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ガイと結婚する。

その未来はわたしをふわふわと夢心地にさせる。

結婚の準備として、ドレスの新調をドラがせっついてきたのにも、少しも億劫に思わなかった。

何を目にしてもまばゆく豊かで、自分を幸せの渦の中心にいるように思った。

これもドラが強く言い、主寝室の改装が計画された。

「少し陰気な雰囲気のお部屋でございますから」
「初耳だ。僕が一人の時は陰気で構わなかったわけだ」

ガイが面白がって返す。

「まあ、お部屋のことには無頓着でいらっしゃったくせに。ご新婚でいらっしゃるのですから、少々華やかな方がよろしいと申し上げているのでございますよ」

ガイは寝室の改装の一切をわたしに投げた。

壁紙や調度品やら、内装を考えるのは楽しいが、何を聞いても、

「お嬢さんのお好きにどうぞ」

としか返って来ないのには肩すかしだ。ガイにとって、部屋のデザインなど、興味の持てない面倒事なのだろうけれども。

ドラの言うほど陰気な部屋だとは思わなかったが、この機会に印象をまったく変えてしまおうと考えた。

壁や家具の他、敷きつめられた絨毯までも何もかも。

しかし、打ち合わせの際、レディ・アリナが主寝室を好まず使わなかったのだと知った。

「主寝室は格式の高いお部屋でございますが、お庭の池が近うございます。向きでしょうね。お寒く感じられるとのことで」

それを聞き、過剰な改装は意味のない無駄に思え、カーテンを変える程度で止めてしまった。

式もなく、誰に告げるでもない。

過去にあふれる祝福を受、盛大な式を挙げた彼が、その破局ののち、わたしとの再婚に同じものを望むはずがなかった。

わたしたちの結婚には意志以外のきっかけがなく、いつの間にか共に眠るようになり、時間を過ごし、そうやって静かに始まっていくのだろう。

それでも気持ちはひたひたと満ちている。

ガイが日々の静けさを好むのなら、そういった妻になろう。

彼の望むものを差し出し、余計なことをせず、微笑んでいればいい。

子供じみた感情を振り回さず、彼に甘え過ぎない。それは、今の自分より少しだけ大人びたわたしだ。

彼のそばでそうありたいのだ。
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