意味が分かると怖い話（自作）

忘年会シーズン

忘年会シーズン！

俺の嫌いな季節だ。

今の時期、駅のホームはアホの群衆ばかり！

深夜ともなれば少しは人が減ったとは思うけど、それでも結構な人がいる。

大声で話してる馬鹿な学生連中もいれば、酔っ払って椅子で寝てるサラリーマン。

女子会の帰りか、厚化粧の着飾った飲み屋のキャバ嬢みたいな奴らもいる。

そう思っていたら、ホームから酔っぱらいが転んで線路に落ちやがった。

「最悪。あんなオッサンにはなりたくない」

周りの連中はそんなオッサンを笑いながら馬鹿にしたような目で見ている。

俺から言わせれば同レベルのアホ共だ。

誰も助けようとはしない。

当然と言えば当然か……

もう直ぐこの駅通過の特急が通る。

俺はそのオッサンに手を差し伸べた。

「悪いね～」と言い、ニヤニヤしながら俺の手を掴んだ。

酔っ払ってるせいかなかなか上がらない。

そのとき、遠くから電車の来る音が聞こえてきた。

俺はオッサンの手を振り解こうとしたが、強く握られた手は離れることはなかった。

「早くしろよ」

俺はモタモタしているオッサンに苛立った。

もう見える位置まで電車が来ている。

「なんで駅員も来ないんだ？」

「なんで誰も手伝わないんだ？」

力の限りオッサンの手を引っ張り、ホームへ上げようとした。

……目の前を電車が通り過ぎて行く。

俺は恐怖で腰を抜かしてしまった。

その直後、駅員が駆け付けた。

「おせーよ！　もう少しで死んでたんだぞ」

恐怖と怒りで吐き捨てるように言った。

よっぽど強く握っていたのか、オッサンの手を握り締めたまま離せずにいた。

駅員にオッサンの手を外してもらったが、まだ震えが止まらない。

少し落ち着きを取り戻し帰ることにした。

今日は疲れたからタクシーで帰ろう。

これだからこのシーズンは嫌いだ！