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2.消えた平穏
勘弁してほしい切実に
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「岬って、整った顔してそうだよね。前髪切らないの?」
「え、整ってないよ……前髪ないと落ち着かないから、切らないし……」
「見てみたいな、岬の瞳」
「み、見せるほどのものでは……」
にっこり笑う流星から、またもやキラキラがぶっ飛んでくる。ハハハ、と愛想笑いを返してなんとなく前髪を押さえた。なんか、「見てみたいな」が「見たいな」に聞こえる。有無を言わせぬ笑顔に圧力を感じるも、ヘラッと躱す。
「ほら、料理冷めちゃうよ。みんなも食べようよ」
「……うん、そうだね。また今後」
何がまた今度なのかは追求しない。今度なんて一生ないからね。
……やっぱり一緒に食事するのは不味かったのかな。とはいえ今更後悔しても遅いので、気にせず唐揚げに集中することにした。
すると、いきなりガタッと隣に大きな音がした。何? と思い右を見ればなぜか椅子が置かれている。と思った瞬間、ドスンとデカい人が座り、ガシッと肩を抱かれる。
黒毬藻の襲来である。
「ゲッ……」
思わず本音が漏れたのは仕方がないと思う。
「やっほ~岬♪ 教室行ってもいねーから探しちゃったじゃん。ってかマスク外してんね、キスしていい?」
来て早々にぐいぐい来る花菱に、思わず手で顔を押し退けた。さりげなく瓶底メガネに指紋がつくようにぐりぐりしてささやかな嫌がらせを含ませる。
渾身の力を込めて顔面を押しているのにびくともしない。ぐぬぬ……と力を込めていたら、手のひらをなぞる濡れた感触に背筋が震えた。
「ひぃっ!」
な、舐めた、こいつ、手のひら舐めやがった(大泣き)。
にっこりしながら舌を出してる花菱に、秀が立ち上がり俺の肩から花菱の手を引き離してくれた。
「テメェ、何してんだよ! 離れろ!」
「はぁ? またアンタかよ。邪魔すんなっての」
「テメェが邪魔なんだろうが」
思わず制服で手をゴシゴシと拭ってしまった俺は、椅子を引きずって唐揚げ定食ごと道添の方へ移動し距離を取る。
「ちょちょちょ、岬同志、狭い、狭いって!」
道添が文句を言っているが気にしない。
「ほら、岬も俺の席空けてくれてんじゃん」
「どう見ても逃げてんだろ」
「なぁ岬、ここで騒ぎになって目立つのと、一緒に飯食って静かに目立たないの、どっちがいい?」
秀の言葉をスルーしてそう言ってくる花菱に、思わず固まる。ちらと周囲を見れば、ちらほらこっちに視線を向けている生徒が出てきていた。確かに、これ以上騒ぐと余計に目立ってしまうかもしれない。
どうするのが最善なのかを瞬時に考えて、思わずため息。秀の袖をくいと引っ張った。
「岬?」
「いいよ、もう……仕方ない」
「え、整ってないよ……前髪ないと落ち着かないから、切らないし……」
「見てみたいな、岬の瞳」
「み、見せるほどのものでは……」
にっこり笑う流星から、またもやキラキラがぶっ飛んでくる。ハハハ、と愛想笑いを返してなんとなく前髪を押さえた。なんか、「見てみたいな」が「見たいな」に聞こえる。有無を言わせぬ笑顔に圧力を感じるも、ヘラッと躱す。
「ほら、料理冷めちゃうよ。みんなも食べようよ」
「……うん、そうだね。また今後」
何がまた今度なのかは追求しない。今度なんて一生ないからね。
……やっぱり一緒に食事するのは不味かったのかな。とはいえ今更後悔しても遅いので、気にせず唐揚げに集中することにした。
すると、いきなりガタッと隣に大きな音がした。何? と思い右を見ればなぜか椅子が置かれている。と思った瞬間、ドスンとデカい人が座り、ガシッと肩を抱かれる。
黒毬藻の襲来である。
「ゲッ……」
思わず本音が漏れたのは仕方がないと思う。
「やっほ~岬♪ 教室行ってもいねーから探しちゃったじゃん。ってかマスク外してんね、キスしていい?」
来て早々にぐいぐい来る花菱に、思わず手で顔を押し退けた。さりげなく瓶底メガネに指紋がつくようにぐりぐりしてささやかな嫌がらせを含ませる。
渾身の力を込めて顔面を押しているのにびくともしない。ぐぬぬ……と力を込めていたら、手のひらをなぞる濡れた感触に背筋が震えた。
「ひぃっ!」
な、舐めた、こいつ、手のひら舐めやがった(大泣き)。
にっこりしながら舌を出してる花菱に、秀が立ち上がり俺の肩から花菱の手を引き離してくれた。
「テメェ、何してんだよ! 離れろ!」
「はぁ? またアンタかよ。邪魔すんなっての」
「テメェが邪魔なんだろうが」
思わず制服で手をゴシゴシと拭ってしまった俺は、椅子を引きずって唐揚げ定食ごと道添の方へ移動し距離を取る。
「ちょちょちょ、岬同志、狭い、狭いって!」
道添が文句を言っているが気にしない。
「ほら、岬も俺の席空けてくれてんじゃん」
「どう見ても逃げてんだろ」
「なぁ岬、ここで騒ぎになって目立つのと、一緒に飯食って静かに目立たないの、どっちがいい?」
秀の言葉をスルーしてそう言ってくる花菱に、思わず固まる。ちらと周囲を見れば、ちらほらこっちに視線を向けている生徒が出てきていた。確かに、これ以上騒ぐと余計に目立ってしまうかもしれない。
どうするのが最善なのかを瞬時に考えて、思わずため息。秀の袖をくいと引っ張った。
「岬?」
「いいよ、もう……仕方ない」
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