弱小スキル「自動マッピング」が実は偽装されてました? 〜気弱なのに、(ほぼ)強制的に神殺しをさせられそうな件〜

苺 あんこ

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-はじまりの陰謀-編

スキルについて考える

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「痛ってぇ......何階層なんだここは」

 上を見上げると光が小さいことからだいぶ下まで落とされたことがわかる。

 毒の影響と下に叩きつけられた衝撃で、ミノタウロスは白目を向いて息絶えていた。

 レベルアップのアナウンスがないところから かんがみて、俺が倒したことにはなっていない、か。結構、頑張ってダメージ与えたんだけどなあ。

 そうそう。なぜ、俺が助かっているのかというとそこで息絶えてる巨大な肉クッションにバウンドしたためだ。近くにいてよかった。

「一度、冷静になろう。まずはスキルの確認だ」

 さっきは無我夢中で戦っていたから、落ち着ける今のうちに俺ができることを把握しておく。

 俺のユニークスキル、『自動マッピング』と『空間把握』の違いはこうだ。

 自動マッピングは、自分の半径一メートルにある道を脳内に映し出し、これを完全に記憶する効果。

 対して空間把握は、自分の半径三メートルにいる相手の行動を予測して脳内に映し出し、相手のスキルを覚える効果。

 なるほど似ている。これが自動ではなくただのマッピングだったら、相手のスキルを一瞬は使えても覚えることまではできていない、とかなんだろうな。知らんけど。

 だが、なんで偽装なんだ?

「それはいま考えても仕方ないか......」

 続けて、俺がいま持っているコモンスキルについてだ。

 スキルには二種類あって、後天的に技能次第で取得できるのがコモンスキル。

「何を覚えたっけ。威圧と剛腕と......? これいちいち思い出すのめんどくさいな、なんかもっと簡単にーー」

 エイトは思い出す。ハッパが死ぬ直前に言っていたことを。

『なんで......ブラック級がこんなところに......』

 あいつはなんでミノタウロスがブラック級だと分かったんだ? もしかしてーー

 一緒に下へ落ちてきた端っこで転がっている死体に近づく。

「うわぁ、グロっ......気持ち悪い、吐きそう。スキルーー空間把握」

 なんかいろいろ飛び散ってた。誰かモザイクかけといて。

 なるべく見ないようにスキルを発動する。

『スキルを取得しますか?』

 これで確定だ。俺はハッパが他にスキルらしいスキルを使っていたところを見ていない。つまり、

『以下のスキルを取得しました』

-鑑定

 うっし! 異世界であれば絶対に持っておきたいスキルをゲットした。

 両方の拳を握ってガッツポーズする。

 ただ、カセレスのおっさんが言っていたとおり、鑑定では相手のスキル情報なんかを見ることまではできない。

 いや待てよ? 空間把握は相手の行動を予測し、視たことのあるスキルを奪える能力。いわば、相手のことがわかると言っても過言じゃない。そしてそれは自分に対しても使えるんじゃーー

「スキルーー空間把握、鑑定」

『スキルを組み合わせますか?』

 ほらほらほら! なんかきたぞ!

『以下のスキルを取得しました』

-魔眼(擬似)

「俺って天才なんじゃない?」

 魔眼は鑑定の上位スキルであり、このスキルを持っている人は鑑定よりもさらに少ない。世界に数人いるかどうか。

 ただ、エイトの魔眼は擬似であり、本物ではない。たとえば、鑑定のスキルがなんらかの方法で奪われたりすれば魔眼(擬似)も失われる。

 さらに空間把握の効果を応用しているため、使用できる範囲も三メートルに限られる。

 エイトは緊張しながら唾を飲んで、ささやいた。

「これでいけるはず......ステータス」


ナナミ エイト 19歳

レベル:2
種族 :人間
職業 :フリーター
攻撃力:15
防御力:10
体力 :20
魔力 :15
敏捷性:25
知力 :25

固有 :幸運 I・毒耐性 II

ユニークスキル:自動マッピング(空間把握)・鑑定・魔眼(擬似)
コモンスキル :威圧・剛腕・斬撃



 感動だなあ。とりあえず職業欄は悲しくなるから見なかったことにしよう。

 あと気になるところは、ん? 毒耐性?

 毒を喰らったから耐性がついたわけじゃないとすると......あ。

 エイトは思い出す。そして心当たりがあった。

 この世界に初めてきたとき、序盤も序盤だ。

 確か一個だけ木になっていた紫色のリンゴを食べたような。もしかしてあれか?

 この時のエイトは知らないが、そのリンゴはとても珍しく大きな森の中に一つあれば奇跡というレベルのもの。

 また毒の他に麻痺・眠り・呪いなどの耐性を付与してくれる種類もあり、闇市場では90000バレン=およそ900万円で取引されている。

「まあ、いっか」

 彼は能天気だった。

 続いて気になったのは隣にある幸運 I という文字。

 固有の能力にはレベルがあり、I からⅢで表される。I が最も低いのだが、リンゴを見つけられたのもこのおかげだろうか。幸運があったとしたら初期スポーン地点とか今のこの状況とかいろいろとおかしいけど。

 自分のステータスの確認が終わったところで、真っ先にやられたイーシュ(だったもの)の前にも行き、スキルを取得する。

「盗賊っぽくて少し気が引けるが、俺を殺そうとしたんだからこれくらいは構わないだろう」

 新たに『ファイアーボール』と『ロックブラスト』を取得した。

 魔法なんて今すぐ使ってみたいが、さっき見たステータスによると俺の魔力はそう多くない。

 魔力を使い切ってぶっ倒れる可能性を考慮すると好奇心なんて後回しだ。

「ふぅー」

 一息つき、ここからどうやって出ようか考え始める。

ーーえ?
 
 ふと目線を後ろに向けたとき、エイトは驚愕する。

 なぜ今のいままで気がつかなかったのか、そこには壁一面に広がるとんでもなく大きい扉があったことに。
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