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第四章 修学旅行
第九話 小樽で困る
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小樽観光は午後の四時ごろから始まった。小樽に着くころには香川ではありえない量の雪が降っており、みんな雪だ雪だと騒いでいる。
うるさい! 俺は雪どころじゃないわ!
子どものようにはしゃぐ人たちに、俺はそう叫んでやりたい気持ちだった。わかるのか、準備を怠ったせいでブレザーに長袖の体操ズボンを履くはめになっている俺の気持ちが!
俺の姿を見た双葉やその他の人たちは案の定腹を抱えて笑ってきた。恥ずかしさが臨界点を突破しそうだったが、双葉がかわいかったのでよしとしよう。
ともかく、各自由班にわかれて小樽観光は始まった。二時間後に指定された食堂で集合することになっており、それさえ守ればどこを回ってもいいという話だ。
班長になっている俺は早速千堂をはじめとした班員を集めた。
ちなみに千堂以外の班員は二人いて、なかなか個性的だ。
いつも性欲全開で俺以上のからかわれ役として定評のある金山。体はとてもがっしりとしていてクラスの中では一番力がある。
そして、常に本を持ち歩き他人と頑として交流を持たない斉藤。ぼっちを強いられているのではなく、ぼっちに自らなっているというところが彼の生きざまを大いにあらわしていると思う。俺はちょっとかっこいいと思う。
この二人に俺と千堂を含めたのが、俺たちの自由班ということになる。事前に修学旅行の打ち合わせをしたときに、この班だとぎくしゃくするのではないかという懸念があったがなんてことはなく、仲良くやっていけそうな感じがした。
四人全員が集まったので、俺は軽く咳払いをし出発の音頭を取った。
「おし、じゃあいざ小樽に繰り出すぞ! 準備はいいか!」
「「「…」」」
「おー!」
一人叫んだその掛け声は、少し涙ぐんでいたという。
「おい、セン…」
「ああ…」
「どうすんだよ、これ…」
「ああ…」
時刻は午後の五時を少し回っており、空に雲がかかっていることもあってかあたりはすでに真っ暗だった。それと同時に、俺たちの気分もお先も真っ暗である。
こんな剣呑な空気になってしまっている原因は旅程の不徹底さにあった。
俺たちがあらかじめ決めていたルートに従い、最初は順調に小樽観光が進んでいた。オルゴールを見たり、ルタオでお土産を買ったりとみんな明るい気分で見て回ることができていた。
しかし、最後に行く予定だった寿司で問題が起きた。
ふらふらと適当にほっつき歩いて見つけた寿司屋に入ろうと思い、入る店を決めていなかったのがあだとなった。店が全く見つからないのである。
痺れを切らした千堂が自身のスマホを使いGPSでやっとこさ店を見つけ、右も左もわからない裏路地のような場所をぐるぐると回り向かったのだが…たどり着いた店には臨時休業という慈悲のない張り紙が貼られていた。
厳しい寒さと慣れない雪のせいで体力が削られ、テンションも最底辺にまで落ちていた俺たちは、寿司を諦めて集合場所に直行することに決めた。
しかし、そこで千堂のスマホの充電が切れることになる。
バッテリーは持っておらず、千堂以外にスマホを持っている者もいない。つまり、俺たちはどこかもわからない場所で迷子となってしまったのである。
クールダウンを通り越して、俺たちの中ではふつふつと苛立ちが湧き上がってきていた。
「マジでどうすんだよこれ…」
「一回大きい通りに出てみようぜ、話はそれから…」
雑談などなく、必要最低限の会話だけかわし、俺たちは再び歩き出した。
どうなる、俺たち…!
うるさい! 俺は雪どころじゃないわ!
子どものようにはしゃぐ人たちに、俺はそう叫んでやりたい気持ちだった。わかるのか、準備を怠ったせいでブレザーに長袖の体操ズボンを履くはめになっている俺の気持ちが!
俺の姿を見た双葉やその他の人たちは案の定腹を抱えて笑ってきた。恥ずかしさが臨界点を突破しそうだったが、双葉がかわいかったのでよしとしよう。
ともかく、各自由班にわかれて小樽観光は始まった。二時間後に指定された食堂で集合することになっており、それさえ守ればどこを回ってもいいという話だ。
班長になっている俺は早速千堂をはじめとした班員を集めた。
ちなみに千堂以外の班員は二人いて、なかなか個性的だ。
いつも性欲全開で俺以上のからかわれ役として定評のある金山。体はとてもがっしりとしていてクラスの中では一番力がある。
そして、常に本を持ち歩き他人と頑として交流を持たない斉藤。ぼっちを強いられているのではなく、ぼっちに自らなっているというところが彼の生きざまを大いにあらわしていると思う。俺はちょっとかっこいいと思う。
この二人に俺と千堂を含めたのが、俺たちの自由班ということになる。事前に修学旅行の打ち合わせをしたときに、この班だとぎくしゃくするのではないかという懸念があったがなんてことはなく、仲良くやっていけそうな感じがした。
四人全員が集まったので、俺は軽く咳払いをし出発の音頭を取った。
「おし、じゃあいざ小樽に繰り出すぞ! 準備はいいか!」
「「「…」」」
「おー!」
一人叫んだその掛け声は、少し涙ぐんでいたという。
「おい、セン…」
「ああ…」
「どうすんだよ、これ…」
「ああ…」
時刻は午後の五時を少し回っており、空に雲がかかっていることもあってかあたりはすでに真っ暗だった。それと同時に、俺たちの気分もお先も真っ暗である。
こんな剣呑な空気になってしまっている原因は旅程の不徹底さにあった。
俺たちがあらかじめ決めていたルートに従い、最初は順調に小樽観光が進んでいた。オルゴールを見たり、ルタオでお土産を買ったりとみんな明るい気分で見て回ることができていた。
しかし、最後に行く予定だった寿司で問題が起きた。
ふらふらと適当にほっつき歩いて見つけた寿司屋に入ろうと思い、入る店を決めていなかったのがあだとなった。店が全く見つからないのである。
痺れを切らした千堂が自身のスマホを使いGPSでやっとこさ店を見つけ、右も左もわからない裏路地のような場所をぐるぐると回り向かったのだが…たどり着いた店には臨時休業という慈悲のない張り紙が貼られていた。
厳しい寒さと慣れない雪のせいで体力が削られ、テンションも最底辺にまで落ちていた俺たちは、寿司を諦めて集合場所に直行することに決めた。
しかし、そこで千堂のスマホの充電が切れることになる。
バッテリーは持っておらず、千堂以外にスマホを持っている者もいない。つまり、俺たちはどこかもわからない場所で迷子となってしまったのである。
クールダウンを通り越して、俺たちの中ではふつふつと苛立ちが湧き上がってきていた。
「マジでどうすんだよこれ…」
「一回大きい通りに出てみようぜ、話はそれから…」
雑談などなく、必要最低限の会話だけかわし、俺たちは再び歩き出した。
どうなる、俺たち…!
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