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-はじまりの陰謀-編

次から次へと

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「ボロスを倒すにあたって、いくつか確認したいことがあります」

 俺たちは、まずどうやってここから脱出するのか絶賛、考え中だった。

 普通であればダンジョン内でボスを倒せば、ゲートのようなものが現れてそこから外に移動できるらしい。

 だが、そもそもこれはエリシアを閉じ込めるために造られたもののため、外に出すことなど考えられていない。

「はい、どうぞ」

 ニコッと微笑む彼女の機嫌は相当良さそうだ。

「ボロスが危険だと感じたあなたのスキルはなんなんですか?」

 なんだそんなことかと言いたげな顔をした彼女は続けて、

「私が持っていたのは『創造』と『破壊』というスキルです。創造はなんでも創ることができ、逆に破壊はなんでも壊すことができます」

 確かにめちゃくちゃだな......。でもそれでどうやってーーあっ。

「創造は例えば、新たにスキルを生み出したり、神に会いに行けるような扉を創れたりします......?」

「その通りです。制限はありますが、ボロスはそのように考えたんだと思います」

「なるほど、では今のスキルはどんなものなんですか?」

「今は『成形』と『腐食』に変えられました」

 ふむ、まあ創造と破壊の下位互換という感じだな。だいぶ弱くなってるけど。

 ん? 成形と腐食......。

「エリシアさん、うまくやればここから出られるかもしれません」

「ほんとですか!」

 期待の眼差しで見つめられる。そこまで期待されると失敗した時が怖いんだけど。

 俺が考えたのは単純なことだ。

 まず『成形』はモノの形を変えるスキル。素材自体が変化するわけじゃないから鉄を金に、とかはできない。

 今、この場で使える素材なんてダンジョンを造っている石の壁くらいだ。ただ、当たり前だがものすごく硬い。

 そこでもう一つのスキル『腐食』

 腐食で石の壁を脆くさせて成形で階段を作ろう! というシンプルなもの。

 しかしエリシアに任せっきりは少々、忍びない。

 俺のスキルでコピーして作業しようと思ったのだが......。

「スキルーー空間把握......あれ?」

 俺の空間把握がエリシアを認識しない。戦闘中じゃなきゃダメとかの制約があるんだろうか?

 というわけでエリシアにやってもらうことになった。

 それを伝えるとなぜか「任せてください!」と張り切っていた。


 「閉じ込められていた時にスキルを使って外に出なかったのか」と聞いたが、部屋の中は時間が止められているに等しい空間だったため、スキルも使えなかったんだそうだ。


 作業はサクサク進み、ものの十数分で外に出ることに成功した。

 エリシアは汗をかいてはあはあと疲れていたが、それもそのはず。かなり魔力を使っただろうからな。

 当然だが、スキルを使うにも魔力が必要だ。

 それでもサクサクと進めた理由は、二つのとんでもないスキルを持っていたことから、エリシアの魔力値が相当高いことを推察できる。

「すいません、何もできなくて」

 女の子にだけ負担をかけたことが申し訳ないこと極まりない。

「いえいえ、エイトさんにはもっと大変なことを手伝ってもらうのですから、このくらいなんともありません!」

 そうだった。大変どころのレベルではない気がするが。お腹痛くなってきた。

「それもそうですね。では一旦、街に帰りましょう」

「はい! どんな風に変わっているか楽しみです」

 あ、エリシアは百年も閉じ込められていたのだから、そりゃあ変わってよな。

「タラゴナの街は百年前にもあったんですか?」

「ええ、街というよりは大きな村という感じでしたけど」

「なら、かなりびっくりすると思いますよ」

 彼女は感情表現が豊かで素直だ。俺はエリシアの反応が少し楽しみになった。

 隣に並んで気づいたんだが、彼女はかなり小さい。俺の身長が175センチだから彼女は150センチくらいだろうか。

 ぴょこぴょこと歩く姿がとても可愛い。


 そんな平和な時間を過ごしているとクリーム色の外壁が見えてきたーーのだが、様子がおかしい。

  真昼間まっぴるまなのに門番がいない。

 それどころかこの距離でも聞こえるほど街が騒がしく、ところどころから煙が上がっている。

 (イルン......! みんな!)

 胸騒ぎがして まない。

「エリシアさん! 急ぎましょう!」

「ええ!」

 俺はエリシアを気遣う余裕もなく走った。

「はあっ、はあっ、はあっ、なっ......!!」

 街の門についた時、絶句した。

 悲鳴を上げながら逃げ惑う人々、燃える民家。

 そして一番の衝撃は、

「なんで魔物がこんなに侵入してるんだ!!!!」

 ギルドの冒険者が応戦しているが、数が多すぎる。どうなってる!?

「クソッ、最悪だっ!!」

「エイトさん、私たちも戦いましょう!」

 エリシアは剣術などは使えないが、膨大な魔力があることから魔法は習っていたようで、そのなかにはいくつか戦闘で使えるものもある。

「はい! ですが、家族が心配です! 俺は先にそっちへ向かいます!」

「わかりました! ここは私がなんとかしますので行ってください!」

「ありがとうございます!」

 俺は一目散いちもくさんに駆け出した。

 (どうか無事であってくれ......! イルン......!)

 炎がこっちまできていて、居酒屋タラサの看板は燃え落ちていた。

 幸いここまで魔物は来ていないようだが。

ーーガタンッッ!


 エイトは勢いよく扉を開けて、あたりを確認する。目に入る範囲にはいない。

「イルン! メリダさん! 旦那さん!」

 大声で呼びかけても反応はない。ちゃんと逃げられたのか?

「はっ! 二階はどうだ!?」

 この時間は営業中だから二階にはいないはずだけど隠れている可能性もある。

 そう思って階段をドンドンと登った矢先。


 俺は衝撃の光景を目にするーー。
 
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