僕のラミア

むねじゅ

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008 さわやかなクリームソーダ

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茜と金時は二人で鼻歌が出るくらい、ルンルンで喫茶店へ向かっていた。
他の人が見たら、中学生のかわいらしいカップルに見えることだろう。
茜はズバズバと言う性格なので知人からはきつく見られがちだが、容姿はけっこう可愛いのだ。
だから、しゃべらなければ美少女である。そして、金時はとにかくかわいいので美少年、美少女カップルだ。
二人は若い子向けの雑誌のモデルのようだ。

二人は仲良く同じ曲の鼻歌を歌いながら、喫茶店についた。金時は少し緊張しながらドアを開ける。
その様子を茜ががんば!と合図を送って励ましている。本当に仲が良い二人だ。
しかし、この二人は利害関係の一致でここまで仲が良くなったとも言える。
茜はスイーツやジュース、金時は蛭間とお互いの目的は別々だ。そこがいいのかもしれないが・・・

喫茶店の中に入ると、いらっしゃい。と蛭間の美しい声が聞こえた。金時の胸が躍る。

蛭間 「金時くん!お嬢さん!こんにちは。こちらのカウンターへどうぞ。」

二人は蛭間に案内されて、席に座った。
今日はお客さんが何組かいて、店がにぎわっていた。蛭間も忙しそうにしている。
金時はお店が忙しいからまずかったかな?と思っていると。
蛭間が本当にうれしそうに微笑んでいるのを見て来てよかったと思った。

蛭間 「今日は少し暑いね。そうだ。二人にぴったりの飲み物があるんだ。ちょっと待っててね。」

僕は蛭間さんにまた、おかまいなく!今日は自分で飲みにきましたと伝えたかったが、蛭間さんはそれより早く厨房に行ってしまった。
蛭間さんはきれいなブルーのクリームソーダを二つ持っている。ソーダのブルーが蛭間さんの目の色と同じだ。
僕は蛭間さんとソーダの色にうっとりとした。
蛭間さんはいつものように、カウンターから優しく飲み物を置いてくれた。

蛭間 「どうぞ、召し上がれ。ソーダの中にゼリーも入っているからね。おいしいよ。」

僕はクリームソーダをよーく見た。ほんとだ!水色のソーダの中にピンクと黄色の星型のゼリーが入っている。
こんな凝っているクリームソーダは初めてだと感動していると、隣で小城さんが目をキラキラさせながら、かわいいー!と喜びながら携帯で写真を撮っていた。
こんなにきれいだから写真に残したいよね、小城さんの気持ちがすごくよくわかった。
ふと顔をあげると蛭間さんがうれしそうに僕たちを見ていた。

蛭間 「解けちゃうから、食べて!食べて!」

僕たちは同時に「いただきまーす」と食べ初めて、あまりのおいしさに二人で顔を見合わせた。
あまりにも僕たちの動作が同じだったので、蛭間さんは可笑しかったのか声を出して笑っていた。
僕は蛭間さんの鈴を転がすような美しい笑い声を聞いて驚いた。
こんなにも笑い声が美しい人がいるんだなーと感心した。
僕たちは夢中でクリームソーダを食べていた。そして、あっという間に無くなってしまった・・・
美味しいものは儚いのだ・・・
小城さんは満足!満足!とおなかを叩いていた。そして、お手洗いに消えて行った。
その時、忙しい合間を縫ってに蛭間さんが話しかけてくれた。

蛭間 「金時くんが元気そうでよかった!安心したよ。」

金時 「昨日は心配かけてすみませんでした。もう大丈夫です!」

と僕は笑った。蛭間さんは安心したよと微笑んでいる。きっとこの話は小城さんがいない時にと蛭間さんは気を遣ってくれたのだろう。そのことも僕はうれしかった。
小城さんが帰ってきた。

小城 「ごちそうさまです!本当に美味しかったです!かわいいし、最高でした!!!」

小城さんはお礼と感想を述べている。僕も感想を言わないとと思い

金時 「僕もすごく美味しかったです!すごくきれいですね!」

蛭間 「二人とも気に入ってくれてうれしいよ!新作なんだ!試食してくれてありがとう!二人のおかげでメニューに入れることにしたよ。」

金時 「えっ?試食?ちゃんとお金払います!昨日だって・・・」

蛭間 「いいんだよ!これからも試食を頼むよ!その内、びっくりするものも食べさせちゃうかもしれないよ?」

と蛭間さんはおどけて見せた。
すかさず小城さんは

小城 「いいんですかー!!!うれしいです!常に試食できるなんて感激です!!!私、なんでも食べれるんで!!!」

と図々しい事を言っている。蛭間さんはずっと笑顔だ。

金時 「いつもすみません!次は絶対・・・」

蛭間 「子供は遠慮なんかしなくていいんだよ!食べてくれたら私もうれしいしね。」

僕は蛭間さんの子供という言葉に少し胸が痛かった・・・僕は早く大人になりたい・・・と思った。

小城 「ありがとうございます!友達にも両親にもここの喫茶店のことを宣伝しますね!きっと皆も気に入ると思うし!」

蛭間 「お嬢さんありがとう!宣伝よろしくね。そういえば、お嬢さんお名前は?」

小城 「私、小城 茜といいます!」

蛭間 「茜ちゃんに金時くん!これからもよろしくね!」

そう言って蛭間さんは笑った。

僕はその日家に帰ってから、昨日と今日も蛭間さんにご馳走になったことを母に話した。
だって僕では蛭間さんにお金を受け取ってもらえない思ったから、あと僕が世話になっていることを知らないのも親に恥をかかせてしまうと思ったから。
案の定母は、

母 「あら!そんなにご馳走になったの?それじゃー何かお礼をしないといけないわね!今度の日曜日にお礼をしに家族で伺いましょう!」

僕は家族が恩知らずですんだことはよかったが、なんだか蛭間さんを見られたくなかった。
僕の好きな人だから・・・
でも、家族公認になれば、今よりもっと逢いに行っても問題なくなるかも?
そうだ!そのほうが都合がよさそうだ!僕は日曜日が楽しみになった。


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