ってはいないはずだからその内また話せるだろう。
よし、そうと思えば明日に備えて今日はもう寝よう。
そう考えていると部屋の外からノックの音が聞こえてきた。アンナが寝る前の挨拶に来たのだろうか。そう思って声をかけると予想通りアンナが「失礼します」と入ってきた。しかし彼女の顔色は予想よりずっと暗い。
「あ…ミティア様、もうおやすみになりますか?では私はしばらく部屋の外におりますので、何かありましたらお申し付けださ――」
「アンナ、何かあったの?」
私が声をかけると、アンナは明らかにギクッとした様子で黙ってしまう。アンナはしばらくそうしてうつむいていたが、アンナの言葉を待つ私に引く気がないとわかったのか、重そうに口を開く。
「……少し前に、シュテル様の乳母だというベルナデッタと名乗る方がいらっしゃったんです」
ベルナデッタがここに?どういうことだ、何か用事でもあったのだろうか……。
そう不思議に思っていると、アンナはまた少し黙って口を開いた。
「……そして、その方がおっしゃったんです。申し訳ないがシュテル様は王族嫌いだから……そのミティア様は、もうシュテル様に近付かないで欲しいと」
「……え?」
頭が真っ白になる。アンナの顔色はさらに悪くなってしまうが、私も他人を気遣う余裕がなくなっていた。
「あの乳母が…そう言ったの?いや、もしかしたらその人は何か誤解しているのかもしれないわ。明日…いや今すぐにでも聞いてみなきゃ…」
「…ぅ…です、が…」
アンナが顔を伏せて何かをこらえるような声を出す。私は嫌な予感を感じたが、確認しなければならないと決心し、アンナに優しく声をかける。
「アンナ、ごめんね。私は大丈夫だから…何があったのか全部教えてくれる?」
「……はい。先ほど、数人の侍女たちがやってきて言ったんです。私たちはシュテル様のお部屋の近くに配属されている侍女で、昔からシュテル様が家族を避けているのを知っている…それなのに昨日は突然ミティア様にお茶に誘われ、断れなかったと…そしてその後…『辛かった』とシュテル様がおっしゃっていたと。そして、その……『もう会いたくない』…とも」
頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。一瞬足元がふらついたが、アンナを見てなんとか堪える。アンナの震えようを見る限り、本当はもっと酷いことを言われたのだろう。私の代わりにその侍女たちから暴言を吐かれたのかもしれない。それでもきっと、私のことを想いながら伝えてくれたのだ。
「アンナ…辛い思いをさせたわね、ごめんなさい。でも教えてくれてありがとう」
「そんな…!謝らないでください、ミティア様は何も悪くありません‼」
アンナは優しい言葉をかけてくれるが、私はとてもそうとは思えなかった。
「とりあえず、今日はもう寝るわね。私は大丈夫だから…あまりアンナも気に病まないで」
「ミティア様…はい、わかりました…。しばらくは部屋の外にいるので、何かあれば些細な事でもすぐにお知らせくださいね…それでは、おやすみなさいませ」
「ええ、おやすみ」
ギィ…と静かに音を立てて扉が閉まる。私はそれを確認するとドサッとベッドに倒れた。そして近くの枕を乱暴に手に取る。
「……ぅぅ」
顔を枕にぐっと埋める。この情けない声を外にいるアンナに聞かせたくない。自分の溢れる感情を目の前の何の罪もない枕に押し付ける。綺麗だった枕は手に力を入れすぎているせいでしわがつき、顔を押し付けている部分は濡れていた。
これぐらいのこと、前世で普通の人間として生きていた時、たくさん経験したはずなのに。やはり子供の体だから感情の制御ができなくなっているのだろうか。
悔しい。
今一番大きな感情はそれだった。シュテルの本当の気持ちへの悲しみもあったが、私は悔しくて悔しくて堪らなかった。
いくらシュテルが大人びた子だからって、何も気付かずに気を遣わせていたこと。よく考えればわかることなのに、人のことを考えず彼の邪魔をしていたこと。自分のせいでアンナにまで迷惑をかけてしまったこと。それらを今になって理解した自分が情けなくて、とにかく悔しかった。
「最低よ…私。お姉様に鈍感だなんて言う資格なかったじゃない……」
顔を上げると目からぽろっとしずくが零れ落ちる。そしてそのしずくさえ煩わしい。
駄目だ泣くな。被害者は私じゃなくてシュテルなんだから。私は本当は大人なんだからみっともなく泣くな。そもそも私にそんな資格はない。
――それに、私は前世で彼に対して償いきれない罪を犯したから、これはきっとその罰なんだ。
―――――
「それで、シュテルとはどうなったんだ?」
体がピシッと石のように固まる。
「ど、どうって…?」
「数日前シュテルと庭で茶会を開いてから、また何か二人で会って話したりはしたのか?」
「えっと…シュテルは勉強熱心だから、私と話せる時間がなかなか見つからないみたい」
お姉様は私の戸惑った様子に疑うような目をしたが、返ってきたのは「そうか」という返事だけだった。もしかして察せられて気を遣わせてしまったのだろうかと少し申し訳ないような気持ちになる。
今日はお姉様との軽いお茶会をする日だ。一週間に一度はこうやっておやつの時間に、二人でお茶を飲みお菓子を食べ雑談をする。しかしそれは、多忙なお姉様が私のおやつの時間に無理に時間を空けてきてくれているのだ。だからお姉様に無理をして時間を作らなくていいと言ったこともあるが、好きでやっていることだから良いと返されてしまった。やっぱりお姉様が私との時間を大切にしてくれてると思うと嬉しくて、それからは特に何も言ってはいない。
そんな大切な時間も、ここ数日の悩みのせいで楽しむことができずにいた。その悩みとは、当然シュテルのことだった。
一週間前、私の勝手な行動でシュテルを傷付けてしまった。本当はそれを謝りに行きたいが、シュテルが王族……つまり私を嫌っている以上、無理に会って余計に傷付けてしまわないか不安なのだ。自分でもどうしたらいいかわからず、うじうじとしたまま一週間が経ってしまった。
お姉様は私と喧嘩した時、すぐに謝りに来てくれたのに……とまた自己嫌悪に陥りそうになる。
思わずため息をつくと、お姉様が少し心配するような顔をした。
「ミティア…何か困ったことがあれば遠慮なく言ってくれていいんだぞ」
「…ありがとうお姉様。でも大丈夫よ、気にしないで」
できるだけ明るく、安心させるような口調で言うと、お姉様はそれ以上何も言わなかった。
本当はお姉様に隠し事はしたくないが…先日あったことをそのまま話したら、間違いなく何か行動するはずだ。姉弟にはとても甘いお姉様だから、相手がシュテルだと想像はしにくいが…。一週間前あったことを知れば、怒り出す可能性は高い。アンナが数人の侍女たちに言われたことや、私が枕を濡らしてしまったことも大きいが、お姉様は良くも悪くも直情的な人だから、今回のような事件のことはよく思わないだろう。
私自身は自分に非があると思っているが、お姉様なら私とシュテルを引っ張り出して無理やりにでも直接話し合わせようとするかもしれない。決して悪い解決方法ではないのだが、今回の場合は余計こじれてしまうような気がするのだ。
シュテルは私たちと関わりたくないだけなのだ。どうしてそんなにも家族に不信感を抱いているのかはわからないが、感情を表に出せない彼が乳母や侍女に打ち明かすほどに。
…そういえば、家族が嫌なら何故あの子のことは大切にしていたのだろうか。いや、彼女は存在自体が特別だからそんな枠には収まらなかったのだろう。当時の私と正反対の天使のような子だったから…。
前世のことを思い出して少し感傷に浸っていると「今日はもうお開きにするか?」とお姉様が聞いてきた。また気を遣わせてしまったことに申し訳なく思うが、今日は気分が上がる気がしないし、こんな状態で話していても逆に迷惑だろうと考えお姉様の提案を受け入れた。
「今日はもうゆっくりと休め。何かあったらすぐに私に言うんだぞ」
「ありがとう…お姉様も無理しないでね」
そのまま別れの挨拶を交わし、私は自分の部屋に戻った。
そして椅子に座ってふうと息を吐く。
この頃どうも体に力が入らない。お互いのためにもシュテルのことはもう忘れようと決めたのに。前の生活に戻るだけだ。お姉様がいてアンナもいる。それで十分じゃないか。
それなのに、どうにもやるせない。泣きたいわけでも怒りたいわけでもない。ただ気付けば感情が抜け落ちたように空を見つめてしまう。
そんなふうにぼんやりとした私を見かねたかのように、突然アンナが声を荒げる。
「……ッ!あんまりです‼」
「…どうしたの、アンナ」
「シュテル様…第二王子殿下のことです!私はただの侍女にすぎないし、あの方が何を考えているのかはわかりません。ですがミティア様は何にも悪くないのに…あんな言い方あんまりじゃないですか‼」
いつも穏やかなアンナが珍しく激高している。彼女は優しいから、私の為に怒ってくれているのかもしれない。しかしシュテルより自分の方が悪いと感じている私は、アンナのように怒ることができなかった。
「他人の気持ちも考えず勝手な行動をしたのは私よ。それにシュテルは私より幼いし、こういう時期は誰にだってあるわ」
「そんな…確かに私は詳しいことはわかりませんが、ミティア様が優しくて思いやりのある方なのはわかります。あの日大庭でお茶をされていた時、お二人とも本当に楽しそうで…良かったなぁと思っていたのに……。それなのに…こんな……」
「アンナ……」
アンナに心配をかけて申し訳なく思うと同時に、気にかけてもらって少し嬉しくも感じてしまう。彼女は本気で怒ってくれているのに…自分がつくづく嫌になってくる。
それにしても珍しい。前世の記憶の中でも彼女がこんなに感情を露にしたことは少なかった。いくら私が落ち込んでいるからといっても、終わったことに対して何度も怒るようなことはしない子だと思っていたのに。
「シュテル様が……こんな悪質な方だったなんて…!」
……シュテルが悪質?
その言葉にふと疑問が生まれる。シュテルより私の方が悪いからとか、そういう自己嫌悪からくるものではない、数日前朝にお姉様と会話した時に生まれた感情と似たような疑問だった。
「ねえアンナ…ひょっとして、まだ続いてるの?」
私がそう問うとアンナは弾かれたように私の方へ顔を向ける。その顔は青ざめていて、表情は辛そうに歪んでいた。それを見て私は確信する。
「……そう。気が付かなくてごめんなさい」
「ち、違うんですミティア様、これは、その」
アンナが冷静さを失って取り乱し始める。
私は頭を抱えたくなった。アンナがベルナデッタや侍女たちに私に関する苦情を言われて以降、あちらからは何も言われていないし起きてないものだと思っていた。しかしまだ続いていたのだ。あの日からもアンナに向けて嫌がらせのようなものがずっと。しかもアンナのあの言い方を考えると、それを主導しているのは使用人たちではなくシュテル本人……。
アンナは私がこれ以上気に病まないようにこの事を隠してくれていたのだろうが、いくら温厚な彼女でも我慢の限界がある。それで今のようについカッとなってしまったのだろう。
今回の件は私が悪かったから、私があちらに何か物申す資格なんて思っていた。しかし何の罪もないアンナが被害を受けるだなんて。アンナが私のせいで苦しむなんて、とてもじゃないが耐えきれないのだ。
いくらシュテルが私が嫌いでも、関りたくなくても、私から何か行動をしないといけない。
「アンナ、何があったか全て私に教えて頂戴。全てね」
「……」
アンナはしどろもどろになりながらも口をぎゅっと噤んでいる。一週間前はすぐに教えてくれたのに…それほどまでに言いたくないということだろう。
「アンナ……」
私は震えるアンナの体を優しく抱きしめた。突然のことに驚いたのか息をのんだのがわかる。彼女はお姉様や今の私の体より数年年上だが、まだまだ幼い少女である。そんな彼女が私の為に辛いことを一人で耐えてくれていたのだろう。前世では迷惑しかかけられなかったので、今世では幸せになって欲しいと願っていた。
「ありがとう、私の為に怒ってくれて。でも本当に大丈夫よ。何も怖くないわけじゃないけど、私にはお姉様やアンナがいる。だから多少のことでは傷つかないわ。それに…どんなことがあってもあなたは傍にいてくれるでしょう?」
囁くようにそう告げる。いつの間にかアンナの震えは止まっていた。静寂がしばらく続いていたが、アンナのぽつりとした呟きによってそれは壊された。
「手紙を…ずっと貰っていたんです」
「……手紙?」
「……いえ、手紙とはいえないぐらいに、一方的で醜悪なものです」
抱き締めていた手を解き離れてアンナの顔を見ると、思い出したくもないというように怒りで染まっていた。
「あの日私に文句を言いに来た侍女が私に手紙を手渡してきたんです。シュテル様が書いたものだと…。侍女はそれ以上何も言わずに帰っていきましたが、なんとなくミティア様に宛てられたものだということはわかりました。でも…何かとても嫌な予感がしたんです。それで、本当に良くないことなのですが、そのまま中身を見たんです…そうしたら…」
アンナの声がだんだんと険しくなっていく。手紙の内容ももう予想がついていた。
「……酷いものでした。凄まじい憎悪がこもったような…目も当てられないぐらい…とてもミティア様にはお見せできないと思い、どうしたらいいのかわからなくて、とりあえずその手紙は勝手に私の部屋に置きました。それからも毎日同じような内容の手紙を持ってきたんです。私は『なんでこんなことをするのか』とか『もうやめてほしい』とか、いろいろ言ってみたんですが…その侍女はいつも手紙を渡してすぐにいなくなってしまって…万が一誰かが見たらと思うと捨てることもできなくて、全部私の部屋に置いてありますが…。今日もお昼にやってきて、手紙を渡してきた上『第二王女はもうシュテル様を嫌いになったか』なんて聞いてきて…つい怒って追い返してしまいましたが……」
聞いていくうちにアンナへの罪悪感とシュテルへのショックが募っていく。アンナが嫌がらせのようなものを受けているのかもしれないと思ったが、想像以上に陰湿で歪んだものだった。なんかこう…精神的にじわじわと追い詰めてくるような。
それにしても…いくら子供だからといっても、本当にシュテルがこんなことを?確かに前世の記憶では人と話すことを好まないような性格だったが、非道なことをする私に何度も反発するぐらい、正義感も強かったはず。単純にそれほどまでに私が嫌いなのかもしれないが。
しかしどれだけシュテルが私のことが嫌いでも、アンナの主人として、シュテルの姉として今回の事件の決着をつけなければならない。それに前回王都へ行って多くの人へ迷惑をかけてしまったのだから、今回はなるべく一人で、責任を持ってきちんと終わらせたい。
「アンナ、その手紙は?」
「は、はい。私の部屋にありますが……」
「今日貰った手紙も部屋にあるの?」
「いえ、それは手元にあります」
「見せて頂戴」
アンナが目を見開く。
「だ、ダメです!本当に酷いんですよ、内容ならお伝えしますが、これは見ない方がいいに決まって――」
「大丈夫、と言ったでしょう」
たとえその手紙に私への途轍もない暴言が書かれていても、見なければいけない。シュテルが何故ここまで私を嫌うのか、どれだけ私が嫌いなのか、そんな情報でもやはり知っている方が問題の解決に繋がると思ったからだ。それに、アンナだけ苦しむなんて受け入れられない。だから見なければならない。
アンナは信じられないというように私を見つめてきたが、私はただ優しく微笑み返した。そしてアンナは納得のいかないような顔をしたが、渋々といった様子で懐から手紙を取り出した。
私はそれを受け取ってまじまじと見る。一見シンプルな普通の手紙だ。ご丁寧に手紙用の封筒に入れられている。封筒を開き便箋を取り出す。そこには確かに目も当てられないような暴言が書いてあった。どれだけ残酷なことをすればここまで嫌われるのかと思うほど、私に対する憎しみの感情がつづられた手紙だった。
それを見て私は思い切り目を見張った。こみ上げてきたのはシュテルに対しての怒りや悲しみの感情ではない。自分に対しての自己嫌悪や誰かに対する罪悪感でもない。まだ不可解なことが多いのに、まだ何も解決していないのに、今までの疑問やもやもやとした感情が晴れたような、すっきりとした感情だった。
――この手紙に書かれた文字、これはシュテルの筆跡ではない。
そしてそのことを考えていると、もやもやとしていてはっきりしない感情が生まれてくる。漠然としているが、それは焦りや何か嫌な予感を感じたものだった。だがそんな曖昧な状態で、この感情が解放される術など思いつきもしない。
とりあえず、明日またシュテルを訪ねてみよう。邪魔になるようだったら、その明日また訪ねてみよう。昨日話していた限り、私のことを嫌ってはいないはずだからその内また話せるだろう。
よし、そうと思えば明日に備えて今日はもう寝よう。
そう考えていると部屋の外からノックの音が聞こえてきた。アンナが寝る前の挨拶に来たのだろうか。そう思って声をかけると予想通りアンナが「失礼します」と入ってきた。しかし彼女の顔色は予想よりずっと暗い。
「あ…ミティア様、もうおやすみになりますか?では私はしばらく部屋の外におりますので、何かありましたらお申し付けださ――」
「アンナ、何かあったの?」
私が声をかけると、アンナは明らかにギクッとした様子で黙ってしまう。アンナはしばらくそうしてうつむいていたが、アンナの言葉を待つ私に引く気がないとわかったのか、重そうに口を開く。
「……少し前に、シュテル様の乳母だというベルナデッタと名乗る方がいらっしゃったんです」
ベルナデッタがここに?どういうことだ、何か用事でもあったのだろうか……。
そう不思議に思っていると、アンナはまた少し黙って口を開いた。
「……そして、その方がおっしゃったんです。申し訳ないがシュテル様は王族嫌いだから……そのミティア様は、もうシュテル様に近付かないで欲しいと」
「……え?」
頭が真っ白になる。アンナの顔色はさらに悪くなってしまうが、私も他人を気遣う余裕がなくなっていた。
「あの乳母が…そう言ったの?いや、もしかしたらその人は何か誤解しているのかもしれないわ。明日…いや今すぐにでも聞いてみなきゃ…」
「…ぅ…です、が…」
アンナが顔を伏せて何かをこらえるような声を出す。私は嫌な予感を感じたが、確認しなければならないと決心し、アンナに優しく声をかける。
「アンナ、ごめんね。私は大丈夫だから…何があったのか全部教えてくれる?」
「……はい。先ほど、数人の侍女たちがやってきて言ったんです。私たちはシュテル様のお部屋の近くに配属されている侍女で、昔からシュテル様が家族を避けているのを知っている…それなのに昨日は突然ミティア様にお茶に誘われ、断れなかったと…そしてその後…『辛かった』とシュテル様がおっしゃっていたと。そして、その……『もう会いたくない』…とも」
頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。一瞬足元がふらついたが、アンナを見てなんとか堪える。アンナの震えようを見る限り、本当はもっと酷いことを言われたのだろう。私の代わりにその侍女たちから暴言を吐かれたのかもしれない。それでもきっと、私のことを想いながら伝えてくれたのだ。
「アンナ…辛い思いをさせたわね、ごめんなさい。でも教えてくれてありがとう」
「そんな…!謝らないでください、ミティア様は何も悪くありません‼」
アンナは優しい言葉をかけてくれるが、私はとてもそうとは思えなかった。
「とりあえず、今日はもう寝るわね。私は大丈夫だから…あまりアンナも気に病まないで」
「ミティア様…はい、わかりました…。しばらくは部屋の外にいるので、何かあれば些細な事でもすぐにお知らせくださいね…それでは、おやすみなさいませ」
「ええ、おやすみ」
ギィ…と静かに音を立てて扉が閉まる。私はそれを確認するとドサッとベッドに倒れた。そして近くの枕を乱暴に手に取る。
「……ぅぅ」
顔を枕にぐっと埋める。この情けない声を外にいるアンナに聞かせたくない。自分の溢れる感情を目の前の何の罪もない枕に押し付ける。綺麗だった枕は手に力を入れすぎているせいでしわがつき、顔を押し付けている部分は濡れていた。
これぐらいのこと、前世で普通の人間として生きていた時、たくさん経験したはずなのに。やはり子供の体だから感情の制御ができなくなっているのだろうか。
悔しい。
今一番大きな感情はそれだった。シュテルの本当の気持ちへの悲しみもあったが、私は悔しくて悔しくて堪らなかった。
いくらシュテルが大人びた子だからって、何も気付かずに気を遣わせていたこと。よく考えればわかることなのに、人のことを考えず彼の邪魔をしていたこと。自分のせいでアンナにまで迷惑をかけてしまったこと。それらを今になって理解した自分が情けなくて、とにかく悔しかった。
「最低よ…私。お姉様に鈍感だなんて言う資格なかったじゃない……」
顔を上げると目からぽろっとしずくが零れ落ちる。そしてそのしずくさえ煩わしい。
駄目だ泣くな。被害者は私じゃなくてシュテルなんだから。私は本当は大人なんだからみっともなく泣くな。そもそも私にそんな資格はない。
――それに、私は前世で彼に対して償いきれない罪を犯したから、これはきっとその罰なんだ。
―――――
「それで、シュテルとはどうなったんだ?」
体がピシッと石のように固まる。
「ど、どうって…?」
「数日前シュテルと庭で茶会を開いてから、また何か二人で会って話したりはしたのか?」
「えっと…シュテルは勉強熱心だから、私と話せる時間がなかなか見つからないみたい」
お姉様は私の戸惑った様子に疑うような目をしたが、返ってきたのは「そうか」という返事だけだった。もしかして察せられて気を遣わせてしまったのだろうかと少し申し訳ないような気持ちになる。
今日はお姉様との軽いお茶会をする日だ。一週間に一度はこうやっておやつの時間に、二人でお茶を飲みお菓子を食べ雑談をする。しかしそれは、多忙なお姉様が私のおやつの時間に無理に時間を空けてきてくれているのだ。だからお姉様に無理をして時間を作らなくていいと言ったこともあるが、好きでやっていることだから良いと返されてしまった。やっぱりお姉様が私との時間を大切にしてくれてると思うと嬉しくて、それからは特に何も言ってはいない。
そんな大切な時間も、ここ数日の悩みのせいで楽しむことができずにいた。その悩みとは、当然シュテルのことだった。
一週間前、私の勝手な行動でシュテルを傷付けてしまった。本当はそれを謝りに行きたいが、シュテルが王族……つまり私を嫌っている以上、無理に会って余計に傷付けてしまわないか不安なのだ。自分でもどうしたらいいかわからず、うじうじとしたまま一週間が経ってしまった。
お姉様は私と喧嘩した時、すぐに謝りに来てくれたのに……とまた自己嫌悪に陥りそうになる。
思わずため息をつくと、お姉様が少し心配するような顔をした。
「ミティア…何か困ったことがあれば遠慮なく言ってくれていいんだぞ」
「…ありがとうお姉様。でも大丈夫よ、気にしないで」
できるだけ明るく、安心させるような口調で言うと、お姉様はそれ以上何も言わなかった。
本当はお姉様に隠し事はしたくないが…先日あったことをそのまま話したら、間違いなく何か行動するはずだ。姉弟にはとても甘いお姉様だから、相手がシュテルだと想像はしにくいが…。一週間前あったことを知れば、怒り出す可能性は高い。アンナが数人の侍女たちに言われたことや、私が枕を濡らしてしまったことも大きいが、お姉様は良くも悪くも直情的な人だから、今回のような事件のことはよく思わないだろう。
私自身は自分に非があると思っているが、お姉様なら私とシュテルを引っ張り出して無理やりにでも直接話し合わせようとするかもしれない。決して悪い解決方法ではないのだが、今回の場合は余計こじれてしまうような気がするのだ。
シュテルは私たちと関わりたくないだけなのだ。どうしてそんなにも家族に不信感を抱いているのかはわからないが、感情を表に出せない彼が乳母や侍女に打ち明かすほどに。
…そういえば、家族が嫌なら何故あの子のことは大切にしていたのだろうか。いや、彼女は存在自体が特別だからそんな枠には収まらなかったのだろう。当時の私と正反対の天使のような子だったから…。
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「今日はもうゆっくりと休め。何かあったらすぐに私に言うんだぞ」
「ありがとう…お姉様も無理しないでね」
そのまま別れの挨拶を交わし、私は自分の部屋に戻った。
そして椅子に座ってふうと息を吐く。
この頃どうも体に力が入らない。お互いのためにもシュテルのことはもう忘れようと決めたのに。前の生活に戻るだけだ。お姉様がいてアンナもいる。それで十分じゃないか。
それなのに、どうにもやるせない。泣きたいわけでも怒りたいわけでもない。ただ気付けば感情が抜け落ちたように空を見つめてしまう。
そんなふうにぼんやりとした私を見かねたかのように、突然アンナが声を荒げる。
「……ッ!あんまりです‼」
「…どうしたの、アンナ」
「シュテル様…第二王子殿下のことです!私はただの侍女にすぎないし、あの方が何を考えているのかはわかりません。ですがミティア様は何にも悪くないのに…あんな言い方あんまりじゃないですか‼」
いつも穏やかなアンナが珍しく激高している。彼女は優しいから、私の為に怒ってくれているのかもしれない。しかしシュテルより自分の方が悪いと感じている私は、アンナのように怒ることができなかった。
「他人の気持ちも考えず勝手な行動をしたのは私よ。それにシュテルは私より幼いし、こういう時期は誰にだってあるわ」
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「アンナ……」
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それにしても珍しい。前世の記憶の中でも彼女がこんなに感情を露にしたことは少なかった。いくら私が落ち込んでいるからといっても、終わったことに対して何度も怒るようなことはしない子だと思っていたのに。
「シュテル様が……こんな悪質な方だったなんて…!」
……シュテルが悪質?
その言葉にふと疑問が生まれる。シュテルより私の方が悪いからとか、そういう自己嫌悪からくるものではない、数日前朝にお姉様と会話した時に生まれた感情と似たような疑問だった。
「ねえアンナ…ひょっとして、まだ続いてるの?」
私がそう問うとアンナは弾かれたように私の方へ顔を向ける。その顔は青ざめていて、表情は辛そうに歪んでいた。それを見て私は確信する。
「……そう。気が付かなくてごめんなさい」
「ち、違うんですミティア様、これは、その」
アンナが冷静さを失って取り乱し始める。
私は頭を抱えたくなった。アンナがベルナデッタや侍女たちに私に関する苦情を言われて以降、あちらからは何も言われていないし起きてないものだと思っていた。しかしまだ続いていたのだ。あの日からもアンナに向けて嫌がらせのようなものがずっと。しかもアンナのあの言い方を考えると、それを主導しているのは使用人たちではなくシュテル本人……。
アンナは私がこれ以上気に病まないようにこの事を隠してくれていたのだろうが、いくら温厚な彼女でも我慢の限界がある。それで今のようについカッとなってしまったのだろう。
今回の件は私が悪かったから、私があちらに何か物申す資格なんて思っていた。しかし何の罪もないアンナが被害を受けるだなんて。アンナが私のせいで苦しむなんて、とてもじゃないが耐えきれないのだ。
いくらシュテルが私が嫌いでも、関りたくなくても、私から何か行動をしないといけない。
「アンナ、何があったか全て私に教えて頂戴。全てね」
「……」
アンナはしどろもどろになりながらも口をぎゅっと噤んでいる。一週間前はすぐに教えてくれたのに…それほどまでに言いたくないということだろう。
「アンナ……」
私は震えるアンナの体を優しく抱きしめた。突然のことに驚いたのか息をのんだのがわかる。彼女はお姉様や今の私の体より数年年上だが、まだまだ幼い少女である。そんな彼女が私の為に辛いことを一人で耐えてくれていたのだろう。前世では迷惑しかかけられなかったので、今世では幸せになって欲しいと願っていた。
「ありがとう、私の為に怒ってくれて。でも本当に大丈夫よ。何も怖くないわけじゃないけど、私にはお姉様やアンナがいる。だから多少のことでは傷つかないわ。それに…どんなことがあってもあなたは傍にいてくれるでしょう?」
囁くようにそう告げる。いつの間にかアンナの震えは止まっていた。静寂がしばらく続いていたが、アンナのぽつりとした呟きによってそれは壊された。
「手紙を…ずっと貰っていたんです」
「……手紙?」
「……いえ、手紙とはいえないぐらいに、一方的で醜悪なものです」
抱き締めていた手を解き離れてアンナの顔を見ると、思い出したくもないというように怒りで染まっていた。
「あの日私に文句を言いに来た侍女が私に手紙を手渡してきたんです。シュテル様が書いたものだと…。侍女はそれ以上何も言わずに帰っていきましたが、なんとなくミティア様に宛てられたものだということはわかりました。でも…何かとても嫌な予感がしたんです。それで、本当に良くないことなのですが、そのまま中身を見たんです…そうしたら…」
アンナの声がだんだんと険しくなっていく。手紙の内容ももう予想がついていた。
「……酷いものでした。凄まじい憎悪がこもったような…目も当てられないぐらい…とてもミティア様にはお見せできないと思い、どうしたらいいのかわからなくて、とりあえずその手紙は勝手に私の部屋に置きました。それからも毎日同じような内容の手紙を持ってきたんです。私は『なんでこんなことをするのか』とか『もうやめてほしい』とか、いろいろ言ってみたんですが…その侍女はいつも手紙を渡してすぐにいなくなってしまって…万が一誰かが見たらと思うと捨てることもできなくて、全部私の部屋に置いてありますが…。今日もお昼にやってきて、手紙を渡してきた上『第二王女はもうシュテル様を嫌いになったか』なんて聞いてきて…つい怒って追い返してしまいましたが……」
聞いていくうちにアンナへの罪悪感とシュテルへのショックが募っていく。アンナが嫌がらせのようなものを受けているのかもしれないと思ったが、想像以上に陰湿で歪んだものだった。なんかこう…精神的にじわじわと追い詰めてくるような。
それにしても…いくら子供だからといっても、本当にシュテルがこんなことを?確かに前世の記憶では人と話すことを好まないような性格だったが、非道なことをする私に何度も反発するぐらい、正義感も強かったはず。単純にそれほどまでに私が嫌いなのかもしれないが。
しかしどれだけシュテルが私のことが嫌いでも、アンナの主人として、シュテルの姉として今回の事件の決着をつけなければならない。それに前回王都へ行って多くの人へ迷惑をかけてしまったのだから、今回はなるべく一人で、責任を持ってきちんと終わらせたい。
「アンナ、その手紙は?」
「は、はい。私の部屋にありますが……」
「今日貰った手紙も部屋にあるの?」
「いえ、それは手元にあります」
「見せて頂戴」
アンナが目を見開く。
「だ、ダメです!本当に酷いんですよ、内容ならお伝えしますが、これは見ない方がいいに決まって――」
「大丈夫、と言ったでしょう」
たとえその手紙に私への途轍もない暴言が書かれていても、見なければいけない。シュテルが何故ここまで私を嫌うのか、どれだけ私が嫌いなのか、そんな情報でもやはり知っている方が問題の解決に繋がると思ったからだ。それに、アンナだけ苦しむなんて受け入れられない。だから見なければならない。
アンナは信じられないというように私を見つめてきたが、私はただ優しく微笑み返した。そしてアンナは納得のいかないような顔をしたが、渋々といった様子で懐から手紙を取り出した。
私はそれを受け取ってまじまじと見る。一見シンプルな普通の手紙だ。ご丁寧に手紙用の封筒に入れられている。封筒を開き便箋を取り出す。そこには確かに目も当てられないような暴言が書いてあった。どれだけ残酷なことをすればここまで嫌われるのかと思うほど、私に対する憎しみの感情がつづられた手紙だった。
それを見て私は思い切り目を見張った。こみ上げてきたのはシュテルに対しての怒りや悲しみの感情ではない。自分に対しての自己嫌悪や誰かに対する罪悪感でもない。まだ不可解なことが多いのに、まだ何も解決していないのに、今までの疑問やもやもやとした感情が晴れたような、すっきりとした感情だった。
――この手紙に書かれた文字、これはシュテルの筆跡ではない。
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