意味が分かると怖い話（自作）

思春期

目に入れても痛くない一人娘。

思春期を迎えてからは、徐々に接することがなくなっていった。

……幼いころ、娘とはいつも一緒だった。

家に居るときはいつも引っ付いて回ってきて、私が仕事から帰ってくる時間に玄関前で待っていてくれた。

それが少しずつ減っていき、10歳を超えたあたりからは会話さえなくなっていた。

話しかけても「あぁ」と空返事が返ってくるだけ。

父親という存在は、往々にして嫌われる生き物なんだろう。

仕事が終わり家に帰ってる前には、自分の部屋にこもってしまっている。

ここ数年会話らしい会話もなく、娘の顔も見ていないありさまだ。

私はそんな家庭から逃げる様に仕事に没頭するようになった。

その日も深夜まで残業をして、終電で帰った。

もちろん、家に帰ったころには明かりも点いておらず、息を殺し自分の部屋に入っていく。

それが常になっていた。

いつものようにしばらく自室で仕事をし、シャワーも浴びず一人ベッドに潜り込んだ。

枕元の明かりを消したときに部屋の扉が開いていて、そこに誰かが立っていることに気付いた。

妻かと思い「ごめん、起こしちゃった？」と謝る。

しかし、そのシルエットは妻にしてはとても小さい。

娘かと思い、体を起こし「どうした？　眠れないのか？」と、声をかける。

小さく頷く。

「じゃあ、お父さんと一緒に寝ようか」

そう言って布団をめくると、小走りで来て、そのまま布団に潜り込んできた。

久しぶりに一緒に寝るな……

まだ娘が幼いころ、三人で一緒に寝ていたことを思い出し自然と笑みがこぼる。

私は思い出に浸り、娘の頭をなでながらそのまま寝入っていた。

翌日、かなり早い時間に妻に起こされた。

ベッドからは娘の姿は消えていた……

妻はいつものように無言で出掛ける支度をしていた。

妻を横目に、私は娘の部屋の前に立ち「昨日はありがとうなぁ」と、ひとりごちる。

そんな私の姿を見ながら、妻は目に涙を浮かべ線香とロウソクの入った袋を渡してきた。